2015年

6月

16日

フランス:民間企業の株を買い増す仏政府 2015年6月16日特大号

 ◇背景に根強い雇用問題


松本惇

(みずほ総合研究所主任エコノミスト)


 フランス政府が、民間企業の株式を買い増している。今年4月には自動車大手ルノーの株式を取得し、その費用は8億~12億ユーロ(約1090億~1630億円)だったものとみられる。5月には航空大手エールフランス─KLMについても、3300万~4600万ユーロ(約45億~62億円)をかけて買い増ししたもようだ。これらの結果、仏政府の保有割合は、両社ともに20%近くに高まった。

 仏政府によるこうした動きの背景に、「実体経済回復のための法律2014─384号」(通称フロランジュ法)がある。

 同法は、2014年3月に制定されたもので、株式を2年以上保有していれば、16年4月から株主の議決権が2倍になる(2倍議決権)のが特徴だ。仏政府は、法制定後から、ルノーやエールフランスの株を買い増しており、2倍議決権が適用されれば、経営に対する発言力が一気に高まることになる。

 フランスでは、定款を修正すれば、長期保有株主の議決権を高めることが認められていた。フロランジュ法の制定後は、3分の2以上の株主の賛成をもって1株1議決権を定款に明記しない限り、2倍議決権が適用される。

 フロランジュ法には、雇用に関わる機能もある。従業員1000人以上の企業が事業所を閉鎖する際、事業所の売却先を探すことなどを企業の努力義務とするものだ。元々は、11年に鉄鋼大手アルセロール・ミタルがフランス北東部のフロランジュ製鉄所を閉鎖すると発表した際、閉鎖で生じる従業員の解雇に対して世論から批判の声が高まり、オランド大統領(当時は大統領候補)が対応を約束したことが契機となっている。フロランジュ法という呼び方が一般的となっているゆえんだ。


 ◇賛否両論の2倍議決権


 フロランジュ法の2倍議決権に対しては、賛否両論の議論が持ち上がっている。仏政府が説明するように、長期保有株主の影響力を強化することが、中長期的な企業の発展を念頭にした意思決定を可能にし、企業価値の向上に寄与するとの前向きな意見がある。また、既に多くの大企業は、従来の制度によって2倍議決権を導入することで、株主に長期保有を促してきた。…