2015年

4月

21日

経営者:編集長インタビュー 辻本憲三 カプコン会長 2015年4月21日特大号

 ◇スマホにも大作ゲームの時代が来る

 3月17日に任天堂とディー・エヌ・エーがスマートフォン(スマホ)向けのゲーム開発で資本・業務提携するなど、ゲーム市場の台風の目はスマホだ。ゲームソフト大手カプコンは、スマホ向けに「モンスターハンター(モンハン)」や「ストリートファイター」などのゲームタイトルを提供しているが苦戦している。

── スマホで出遅れ感があります。
辻本 スマホでゲームをする人は増えているのが現実ですし、それで売り上げを伸ばしている企業もあります。ただ、世界のゲーム市場を見ると必ずしも大きくはありません。欧米市場は、家庭用ゲーム機の90%くらいが据え置き型で、携帯型が10%です。車社会なので電車でゲームはせず、家のソファーなどでゲームをしています。世界のゲームソフト市場は、2014年の8兆円から17年には10兆円市場になり、人口は5億人以上の規模になるとみています。

 10~20人のチームでスマホゲームを作っている人は世界におそらく50万人はいるでしょう。ただ、ゲームのレベルが高くなると少人数では作れなくなります。50人、100人規模で作り、さらに継続的に作るとなると、我々の世界になります。
── カプコンは大作ゲームを制作するチーム編成に見えます。
辻本 我々のゲームづくりには、何十億、何百億円もかかっています。800億円、1000億円規模の売り上げにしないとだめです。新しいゲームであれば、3作目でようやくペイ(収益化)するような気持ちで作らないといけません。
 もちろん、モバイル端末の進化には注目しています。今のスマホに搭載されるメモリー(RAM)容量は5ギガバイト しかないですが、今後は10ギガバイト 、20ギガバイト と、間違いなく増えていくでしょう。そうしないと、端末メーカーも生き残れません。メモリー容量が20ギガバイト 規模になると今の携帯型ゲーム機とほぼ同じになります。その時、モバイル向けのゲームは今の形から大きく変わるでしょう。

 スマホゲームはさえないものの、カプコンの株価は好調だ。15年3月期の売上高は前期比36%減の650億円予想にもかかわらず、株価は11年8月以来の高値圏で推移している。営業利益が前期比2%増の105億円となる構造改革や、「モンハン」や「バイオハザード」「ストリートファイター」などのヒット作品シリーズを持つ強みが改めて評価されているためだ。

── 15年3月期は約370億円売り上げが落ちる見込みです。
辻本 売り上げが落ちる主な理由は、ゲームタイトルの絞り込みやパチスロ機の販売台数が減少したためです。また、ダウンロード型のソフトも増えているため、ソフト1本当たりの単価は落ちています。
 一方、利益面では、採算性の低い外注タイトルの委託をやめたり、収益性の高いダウンロード販売が伸びたりしたため、前年比では増益となる見込みです。もうかる部門は残しているからもうけは上がります。ここ3、4年はこうした構造改革をしており、今は切り替え時期です。外注比率も5年前には半分ほどありましたが、今は内製化率80%を目指しています。
── 家庭用ゲーム機、パソコン向けのダウンロード販売に力を入れています。最新作「バイオハザード リベレーションズ2」をゲームの章ごとに800円前後で販売したり、ニンテンドー3DS向けの「モンスターハンター4G」を約6000円で販売したりしています。
辻本 章ごとに売るダウンロード販売は、分厚い書籍を切って売るようなものです。ユーザーにとっては買いやすく、ダウンロード時間を短くできるメリットもありますが、おもしろくなかったら次作は買われません。その一方で、おもしろい作品であれば、パッケージソフトを買うことにもつながります。

 ◇モンハンで囲い込み

── 有名ゲームを多数持っている強みをどう生かしますか。
辻本 「モンスターハンター4G」は国内外で300万本以上発売されました。モンハンはいま、4人同時プレーが最大ですが、いずれ20人、30人、さらには1万人で同時プレーができる時代が来るでしょう。こうなるとユーザーを囲い込むこともできます。
── 数あるブランドをどう強化しているのですか。
辻本 例えば、ゲームと映画の世界観を共有して、マーケティングをしています。1994年に「ストリートファイター」のハリウッド映画を40億円かけて作りました。失敗作とも言われましたが、今もテレビなどへ配給しています。「バイオハザード」の映画はシリーズ5作になっています。一つのゲームの世界観がどんどん広がっていき、ヒット作品のブランドは消えません。
── カプコンのゲームとは。
辻本 うちはアクションです。ハリウッド映画で一番売れるのがアクション映画のように、言語と関係ない分野です。ラブストーリーはどうしても地域性が出るので、世界的なヒットはしませんが、アクションは世界共通です。そのアクションゲームでカプコンは世界で負けません。
(Interviewer=横田恵美・本誌前編集長、構成=谷口健・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 「スペースインベーダー」のライセンスを取得してゲーム機製造販売会社を立ち上げ、100億円の会社にしました。その後、カプコンを立ち上げました。
Q 最近買ったもの
A 服を買い換えています。ここ2年ほど体重を落としていて、15キロくらい減らしました。医者からまだ落ちると言われています。
Q 休日の過ごし方
A 土日のどちらかはゴルフで、あと一日は目が覚めるまで寝ます。12時間寝る時もあります。
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 ■人物略歴
 ◇つじもと・けんぞう
 1940年奈良県生まれ。奈良県の畝傍高校(定時制)を卒業。74年にゲーム機製造販売会社アイ・ピー・エムを設立。83年カプコンを創業して社長。2007年より会長兼最高経営責任者(CEO)。ワイナリーのオーナーも務める。74歳。