2015年

6月

02日

経営者:編集長インタビュー 羅怡文 ラオックス社長 2015年6月2日号

◇14期ぶり黒字、大型増資で免税店網を拡大


 外国人旅行者向けの免税店事業で急成長を遂げ、14期ぶりに最終黒字を達成したラオックス。2009年に中国の家電量販店チェーン、蘇寧電器集団(現・蘇寧雲商集団)が買収。ラオックスは家電量販店から総合免税店事業へと業態を転換した。現在国内展開する店舗はすべて免税店だ。

── 2014年12月期決算は売上高501億円、営業利益17億円、純利益12億円で14期ぶりの黒字となりました。

羅 グローバル化で日本が海外の消費者を受け入れ、外国人旅行者向け市場が成長分野になると考えて09年から、総合免税店事業に資源を集中してきました。日中関係の悪化や東日本大震災など厳しい環境が続いてきましたが、ようやく良くなった。好業績はインバウンド市場で他社に先行したことが大きいですが、我々の力よりも時代の流れです。

 ◇春節は過去最高売り上げ


── 今年の春節(旧正月)は中国人旅行客が大量に購入する「爆買い」が話題になりました。

羅 すさまじかったです。中国の決済カード「銀聯カード」の日本における取扱高は2月だけで約600億円に上り、当社も過去最高の売り上げを記録しました。今後、日本の流通・メーカーにとって旧正月が大きな商戦の一つになるのは間違いないでしょう。

── 売れ筋はやはり電気炊飯器?

羅 電気炊飯器はロングセラー商品です。3年前の売れ筋は平均単価4万円程度でしたが、今は7万、8万円台の商品がよく売れます。実は、家電は店舗で扱う商品の3割程度で、時計、ジュエリー、化粧品、服飾関連などさまざまな商品を扱っています。中小メーカーの商品発掘にも取り組んでおり、南部鉄器や爪切り、包丁など、日本の良いものを取りそろえています。観光客は買い物の時間が限られているので、ラオックスに行けば何でもそろうという店づくりを心掛けています。

── 百貨店、家電量販店もインバウンド事業を本格化しています。

羅 参入企業が増えるのは将来性があるということですし、良いインフラもできる。歓迎すべきことです。ただ、競争が激しいのは確か。当社は先行してきた分、ノウハウがあるし顧客もつかんでいる。店舗運営でも優れています。他店は商品購入後にお客様が免税コーナーに行き8%の消費税還元を受けますが、当社は決済時にレジで免税手続きを処理するので喜ばれます。言語も店舗スタッフの半数は多言語対応しています。

── 昨年から株価が上昇しました。投資家の反応は。

羅 これまでは個人投資家、国内投資家がメインでしたが、最近は海外の機関投資家からの問い合わせが増えています。当然、復配への期待も高まっています。17年12月期までの中期経営計画の中でできるかぎり早期に実現したいです。


 ◇420億円の大型増資


── 3月に約420億円の大規模増資を発表しました。

羅 約310億円を公募増資で、約110億円は親会社に対する新株予約権の発行で調達します。公募増資の反応は良く、成功しました。調達した資金は全国ネットワークを作って効率良く運営していくための成長資金などに割り当てます。現在20店舗の国内店舗を50店舗まで拡大する計画で、日本最大の総合免税店ネットワークになるでしょう。

── 日中関係の悪化が事業に与えるリスクは。

羅 日中関係は我々にとっても業績を左右する大きな要因の一つですが、中長期的に日中関係は安定するだろうと確信しています。また中国のお客様だけではなく、アジアを中心とした世界のお客様、そして日本人のお客様も我々の対象です。

── 中国本土での事業は。

羅 以前は10数店舗展開していましたが、昨年いったん集約し、現在は南京の3店舗を残すのみです。中国での競争は厳しく、eコマース(電子商取引)の発展も目覚ましいので苦戦しています。ただ、中国マーケットを放棄するわけではありません。今後は店舗展開とともに、昨年8月に開始したeコマースと貿易仲介も併せて展開していきます。eコマースはメーカー側の意向で、中国でネット販売できる日本の商品は限られているので、メーカーと交渉中です。業績に占める中国本土での事業の割合を現状の1割から3割程度まで高めたいです。

── 黒字を達成し、成長の道筋が見えてきました。出口戦略は。

羅 09年に蘇寧電器が15億円で買収し、現在、時価総額は約2500億円の規模になりました。ただ、親会社はラオックスをグローバル展開の一つに位置付けているので、投資として見ているわけではありません。私自身は投資家ではないので、事業をしたい。まだまだこんなものじゃないという思いもあります。世界を相手に日本の良いモノ、サービスを発信していきたいと考えています。

── 日本語がお上手ですね。

羅 1989年に日本に留学して、92年からは日本で中国語メディアなどを経営していました。当時から日本の良さが海外に伝わっていないことを残念に思っています。日本の価値を一番わかっていないのは日本人です。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A メディア事業を中心にテレビ局や新聞社、雑誌を立ち上げ、中国語の総合メディアグループをやりたいと思っていました。大きな夢を抱いていた時期でした。

Q 最近買ったもの

A エスプレッソマシーンです。休日には濃淡の調整などいろいろいじっていますが、まだ使いこなせていません。

Q 休日の過ごし方

A 土日は出張が多いですが、休みがとれた時は妻と食事に出かけたり、散歩したりして過ごします。

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 ■人物略歴

 ◇ら いぶん

1963 年生まれ。中国上海市出身。96年横浜国立大学大学院経済研究科修了。92年中国語新聞『中文導報』を創刊、95年中文産業を設立。2006 年上海新天地(現・日本観光免税)を設立。09年8月ラオックスの社長に就任。52歳。