2015年

5月

19日

ワシントンDC 2015年5月19日号

 ◇クリントン氏立候補表明 高まる外交政策への関心


堂ノ脇 伸

(米国住友商事会社ワシントン事務所長)


 前国務長官のヒラリー・クリントン氏が4月に民主党候補として正式に立候補を表明し、米国民の関心はいよいよ2016年秋の大統領選挙に移りつつある。

 対する共和党ではブッシュ前大統領の実弟であるジェブ・ブッシュ氏が同党候補として党の穏健派を中心に支持を集めて最有力視されている他、党内保守基盤の支持を背景にテッド・クルーズ上院議員、ランド・ポール上院議員やマルコ・ルビオ上院議員といった若手の有望株が相次いで出馬を表明、他にもスコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事の名前も取りざたされており、今後各候補がどのような政策を訴えていくかが注目される。

 民間調査会社ギャラップによれば米国の有権者が自国の最大の問題として認識する関心事はここにきて「経済」よりも「政治」にシフトしつつあり、特にその中でも昨今は、目まぐるしく変わる国際情勢に米国自身がどのように向き合うのかという外交政策に注目が集まりつつある。

 イラン核協議や過激派組織「イスラム国」(IS)、シリア、イスラエル、サウジアラビアとの関係といった中東問題、ウクライナを巡る対露問題、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立を期に国際社会で大きな発言力を獲得することに意欲を燃やす中国に加え、テロ支援国家の指定が解除されたキューバなどに対し、米国がいかなる外交姿勢をもって対峙していくのかを、今後各候補は示していかねばならない。

 外交経験という意味では国務長官として最前線で従事したクリントン氏に分があるように思われがちであるが、同氏については在任中のリビア・ベンガジの米領事館テロ事件における対応が不十分であったという疑惑がついて回る。また同じ民主党を支持基盤とする現政権の国務長官でありながら、中東問題を巡ってはオバマ大統領とは意見の相違があったことが明らかになっており、この延長線上で今後いかなる外交政策を自らの支持基盤に訴えていくかで微妙なかじ取りが求められよう。


 ◇メディアの洗礼も


 一方の共和党ではマルコ・ルビオ氏が11年の上院議員就任以来、上院外交委員会に在籍して中東政策などの外交分野に強い関心を示してきており、保守勢力の支持を得て「強い米国」を志向する姿が注目されている。だが、彼をはじめブッシュ、クルーズ両氏らがオバマ政権の新キューバ政策には懐疑的な姿勢を示したため、キューバとのビジネスを切望するビジネス界からの失望をかったとの意見も聞かれる。

 また、同じ共和党ではリバタリアンの代表格のランド・ポール氏が早くも外交政策を巡ってメディアによる洗礼を受けている。ポール氏は過去外交について非介入主義、あるいは孤立主義ともとれる言動を繰り返していたが、ここ数年は大統領選を視野に保守層の支持を得る目的で徐々にその姿勢の修正を試みていた。4月7日の立候補表明の翌日、NBCテレビのインタビューで「あなたはかつて、イランは脅威ではないと言い、軍事費の削減を訴え、イスラエルへの経済支援にも反対の姿勢を示していたが、今はそれぞれについて正反対の意見を述べている」と指摘する女性キャスターの発言に対し、色をなして遮る姿が映し出されたのだ。外交政策が同氏にとってのアキレスけんとなりかねない印象を与えてしまったようだ。

 目まぐるしく変わる国際情勢の中で、外交が大統領選の一つの争点となる可能性は極めて高く、またそれが自らの足をすくう可能性も秘めているだけに、各候補ともに慎重な政策づくりに余念がないようだ。