2015年

6月

23日

ワシントンDC 2015年6月23日号

 ◇上院でTPA法案可決 共和・民主が妥協と歩み寄り


堂ノ脇伸

(米州住友商事会社ワシントン事務所長)


 2016年11月の米大統領選挙に向けて、共和・民主両党が自らの政策主張を強めつつあり、今後、対立の構図がより深まると予想される。こうした中、現連邦議会で、つかの間ながらも超党派による協調と歩み寄りの動きが見られる。

 上院で大詰めを迎える環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の推進に向け不可欠とされる貿易促進権限法案、いわゆるTPA法案が5月22日、多くの共和党議員と一部の民主党議員の賛成により、紆余曲折を経ながらも、かろうじて可決されたことは、その好例と言えよう。

 米国政治の停滞は、10年の中間選挙に端を発する。保守色の強い「茶会派」の躍進により、共和党が下院で大幅に議席を増やして過半数を制したため、政府と上院が民主党、下院が共和党という「ねじれ現象」が生じたのが、そのきっかけだ。11~14年末の第112、113期議会を通じて、この「ねじれ現象」は継続。先鋭化する両党の主張は、保守とリベラルという対立軸の中で、妥協できないまま、結果的に可決できた法案の数は両会期共に1947年以来、最低水準となった。停滞する政治は、米国民の間に政治不信を生んだ。世論調査会社ギャラップの14年の調査によると、国民の81%が議会に対し、不信感を抱いているという。

 変化の兆しは、昨年11月の中間選挙の結果を受けて出始めた。共和党が下院と上院で過半数を獲得したことで少なくとも立法をつかさどる議会では、同党が主導権を握ることになった。すると、従来の「政治停滞の責任は、全てオバマ政権と民主党にある」という立から一転、協調姿勢を示し始めた。16年の大統領選を前に、責任政党として国民の信頼を勝ち取る施策を打ち出す必要が生じたためとも言われる。加えて、上院議員に占める共和員の数が100人中、54人と過半数を占めながらも、法案審議の議事打ち切りを可決できる60票や大統領拒否権を覆すことができる67票に満たないことも、協調姿勢に転換する一因となった。


 ◇大統領選近づくにつれ対立


 すなわち、主導権を握りながらも、実際に法案を通すためには、一部の民主党議員の協力を得ることが不可欠となり、そのためには、共和党が一定の妥協を示す必要が生じているのである。

 TPA法案を巡っては、対立するオバマ政権と議会共和党が「自由貿易の推進」の名の下に結託し、一方で、政権の支持基盤でありながら、保護貿易的な政策をうたう民主党と対峙するという点で、大変興味深い。上院では、法案の可決前に民主党が種々の修正案を出し、一旦、議事打ち切りの動議が僅差で否決される場面も見られた。

 結果的に、共和党が一定の妥協を示し、オバマ大統領が自ら一部の民主党議員を説得したことで、法案は62票の賛成を得て可決された。同法案は今後、下院で審議される予定だ。しかし、435議席中245議席と過半を占める共和党内には、オバマ政権への徹底的な抵抗を示す茶会派を中心に反対勢力が60人近くいて、反対票を投じる可能性がある。ここでも民主党勢力の取り込みが不可欠となり、法案の行方は予断を許さない状況にある。

 このように議会では、TPA法案などを巡り、妥協と歩み寄りの姿勢がうかがえるが、冒頭述べた通り、大統領選が近づくにつれ、両党共に、本来の党派的な主張を有権者に訴える必要が生じる。このため、またもや対立色が強まらざるを得ない状況にある。TPA法案は、少なくとも今夏の休会前に進展しなければ、次期大統領選の後まで、たなざらしとなる可能性がある。