2015年

6月

16日

欧州:金融緩和を歓迎する欧州左翼 2015年6月16日特大号

 ◇日本とは異なる経済の見方


松尾匡

(立命館大学教授)


 今、全欧を反緊縮の闘いが吹き荒れている。その日の出の勢いの前に、ついこのあいだまで全欧をうろついていた極右の姿は薄れはじめて見える。そう、彼らの方こそただの「妖怪」だったようだ。

 目下その最も劇的な表れが、今年1月25日のギリシャ総選挙での「急進左派連合」の勝利だったと言えよう。この選挙に際して同党が発表した訴え「左翼の政府──急進左派連合は何をするか」の英訳(The Government of the Left: What will SYRIZA do!)が、同党の加盟する、EU(欧州連合)の共産党・左翼党の連合「欧州左翼党」(Party of the European Left)のホームページで読める。その中には、次のような一節がある。

「欧州中央銀行(ECB)は量的緩和政策を使って直接に国債を買い入れるべきである。我々は、1月22日の欧州中銀理事会でこの政策が採用されることを望む」

 実際、同理事会では、欧州中銀としては初めての量的緩和に踏み切ることが決定された。

 ちなみに日本共産党の機関紙『赤旗』は同月27日、当のギリシャ急進左派連合とその支持者による反緊縮集会の熱い闘いを肯定的に報じているが、見開き反対側の記事では欧州中銀のこの決定を報じ、その記事の「量的緩和とは」と題した解説では、「投機で経済ゆがむ」との見出しをつけ、極めて批判的な論評をしている。周知の通り日本共産党は、日本銀行の量的緩和に強く反対してきたが、ここには日本のことというような限定は何も書いてなく、誰が読んでも欧州中銀の決定への批判となっており、隣の面で熱く連帯するギリシャの同志たちと大きく評価を分けている。


 ◇欧州労連は量的緩和歓迎


 この量的緩和の決定については、欧州労働組合連合(European Trade Union Confederation)のベロニカ・ニルソン書記が即日、「経済政策における歓迎すべき転換があった」とのコメントを出している。欧州労連のホームページに出ている同日付の記事(QE not enough to stimulate growth)では、「予想され、長く待ち望まれた量的緩和の声明が欧州中銀によってなされた」と評した上で、「欧州中銀が債券を買うことは必要なことであるが、成長を刺激し職を創出するためには十分ではない」と警告している。そして、財政削減で需要を抑えることをやめ、量的緩和とリンクした高いレベルの投資を提唱している。ここで「投資」と言うのは、教育等が例にあがっているように、公共投資が主にイメージされているだろう。………