2015年

5月

19日

経営者:編集長インタビュー 斎藤保 IHI社長 2015年5月19日号

 ◇保航空機エンジンと車用ターボが成長を牽引


 総合重機大手IHIの事業領域は、発電用ボイラーやガスタービン、タンカー、コンテナ船から、航空機用エンジンやLNG(液化天然ガス)貯蔵設備、橋梁、ロケットなど多岐にわたる。現在、業績を引っ張っているのが、航空機エンジンと自動車向けのターボチャージャー(過給機)。世界の航空機市場は年率約5%成長を続けており、20年後には約2倍になる見込みだ。IHIは、自衛隊機のエンジンに加え、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)などエンジンメーカー世界大手が作るエンジン部品の生産や開発、保守にも携わる。

── IHIの航空機エンジンの強みは何でしょうか。

斎藤 我々は1950年代の終わりから航空機エンジンに携わってきました。地道に改善を積み重ね、コスト面でも世界一の水準で作れるようになりました。(GEやP&Wなどのエンジンメーカーから)開発力が認められ、新型エンジンの開発をする時には必ず我々に声がかかります。技術的な強さと生産的な強さの両方があるのが我々の強みです。

 航空機エンジンの構成部品で長さ約3メートルの「ロングシャフト」に関しては、世界の中大型航空機の7割がIHI製です。

── 7割ものシェア獲得の秘訣は。

斎藤 ロングシャフトはエンジンに一つしかない。別の言い方をすると生産的な効率が悪いため、エンジンメーカーは外注する戦略を採っていました。我々は機械加工系が得意でロングシャフトも作り続けました。時代とともにシャフトはだんだん長くなり、技術的にも製造が難しくなりました。今では、他のメーカーは高い精度で真っすぐなシャフトを生産できなくなり、当社の技術が世界一となりました。まさにやり続けたことの成果です。── 自動車向けのターボチャージャーも好調と聞いています。

斎藤 累計で5000万台以上を生産し、国内トップシェアです。ターボチャージャーを作る企業は世界に4社あり、売上高では当社が3番目。回転系の機械はもともと得意で、基礎技術の高さが認められています。今後も安心して使っていただける信頼性向上をさらに目指し、2020年に年間生産台数1000万台を計画しています。

── CO2(二酸化炭素)排出規制が強くなるなか、石炭や天然ガスに関する技術の将来性をどう見ていますか。

斎藤 我々が得意な火力発電用の石炭だきボイラーは非常に効率がいいので、普通のボイラーに対してCO2の排出が少なくて済むメリットがあります。インドネシアでは、水分が多く低品質のため未利用だった褐炭から合成ガスを取り出す実証運転を2月に開始しました。

 一方、天然ガスは世界の需要が今後も増える見通しです。当社にはLNGの貯蔵設備や、運搬船用のLNGタンクなどの事業もあり、石炭やガス関連事業は有望分野だと考えています。

── 新規事業はどうでしょうか。

斎藤 インフルエンザワクチン原薬の製造技術を開発したり、藻類バイオ燃料の研究開発も進めています。我々が成長を期待する新しい事業を取り込みながら、次の成長を達成していきたい。

 また、事業の上流、下流、他の事業との組み合わせなどの収益拡大策も進めています。例えば、富山大学附属病院の駐車場の運営。これまで、我々はハードウエア(パーキングシステム)しか納めていなかったですが、運営もしています。国内の太陽光発電所では売電事業に携わったり、蓄電池を設置して稼働データを検証するなどの取り組みも進めています。


 ◇遠隔で設備をモニター


── ドイツで「インダストリー4.0」と呼ばれる情報通信技術(ICT)をフル活用した製造業の効率化が進んでおり、話題を呼んでいます。

斎藤 四つの事業部門を横断的につなぐ三つの統括本部を作り、その一つ「高度情報マネジメント統括本部」はインダストリー4.0に近いことをしています。さまざまな機械や設備から情報を取得、解析、フィードバックし、製品やサービスの高度化を進めています。

 また、遠隔で設備の稼働状況をモニターできる「リモートメンテナンス共通プラットフォーム」を我々が納めるハードウエアに埋め込んでいます。将来的にはメンテナンス(保守)事業につながっていくでしょう。

── これだけある製品群をどう経営しているのですか。

斎藤 事業領域を四つに分け、担当の取締役が成長に対する責任を負

い、それぞれの事業担当には、事業を伸ばすことだけでなく、収益を出すことを求めています。ただ、IHIの製品のほとんどは、ボイラーや蒸気タービン、舶用クレーンなど造船に関わる業種から派生していま

す。航空機エンジンや自動車用のターボチャージャーも、もともとは蒸気タービンで培った回転機械の技術に由来します。我々は製造業ですので、ものを作り、現場力で改善し、競争力を上げる、というのは全てで共通しています。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=谷口 健・編集部)


 ◇横顔


 Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 A F-15(戦闘機)の組み立てや試験などの工場現場、エンジンの基本設計や開発のマネジメントなどの技術開発、両方を経験しました。仕事に没頭していました。

 Q 最近買ったもの

 A 本です。ジャンルは関係なく、いろんな本を読みます。

 Q 休日の過ごし方

 A 読書か散歩です。付き合いですが、ゴルフもします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ■人物略歴

 ◇さいとう たもつ

 山形県山形市出身。1975年、東京大学工学部を卒業後、石川島播磨重工業(現・IHI)に入社。2006年、執行役員。08年、航空宇宙事業本部長。11年、副社長。12年4月に社長に就任。62歳。