2015年

6月

16日

インタビュー:ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』筆者 

 ◇「人類が抱える21世紀の課題は病原菌ではなく地球資源の枯渇」


 1万3000年にわたる人類史や文明史を書いた世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』(原題:“Guns, Germs, and Steel”)の筆者、ジャレド・ダイアモンド氏(77)。彼の目に、混沌とする現代社会はどう映っているのか。ロサンゼルスで話を聞いた。

(聞き手=土方細秩子・ロサンゼルス在住ジャーナリスト)


 ◇人類史から見る世界経済


── 1万3000年の人類史から見て、現代の経済状況をどのように見ることができるか。

■人類が文明を持ち生活し始めたのはおよそ5000年前。この5000年間、経済は多少のアップダウンはあっても常に右肩上がりで成長してきた。科学技術は日進月歩で進み、世界の人口も増加の一途をたどっている。現在の停滞は歴史から見れば一時的なもので、やがて世界経済はさらに上昇する可能性もある。

 しかしながら、現代に生きる私たちは非常に特殊な時代にいる。それは地球資源の枯渇に直面しているという点だ。石油は2050年にも枯渇すると考えられているし、森林や水など今後、不足が予想される資源はたくさんある。経済活動を支えてきたこうした資源がなくなった時、人類はどうなるだろうか。

 資源の枯渇を防ぐには、資源の確保が必要になる。その意味で日本は矛盾している。島国で資源の大半を輸入に頼る日本は、世界の資源を守るべき立場にいる。にもかかわらず、例えば、日本は世界中からマグロを買いあさっている。地中海のマグロを保護しようという動きが欧州であるが、日本はこれに反対している。マグロだけではないが、日本のような国こそが世界資源の保護に指導的な役割を果たすべきではないかと考えている。

── フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が世界で話題になるなど、経済格差の議論が世界で巻き起こっている。教授は『銃・病原菌・鉄』で、「現代世界の不均衡を生みだした直接の要因は、西暦1500年時点における技術や政治構造の各大陸間の格差である。鋼鉄製の武器を持った帝国は、石器や木器で戦う部族を侵略し、征服して、滅ぼすことができた」と分析している。

■人間社会の格差というのは、資本主義が生まれるはるか以前から存在する。人間社会では、集団の数によって、そのなかの社会的な役割などが変化する。例えば、数十人の集団で狩猟生活を行うような場合、リーダーは存在するがそれは極めて弱いリーダーで、人々は協力しあって狩猟を行うので、それほどの格差は生まれない。しかし、これが数百人の集団となると、より強力なリーダーが生まれ、数千人になると、王様やそれに近い存在が出てくる。

 日本を例にとると、縄文時代には数十人の集団が狩猟生活を行っていた。しかし、弥生時代になり農業が始まり人口が劇的に増えると、社会的な格差が日本にも見られるようになった。弥生時代の墳墓に装飾品が埋葬されていることなどから見ると、権力者が確実に存在したことがわかる。いかなる社会でも富を持つものが社会の上層に位置する。…