2015年

5月

26日

経営者:編集長インタビュー 柵山正樹 三菱電機社長 2015年5月26日特大号

 ◇強い技術をより強く 「バランス経営」を推進


 三菱電機は2014年度の売上高が前年度比6.6%増の4兆3230億円、営業利益が同35.1%増の3176億円と増収増益だった。当期純利益も3229億円で同29.7%増加するなど好調だ。

── 09~14年度の5年間では売上高が1.3倍に、営業利益が3.4倍にそれぞれ増加した計算です。

柵山 当社の五つの事業領域(セグメント)のうち、重電システムと情報通信システムの二つは、社会インフラ関連の製品や技術が多いため、景気変動の影響を受けにくく、安定して推移してきました。

 この5年間は残りの産業メカトロニクス、電子デバイス、家庭電器の三つの事業領域が伸びました。強みを作り上げたところに、景気回復の追い風を受けることができました。

── 特に14年度は、産業メカトロニクスと電子デバイス両部門の売上高が、それぞれ前期比17%増、同22%増となるなど伸びが大きかった。

柵山 産業メカトロニクス部門は、中国市場が堅調だったファクトリーオートメーション(FA)システム事業と、北米向けが伸びた自動車機器事業が好調でした。

 FAシステム事業には「e‐F@ctory(イーファクトリー)」と呼ぶ製品群があります。生産現場の最前線から設計部門までを結んだシステムで共通のデータを使用できるものです。生産ラインが停止した時には、いつどんな部品を組み立てている時になぜどれだけ停止したかを把握できるようになります。

 このような仕組みを伸ばしていければ、生産工程の自動化やデジタル化を通じてものづくりの高度化・高効率化を目指す「インダストリー4.0」と呼ばれる市場にも入っていけるのではないかと思っています。

── 電子デバイス部門の伸びの要因は何ですか。

柵山 けん引役はパワー半導体です。交流を直流に変換したり、電圧を変えたりする部品など、家電から産業用モーター、自動車、鉄道車両、発電機器まで、電力の制御や供給が必要なあらゆる領域で使われています。中でも、炭化ケイ素(SiC)を用いた小型・高性能の次世代パワー半導体は今後の大きな武器です。鉄道車両や太陽光発電システム、パッケージエアコンなどにすでに投入し、省エネ化に貢献しています。耐熱性にも優れ、自動車にも有利です。コストや長期信頼性が課題ですが、20年ごろにはハイブリッド車や電気自動車の新モデルに搭載されるようになるでしょう。

── 今後、重視する国や地域は。

柵山 地域別の売上高はアジアが圧倒的に大きいのですが、何と言っても、日本が6割強と最も大きなシェアを占めています。国内市場はこれからも重視する考えです。

── 各国でインフラ需要が高まっています。

柵山 新しい街や都市ができれば、鉄道や電力、ビルなどの需要が生じますから、ビジネスの広がりが期待できます。例えば現地企業と組んで展開している中国のエレベーター事業では、高さ632㍍の超高層ビル「上海中心大厦」に設置する世界最速の分速1080メートルのエレベーターが今、仕上げの段階に入っています。

── 企業の合併・買収(M&A)についてはどう考えていますか。

柵山 似たような事業を手掛ける企業を買収して売り上げや営業利益だけを高めようと考える「足し算」型のM&Aには興味ありません。自社にはない技術や市場を持っていたり、既存のビジネスに役立ったりするような企業など、相乗効果を発揮できる「掛け算」型のM&Aを進めたいと考えています。


 ◇外せない家電


── 電機メーカー各社の業績に格差が開きつつあるように思います。

柵山 当社も01年前後の業績は厳しいものでした。そこでその頃から成長性、収益性、健全性の三つに取り組む「バランス経営」を進めてきました。思い返せばそれが、業績の谷間を浅くすることにつながっているのだと思います。

具体的には、DRAMやシステムLSI、携帯電話など、一定の利益を出すために大きな設備投資や市場シェア、開発投資が求められる事業から撤退する一方で、技術そのものによって自社の強みを定義できる事業に絞り込んできました。パワー半導体をはじめ、モーターやレーダー、FAといった技術です。幅広い事業領域で基盤となるような強い技術をより強くすることを目指してきました。

── 家電事業から撤退・縮小する電機会社も目立ちますが、御社の今後の方針は。

柵山 当社にとってテレビや冷蔵庫、エアコンなどを柱とする家電部門は、事業規模、利益の両面で大きく貢献してきました。安全や快適、環境への貢献を目指す当社の理念から言っても外すことはできない事業です。

── 経営指標として改めて注目される株主資本利益率(ROE)についてどのように考えていますか。

柵山 01年から経営目標に掲げてきました。今でも、20年度まで継続的に達成すべき目標として10%以上を目指しています。

 ただし、借入金比率15%以下の目標も併せて掲げています。いたずらに数字を追い求めるのではなく、健全な財務体質を維持しながら達成を目指します。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)


 ◇横顔


 Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 A エンジニアとして神戸製作所で大型発電タービンの設計に取り組みました。設計に携わったタービンの使われている発電所は今もベトナムやサウジアラビアなどで稼働しています。真っ暗だった街が、明るく照らされていると思うとうれしいものです。

 Q 最近買ったもの

 A 当社製の製造番号(シリアルナンバー)1の銘の入った高画質対応「4Kテレビ」です。給与から天引きされる形で購入しました。

 Q 休日の過ごし方

 A ゴルフをすることが多いです。

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 ■人物略歴

 ◇さくやま まさき

1952年兵庫県生まれ。76年3月東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、77年3月同博士課程中退後、三菱電機入社。2008年常務、10年専務、12年副社長などを経て14年4月から現職。63歳。