2015年

3月

31日

ワシントンDC 2015年3月31日号

 ◇共和党のクリントン氏攻撃 相次ぐスキャンダルの発覚


及川正也

(毎日新聞北米総局長)


 2016年米大統領選で政権奪還を目指す野党・共和党が、与党・民主党の有力候補として目されているヒラリー・クリントン前国務長官(67)への攻撃を強めている。抜群の知名度と豊富な政治経験から早くも「本命視」される存在だが、そのクリントン氏を脅かすスキャンダルが次々と明るみに出て、足元がぐらついているのだ。

「彼女はリーダーシップがなんたるかを分かっていない」(カーリー・フィオリーナ元ヒューレット・パッカードCEO)

「クリントン氏にとっていまが現役を永遠に引退する潮時だ」(ランド・ポール上院議員)

 2月下旬にワシントン郊外の保養地ナショナルハーバーで開かれた、共和党系団体が結集する全米最大規模の「保守政治行動委員会(CPAC)」年次総会は、大統領選出馬に意欲を見せる有力者たちの「ヒラリー批判」の大合唱だった。クリントン氏から連想する言葉をジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は「外国人献金」、マルコ・ルビオ上院議員は「イエスタデー(過去の人)」と答え、笑いや拍手が起きる場面もあった。

 共和党にとってクリントン氏は最大の脅威だ。大統領選に勝てば初の女性にして夫妻での大統領になる。話題の豊富さではブッシュ家から3人目の大統領かと期待されるジェブ氏もいるが、ファーストレディー、上院議員、国務長官を歴任したクリントン氏に比べて政治経歴では見劣りし、人気も父や兄に比べて影は薄い。

 出馬間違いなしとされるクリントン氏に少しでも政治的ダメージを与えて防戦に追い込み、「問題のある候補者」というネガティブな印象を広めるのが狙いだ。そんな共和党の戦略に沿うように、クリントン氏のカネや秘密主義を巡るスキャンダルが相次いで米メディアで暴露され、格好の政争の具になっている。


 ◇試される危機管理能力


 一つは、夫ビル・クリントン元大統領が設立した慈善団体・クリントン財団が、外交政策トップの国務長官在任中に、複数の外国政府から巨額寄付を受けていた問題。寄付そのものは違法ではないが、アルジェリア政府からの50万ドルの寄付では所定の申告手続きをせず政権の倫理規定に抵触していたという。

 クリントン氏は政治経験の豊富さをアピールするため08年大統領選民主党予備選で「真夜中の午前3時に世界での異変を伝えるホワイトハウスへの電話を誰がとってほしいですか」という広告を流し話題になった。これを逆手に共和党内では「夜中に巨額寄付を受け取っている国から電話を受ける方が問題」と揶揄(やゆ)されている。

 もう一つは、国務長官在任中に国務省の電子メールアドレスを取得せず、すべて私的なアドレスで仕事のやりとりをしていた問題。政府職員は公文書保存の観点から仕事では公的アカウント(国務省の場合は「state.gov」)を通常使い、役所のサーバーに保存されているが、クリントン氏のメールは国務省に保存されていない。

 クリントン氏は二つを使い分けるより私的メールだけの方が「便利だったから」と理由を説明した。機密情報を送信したことはなく、約3万通の公務メールを国務省に提供したというが、同じく約3万通の私的メールを削除したという。公的と私的の分類は本人にしか分からず、共和党は「疑惑は深まった」と追及する構えだ。

 今春の出馬表明を計画していたクリントン氏だが、財団寄付問題と私的メール問題をどう乗り切るか──。危機管理能力が試される場面に直面している。