2015年

3月

31日

経営者:編集長インタビュー 長岡孝 三菱UFJモルガン・スタンレー証券社長 2015年3月31日号

 ◇グループ全体で「一体ビジネス」目指す


 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、2008年9月のリーマン・ショックを受けて、親会社の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が米モルガン・スタンレーに出資したのに伴い、三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券の投資銀行部門が統合して10年5月に発足した。

── 会社の強みは。

長岡 国内最大の金融グループであるMUFGと、世界各国にネットワークを持つモルガン・スタンレーの共同出資会社である点です。両社の持つ知見やネットワークを生かして顧客から求められるサービスを提供できます。

 例えば外国株については、モルガン・スタンレーの豊富な情報源を生かして、国内投資家に対し、業界最高レベルの約300銘柄についての情報を日本語で提供可能です。法規制や商習慣、国情、企業同士の関係性などその国の産業や企業のことを知らなければ、なかなか自信を持ってお勧めすることはできません。

── 4月から新しい中期経営計画が始まります。どんな戦略を掲げていますか。

長岡 生産性や先進性、成長力の三つの点で国内の顧客から最も評価される証券会社を目指します。現時点でも、1人当たりの利益率を示す生産性では国内ナンバーワンだと自負していますが、今後はいかにサービスに付加価値を付けていくかを重視します。

 付加価値を高めるうえでも、モルガン・スタンレーの持つ強みが生きてきます。例えば、企業の合併・買収(M&A)仲介業務は国内でもトップ争いを続けていますが、海外企業とのM&Aは、買収先としてどんな企業が有望かを調べることから始まり、その国の証券取引委員会や公正取引委員会への届け出や許認可手続きなど、膨大な作業や経験、ネットワークが必要になります。買収候補企業の抱える課題や事業戦略、関係性なども、その国に足場がなければ把握することはできません。

 日本では少子高齢化が進んでいく見通しです。今後も成長し続けようと考えたら、企業は世界に目を向ける必要があります。資本効率も求められていますから、国内企業同士の再編も必要になるでしょう。

 これからは顧客にとって何が必要なのかをこちらから提案していく姿勢がますます重要になると考えています。成長のために必要になる事業戦略を経営者とひざを突き合わせながら考えていきたいです。

── 株式引き受け部門も好調です。

長岡 13年度(13年4月~14年3月)は野村証券に次ぎシェア2位でした。この業務は、顧客に資金需要が生じたからといって、簡単に任せてもらえるような仕事ではありません。企業の成長戦略や財務戦略を地道にサポートしていく中で、後から付いてくると思っています。

── 債券引き受け部門のシェアは13年度は1位でした。

長岡 この分野は各社とも実力が拮(きっ)抗(こう)しています。順位には一喜一憂せず、銀行系証券会社としての強みを生かし、これからも着実に実績を伸ばしていきたいと考えています。

── MUFG全体の株式や投資信託などの預かり資産50兆円を目標に掲げています。

長岡 グループの預金残高は120兆円に上りますが、このうち債券や株式、投資信託などの「投資」に振り向けられているのはまだ36兆円程度に過ぎません。「貯蓄から投資へ」の動きを加速するためにも、顧客が望む商品をいかに納得して選んでもらえるようにするかが大事です。

 その一環として、ラップ型投資信託「スマート・クオリティ・オープン」(愛称・スマラップ)を14年11月に販売開始しました。投資の初心者でも、プロの投資家が行っている分散投資手法のメリットを享受できます。今年3月10日時点で既に618億円を販売しました。

 50兆円の目標を掲げたからといって、お客様に無理にお勧めすることはしません。投資経験や市場環境に応じて顧客目線で提案するよう心がけています。当社にとって、なじみのある銀行を通じてお客様と接点ができる点は大きな強みです。ただ、MUFG内の各社との関係は現時点ではまだ「連携ビジネス」にとどまっています。今後はこの関係性を強め、「一体ビジネス」に発展させていけたら、と考えています。


 ◇企業の目利き


── 海外事業は。

長岡 アジア戦略を強化する方針です。アジアを「第二のマザーマーケット」にしたい。開発が進むに従って、資本市場や中間層が成長し、開発に必要な資金や起債、さらには保険・年金、資産運用といった金融サービスに関するニーズも伸びていく見通しです。進出状況はまだまだですが、タイミングを見ながら人材投入や現地金融機関との連携などを進めます。

── それにしても、最近のマーケットは上げ下げが激しいですね。

長岡 最近ではちょっとしたことで市場が大きく動いてしまいます。相場が大きく変動すると、投資家も投資に消極的な「リスクオフ」モードになりやすい。そのため、証券会社も感覚を研ぎ澄まさなければなりません。一方で、どんな経済状況であっても、いい企業は必ずあります。証券会社は「企業の目利き」でもありますから、その役割をどう発揮していくかを考え続けていきます。

(Interviewer=横田恵美・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 銀行で融資審査や商品開発、人事、営業企画、営業などに配属されました。もともと好奇心が旺盛で、それぞれの現場で求められるスキルやノウハウを意欲的に獲得しようと心がけました。

Q 最近買ったもの

A 携帯ショップに行く時間がなかなか取れませんが、「iPhone 6」を購入したいと考えています。

Q 休日の過ごし方

A 取引先とゴルフをすることが多いのですが、スポーツクラブで運動後、マッサージチェアに座ってジャズを聴くのが楽しみの一つです。

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 ■人物略歴

 ◇ながおか・たかし

 神奈川県出身。1976年慶応義塾大学経済学部卒業後、三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。2003年執行役員京都支社長、06年常務執行役員、10年専務執行役員大阪営業本部長、11年副頭取などを経て14年6月から現職。61歳。