2015年

4月

28日

特集:どうなる上期相場 株価2万円 2015年4月28日号

 ◇今年も日本株「5月売り」はある? 外国人売りで急落リスク高まる


秋本裕子

(編集部)


 ◇Part1 世界マネー編


 日本株がこのところ上昇している。

 4月10日の東京株式市場では、日経平均株価が一時、「ITバブル」の2000年4月17日以来、15年ぶりに2万円を上回った。

 待ちに待った2万円台の大台回復に、市場には高揚感が広がっている。日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは、「2万円は通過点に過ぎない。年末に向けて2万2000円程度まで届く可能性がある」と期待を寄せる。


 ◇株式先物は売り傾向


 このところの日本株の上昇要因は何か。

 日本の実体経済の強さを反映したものというより、「日本、欧州、中国など各国中銀による世界的な緩和政策により、マネーが日本株にも流れ込んでいることが最大の要因」(市場関係者)との見方がある。米国、欧州、中国などが過去最高値をつけるなど世界的に株価が上昇しており、「グローバル金融相場」の様相が色濃い。

 その中にあっても、日本株の下値は公的年金や日銀が買い支え、上値はヘッジファンドをはじめとする外国人投資家が引き上げる構図が見て取れる。

 実際、日本取引所グループの現物株式売買動向(1・2部など合計)を見ると、日経平均株価が上昇し始めた2月第2週から2万円に到達した4月第2週にかけて、外国人投資家は3月第4週を除いて日本株を買い進めている。直近4月第2週の買いは5910億円に上った。

 これまで主体だった短期売買のヘッジファンドだけでなく、出遅れていたロングオンリー(買い持ち専門)と呼ばれる海外年金ファンドやミューチュアル・ファンド(海外投信)も動き始めたようだ。「年初来の高い上昇率を受け、日本株を買わざるを得ない状況に追い込まれた」と見る向きも多い。長期投資の資金が入り始めたことは、日本株にとってポジティブだ。

 一方、株式先物では少し違う傾向が見える。外国人投資家は、株式先物を2月第2週から第4週の3週間で2兆1960億円も買い越した。だが、3月に入ると一転して売る週が増え、3月第2週と4月第2週を除いて売り越している。先物の売りは、何を意味するのか。

 外国人投資家の中にはロングオンリーも含まれてはいるが、「外国人投資家の6~7割を占める」(市場関係者)と見られるヘッジファンドが何らかの事情でポジションの巻き戻しに動けば、相場の急落要因になるのは間違いない。

 この先、日本株は期待通りに上昇カーブを描くのか。

 直近の懸念材料としては、株式相場の格言とも言える「セル・イン・メイ(5月に売れ)」がある。直近でまず脳裏に浮かぶのは、13年5月に起きた「バーナンキ・ショック」だろう。


 ◇「バーナンキ・ショック」再来?


 アベノミクス全盛期の13年5月23日、日経平均は1143円安という13年ぶりの下落幅になった。翌24日にも、取引時間中に1000円以上も乱高下するなど、大荒れ相場になった。

 その前日、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長による量的緩和終了開始(テーパリング)を示唆する発言で、NYダウが急落したことがきっかけだった。同年5月1日から急落直前までの間、日経平均は約1800円という大幅上昇を演じていたことから、その急落ショックは一層大きかった。果たして、今年はどうだろう。

 過去の例を見ると、確かに毎年5月にはNYダウも日経平均株価も4月末比で下落、あるいは停滞しやすい傾向がある。過去5年間で、5月に日本株が下落しなかったのは昨年だけだ。

 5月売りが起きる理由の一つは、ヘッジファンドが中間決算を前に利益確定することが挙げられる。ヘッジファンドの決算期は、11月期と12月期が多い。中間決算前の1カ月の間にポジションの巻き戻しに動くことが影響している。

 また、3月期決算の企業が、この時期に相次いで決算発表を行うことも大きな理由だ。業績や見通しが投資家の期待外れに終われば、株価に影響しやすい。

 何より大きな要因は、「今年も5月売りが起きるかもしれない、売り時を逃すまい、と多くの投資家が考え、一斉に売りに動くこと」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)と言えるかもしれない。5月を前にすると、投資家に警戒感が強まり、ちょっとしたきっかけで一斉に売り始める。それが自己実現的に株価下落を引き起こす、という構図だ。


 ◇4月末からイベント


 そのトリガー(引き金)は、あちこちに転がっている。

 一つが経済統計やイベントリスクだ。世界経済の状況は、決して楽観視できるものではない。世界経済の牽引(けんいん)役であるはずの米国は、今年中の利上げが見込まれながらも、3月発表の雇用統計が期待外れに終わるなど弱含んでおり、今年6月と予想されていた1回目の利上げ時期の後ずれが予想されている。4月29日に発表される1~3月期のGDPは前期より低下が見込まれている。欧州はギリシャの財政問題など課題が山積。中国経済も力が弱く、4月15日に発表された1~3月期GDPは6年ぶりの低水準となる7%成長にとどまった。

 日本でも4月30日、日銀の金融政策決定会合が開かれる。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しの修正が議論される。市場の一部では昨年10月末に続き、そこでサプライズの追加金融緩和を期待する声もあり、実現すれば株価へのインパクトは大きい。

 もう一つが、企業の業績予想だ。米国では現在、決算発表が本格化しており、日本も4月下旬から決算シーズンを迎える。15年度の業績予想には警戒が必要だ。15年度の市場コンセンサスは日経平均構成銘柄で約15~20%増益の予想なのに対し、企業は先行きを保守的に見る傾向があるからだ。

 実際、3月に発表された日銀短観の大企業・全産業ベースの予想では前期比1%の減益予想、法人企業景気予測調査でも全産業・経常利益ベースで0・5%の微増益との予想で、予想段階での両者の乖離(かいり)は大きい。現状のままでは、「市場の期待と実体経済(企業業績)のギャップが大きくなればなるほど、失望を誘い、落ち込み方がよりドラスチックになる」(藤戸氏)という懸念を払拭(ふっしょく)できそうにない。

 急激な株価上昇には、その分、急落リスクがつきまとう。株価2万円の一時回復は、急落前にたまったマグマのようにも思える。年末に向けて楽観視できる状況にはなく、上期にまだ一波乱ありそうだ。