2015年

6月

02日

ワシントンDC 2015年6月2日号

 ◇米輸銀の権限切れ目前 業務停止なら米輸出企業に打撃


須内康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)


 米国輸出入銀行(米輸銀)の年次総会が4月23日と24日にワシントンDCで開催された。筆者も出席し、米国の輸出企業、政府関係者、金融機関などから1200人以上が参加する盛況ぶりに目を見張った。冒頭、ホックバーグ米輸銀総裁は、「米輸銀は2009年以降、(輸出を通じて)130万人以上の雇用を創出した」と自らの総裁就任後の成果を訴えるとともに、「米国の企業や労働者が米輸銀の支援を求めている」と米輸銀に対する期待を強調した。

 米輸銀は、米連邦政府が設立した公的輸出信用機関だ。貿易金融を通じて、特に米国の輸出を促進し、米国の雇用を創出することを使命としている。リーマン・ショック以降、民間金融機関の与信能力が制約されるなか、米輸銀の与信承諾は大幅に拡大した。

 輸出振興による雇用創出、経済浮揚を打ち出しているオバマ政権で、米輸銀は重要な位置にある。10年に発表された、5年間で輸出倍増を図る経済戦略「国家輸出イニシアチブ(NEI)」、その後続として昨年5月に発表された「NEI/NEXT」でも、輸出企業に対する金融支援拡大を一つの柱として盛り込んでおり、米輸銀は中核的役割を担う。 今回の総会でもスーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が基調講演を行い、プリツカー商務長官、フロマン通商代表らが登壇するなど、米輸銀を重視するオバマ政権の姿勢がうかがわれた。ライス補佐官は講演で「オバマ政権はNEIのもと成果を生み出したが、さらに市場を拡大するためには米輸銀の存在が不可欠」「米輸銀は米国の外交政策の重要な一部だ」と述べた。


 ◇共和党保守派が反対


 今、米輸銀が直面する最大の課題は、業務権限の再授権だ。同行は、法律によって業務権限が授権されている。もし再授権がされなければ、新規与信の業務が停止する。同行の再授権法は昨年9月末に期限を迎えたが、議会で意見が対立し、最終的に今年6月末までの一時的な授権となった。議会では、民主党や産業界寄りの共和党穏健派が再授権を支持する一方で、ティーパーティー(茶会派)を中心とした共和党保守派からは反対の声が上がっている。

 現在、上院と下院で賛成派の一部議員が再授権法案を提出しているが、上下両院とも法案の審議に至っていない。上院では、本件を扱う銀行住宅都市委員会が6月2日、4日に米輸銀に関する公聴会を開催すると発表しており、議論の進捗が期待される。だが下院では、所管する金融委員会の委員長を米輸銀反対派の共和党・ヘンサーリング議員が務めており、審議のめどが立っていない。

 米産業界では全米商工会議所、全米製造業協会が米輸銀を支持し、再承認法案の早期可決を議会に訴えている。年次総会で登壇した米輸銀支持派の3人の上下両院の議員も、中小企業をはじめ米企業が国際市場で競争するうえで米輸銀は不可欠だとして、会場の参加企業に対し、再授権への働きかけを訴えた。

 世界には新興国を含め約60の国で公的輸出信用機関が存在する。昨今の輸出市場では、中国をはじめ新興国との競合が顕著になっており、新興国は輸出振興のため、政府がさまざまな形で支援している。ホックバーグ総裁も年次総会の演説で、特に米企業が中国との競争に直面している状況に言及し、警戒感をあらわにした。そして「米国は、国として明日の経済をどのように成功させていくのか、そのために何が必要なのか」と問いかけた。この問いに米議会はどう答えを出すのか、米輸銀再授権法案の審議の行方が注目される。