2015年

3月

31日

特集:水素と電池 水素ステーションに行ってきた 2015年3月31日号

 ◇水素充填ノズルは800万円 まるで小さな化学プラント


谷口 健(編集部)


「それ、800万円くらいするので、気をつけて扱ってください――」

 神奈川県海老名市にあるJXホールディングス(5020)の水素ステーションに行ってまず驚いたのが、充填(じゅうてん)機(ディスペンサー)のノズルの価格だ。水素を充填する際に車と接続する箇所で、セルフ式ガソリンスタンドに例えると実際にドライバーが手にとって給油する部分だ。

 充填機の全体を製造するのは、タツノ(非上場)や岩谷産業(8088)だが、今は充填ノズルだけでトヨタの燃料電池車「ミライ」(723万円)よりも高い。ノズルには白で「NITTO」と書かれている。これを作っている日東工器(6151)の企業ロゴだ。

 充填ノズルの重さは4.7キログラム。実際に手にとってみると、しっかり踏ん張らないと持てないほど重い。将来的には、「セルフスタンドを可能にする」(安倍晋三首相)予定の水素ステーションだが、ノズルは高価で重く“素人”には扱えないのが現状だ。

 そもそも水素ステーションには、四つの要素がある。約1.3億円の「圧縮機」、約6000万円の「蓄圧器」、約4000万円の「冷凍機(プレクーラー)」、約5000万円の「充填機」だ(図)。日本では合計4億~5億円かかっており、ドイツの約2億6000万円と比べると、大きくかけ離れている。

 燃料電池車の水素タンクは満タン時で、水素が700気圧という超高圧になる。車のタンクに水素を送り込むために、水素を820気圧まで高めるのが「圧縮機」だ。岩谷産業の水素ステーションでは、ドイツのリンデ社の圧縮機を使うのが特徴だ。一方、JXの海老名ステーションでは神戸製鋼所(5406)のものが使われている。加地テック(6391)も圧縮機を製造しており、他のステーションで採用実績がある。

 そして、820気圧という超高圧状態を保ちながら水素を貯蔵するのが「蓄圧器」だ。岩谷産業の尼崎ステーションには、内部に長さ約3メートルの細長い鋼鉄製の蓄圧器が3本置いてある。ちょうど戦車や艦艇のカノン砲の風格だが、まさに日本製鋼所(5631)が砲の製造技術を応用して作っている。

 一方、JXの海老名ステーションの蓄圧器は、ずん胴型のサムテック(非上場)製が使われている。炭素繊維をぐるぐる巻きにした真っ黒のタンクが、「縦4本×横3本」合計12個並べてまとめられている。

 冷凍機は、水素の温度を下げるために必要な機材だ。水素は高圧・高速で送り出す際に温度が上がる。車の水素タンク内の温度が85度以上に上昇してはいけない規制があるため、冷凍機でマイナス40度まで冷やしている。

 この冷凍機を作るのは、岩谷産業のステーションでは関連企業のエーテック、JXのステーションでは、前川製作所(非上場)や荏原(6361)子会社の荏原冷熱システムが製造している。………

 

 

 

 

 

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配信日2015年4月24日

定価200円(税込) 

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