2015年

5月

12日

経営者:編集長インタビュー 市原 等 三井住友海上あいおい生命保険社長 2015年5月5・12日合併号

◇「多様性」を強みに、変化するニーズをつかむ


 三井住友海上あいおい生命保険は、三井住友海上グループ、あいおい損保、ニッセイ同和損保の三つの損保グループが経営統合して発足したMS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の生命保険会社だ。グループの三井住友海上きらめき生命とあいおい生命の両社が合併し、2011年10月に誕生した。

 ── 合併後3年超が経過しました。

市原 テレビCMに女優の桐谷美玲さんを起用するなど広報活動に取り組んできたこともあって、当社単体での知名度も上がってきました。自社の調査によれば、消費者の4割前後まで認知度が高まっています。

 約2500人の社員も、他の生損保やコンサル会社、金融機関の出身者など、営業手法や銀行業務に詳しい者から地域経済を語れる者まで多様な人材がそろっています。合併後の融和も進み、こうした多様性の良い面が事業にも出始めています。

── 市場の現状は。

市原 生命保険を巡るニーズは大きく変わっています。例えば生保の保障額は、通常、年齢が上がるにつれて徐々に減っていくものです。しかし、事業承継や相続税の支払いなどによって急に資金が必要になることもあります。また、がん治療に使われる粒子線治療は、今まで乳がんや腸がんに適用するのは難しい面がありましたが、技術進歩によって適用できるようになりました。当社にはさまざまな得意分野を持つ社員がいるので、こうした変化に強い。

 社員や代理店の保険募集人の育成にも力を入れています。営業を強化するためには、使命感を持ってお客様の相談に乗り、アフターフォローのできる人材の質と量が必要です。 特に金融ビッグバン後に営業を支える代理店のあり方が大きく変わりました。それまで生保業界は、全体的に泰然自若としていた面もありましたが、金融機関の保険窓口販売の開始や、乗り合い代理店や新規参入企業の登場などによって、変わらざるを得ない状況になっています。

 14年4~12月は、個人保険と個人年金保険の新契約保険料(年換

算)が前年同期比10.1%増の335億円だった。同期の保有契約高は21兆6716億円で14年3月末時点に比べ2.7%増加している。特に、医療保険や介護保険、がん保険といった生損保以外の第三分野の新契約保険料(同)が前年同期比53.4%増の108億円と大きく伸びた。


 ◇第三分野が好調


── 第三分野が好調な理由は。

市原 13年12月に販売開始した「新医療保険A(エース)」は発売後丸1年が経過した時点で23万件も売れるヒット商品となっています。短期から長期まで入院費を保障するほか、高額になりがちな先進医療やがん治療、女性特有の病気といったさまざまなニーズに対応した保障内容が評価されているようです。

 14年4月には、MS&ADインシュアランスグループ内の機能別再編の一環で、第三分野の長期契約商品を供給する役割が当社に一本化されました。その結果、グループ全体で一丸となって営業展開しやすくなりました。保険金支払い日数や契約成立日数の短縮、苦情件数の減少など、すでに効果が表れています。

── 損保系生保の強みは。

市原 顧客に対するアフターフォローが手厚い点です。例えば自動車保険は「契約を結んで終わり」ということはなく、契約の更改などのため、お客様のもとに出向く機会が多い。そのため顧客の事情やニーズをきめ細かく把握できます。90歳以上の高齢者の契約について社内調査を実施したところ、未払い先は業界内でも極めて低い水準でした。

── 国内では今後、少子高齢化が進みますが、事業の見通しは。

市原 個人契約では国内損保で最大の約4000万人の顧客基盤を持つMS&ADインシュアランスグループの顧客にアクセスできる点は大きな強みです。当社の顧客数はまだその1割にも達していませんから、伸びる余地は大きいと言えます。

── 運用環境はどうですか。

市原 円安・株高が進んだので、15年3月期は当社を含め生保各社とも好成績になると思います。ただ、今後は反転するリスクも念頭に置く必要があると考えています。

 生保の事業運営には長期的な視野が必要な一方、短期的なニーズには機敏に対応する必要があります。コスト削減などの取り組みを通じて、運用利差益がマイナスになっても、利益を出せる体質にしておかなければなりません。

── 今後の目標は。

市原 14年6月にまとめた14~17年度の4年間が対象の中期経営計画「ネクスト・チャレンジ2017」では同期間を「統合の進化・発展期間」と位置付け、生保の企業価値を測る指標「エンベディット・バリュー(EV)」を現状から450億円超増やす目標を掲げています。

 今から10年後の25年には、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になります。これからは変化のスピードと激しさがますます増していくと考えられるので、変化やニーズに的確に対応できる会社になりたいと考えています。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 埼玉県や北海道、神奈川県、三重県など、そ

れぞれの現場の最前線で、損害保険のリテール営業

に打ち込みました。地方にはいずれもその地特有の良

さや人情があるものです。がっちりと地域に入り込み、

食べ物や人付き合いを楽しみました。

Q 最近買ったもの

A 自分用のぐい飲みと女房の湯飲みです。

Q 休日の過ごし方

A 体を休めたい時はサウナ、動かしたい時は散歩や

ゴルフ、スポーツジム、美術館巡りなどをして過ごします。

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 ■人物略歴

 ◇いちはら ひとし

 1951年千葉県生まれ。74年早稲田大学政治経済学部卒業、大正海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。98年代理店システム推進担当部長、2004年執行役員人事部長、06年同常務、10年同専務などを経て14年4月から現職。63歳。