2015年

6月

16日

世界を変えるiPS産業:「塗って細胞再生」するゼラチンゲルは産業化近い 2015月6月16日特大号

◇再生医療はiPSだけではない


日諸 恵利

(みずほ情報総研コンサルタント)


「再生医療」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、iPS細胞やES細胞など人工的に細胞を作り出し、それを移植することだろう。しかし、再生医療の定義には、もっと広範に、「細胞の自然治癒力を増幅させることで、疾患を治癒させること」も入る。つまり、自己治癒力を高めることで慢性疾患の悪化スピードを遅らせることや、高齢や合併症などにより従来の治療が困難な患者も自己治癒力を高めることで適用対象になりうるということである。この二つの再生医療は、iPS細胞やES細胞の再生医療への応用より実はむしろ臨床に近く、市場化に向けて高い可能性を持っている。

 ◇京大・田畑教授の先端研究


 その代表的な事例が、京都大学・再生医科学研究所の田畑泰彦教授(生体材料学)が進める研究である。

 田畑教授が関与している研究の一例が、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)が染み出る固体ジェル状のゼラチン「bFGF徐放化ハイドロゲル」を利用した血管再生治療だ。また、繊維の骨組みが入った多孔質(スポンジ状)のゼラチンゲル(水を含んだ直径1センチ、厚さ2ミリの円盤状固体)「力学補強ゼラチンスポンジ足場」と細胞を使った歯周組織再生もある。これらの研究に共通するのは、「細胞力を高めるために細胞の周辺環境を作り与える」という点である。

 体の細胞が増殖するためには、(1)細胞の「家」となる細胞外マトリクス(細胞が持つ天然の足場)、(2)細胞の「エサ」となる細胞増殖因子、(3)「エサ」を細胞に届けるDDS(ドラッグデリバリーシステム)──が必要である。

 しかし、病気やけがによって再生できない状態に陥っている細胞は、これらの周辺環境を自らの体内で用意する機能が損失している。つまり、反対に言えば、この周辺環境を外から補強することで、細胞の再生能力を高め、治療効率を上げることができる。

 例えば、田畑教授のbFGF徐放化ハイドロゲルを利用した血管再生治療は、未分類膠(こう)原病(げんびょう)の患者に対して使われている。膠原病とは、軟骨や骨、血液などの結合組織に病変が生じる自己免疫疾患の総称であり、対症療法として薬の投与を行うことがほとんどである。症状がひどい場合には、皮膚組織が破壊され、四肢の切断に至る可能性もある。………


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