2015年

4月

21日

ワシントンDC 2015年4月21日特大号

 ◇米議会反対でIMF改革が暗礁 国際信用失いかねない事態に

須内康史
(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

「議会が国際通貨基金(IMF)の改革を承認することが極めて重要だ」──。3月17日に開かれた米議会下院の金融サービス委員会公聴会で証言に立ったルー財務長官は、出席した議員に訴えかけた。
 米国では国際金融機関法(International Financial Institutions Act)により、財務長官が議会に対してIMFをはじめとする国際金融機関や国際金融システムの現状について報告することが求められている。これに基づき、ルー財務長官は、年次報告書を議会に提出し、公聴会で証言を行った。

 今回の年次報告書で特に強調されているのが、2010年にIMF加盟国政府間で合意されたIMF改革の重要性だ。
 IMF加盟各国政府は、金融危機後の10年、IMFの融資財源となるクオータ(出資割当額)の倍増による財源強化と、現在の経済力に応じて新興国のクオータ配分及び投票権を高める改革案について合意した。
 この改革案が実行されると、IMFにおける新興国の発言権は高まるが、米国は15%を超えるクオータ配分と、重要事項への拒否権を持つ投票権を維持する内容となっている。
 米国にとって受け入れやすい内容と言えるが、国内で必要な議会承認が得られていない。他の多くの加盟国は必要な承認手続きを済ませており、成立は拒否権を有する米国の議会承認待ちの状況が続いている。
 公聴会の場でルー長官は、米国がこれまで多大な努力を注いで築いてきた国際機関に対する米国のコミットメントが、他の国々により疑問視されてきていると指摘。これにより、米国の国際的信用と影響力が脅かされていると述べ、議会に対して早期のIMF改革の承認を求めた。
 米国の議会では、10年秋の中間選挙で共和党が下院の多数派を占めた後、主に共和党保守派の反対で、議会でのIMF改革に対する予算措置などの承認が得られない状況が続いている。上下両院で共和党が多数を占めている現在、議会承認のめどは依然立っていない状況だ。

 ◇AIIBなどの動き

 米国の承認待ちが続く状況に、IMF加盟各国や幹部は不満を募らせている。20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議やIMFの国際通貨金融委員会(IMFC)は、共同声明で繰り返しIMF改革が進まない状況に失望を表明。IMFのラガルド専務理事も、プレス発表の中で、IMF改革遅延に対するG20の失望を共有すると述べている。
 IMFは、戦後、米国が主導して形成してきた国際金融機関(いわゆるブレトンウッズ機関)の中核をなす機関であり、15年3月にはウクライナへの約175億ドルの追加支援パッケージを承認するなど、現在でも世界経済安定化に中核的な役割を果たしている。
 これまで主導してきた米国が改革を妨げている状況は、既存の国際金融機関の体制に対する信認を揺るがしかねない。ワシントンの有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所の専門家は、改革が事実上凍結されている現状はIMFの中心的な役割を脅かしており、さらに、BRICS銀行やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立の動きなど、米国の影響力が及ばない新しい国際金融機関によって既存の機関を代替する動きを加速させていると指摘する。
 ルー財務長官は、公聴会の証言で、「これまでと同様、国際金融機関において米国が指導力を示していくことが重要だ」と強調した。政権と議会が党派対立を超えて米国の指導力を発揮していくことは、国際金融機関の場においても求められている。