2015年

6月

23日

全文掲載 商社特集インタビュー 国分文也 丸紅社長 2015年6月23日号

こくぶ ふみや 1952年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、75年丸紅入社。石油、エネルギー部門を中心に歩み、代表取取締役副社長執行役員を経て、13年4月から現職。62歳。

◇2018年は爆発力のある年に


 原油、石炭、銅など資源価格の急落や、買収した米穀物メジャー、ガビロンののれんなどの減損を計上し、純利益が従来予想の2300億円から1056億円に半減した丸紅。どう立て直すかを聞いた。

 

―― 2015年3月期の業績について

国分 振り返ると、丸紅にとってもっとも苦しかった2001年のAプラン(特別損失の一括計上と、業績のV字回復を骨子とした中期経営計画)で、2300億円の減損を一括計上した苦い経験があった。Aプランは、一つの教訓として「絶対に繰り返さない」を合言葉にやって来たにもかかわらず、結果として15年3月期にそれを上回る減損を出してしまったことを重く受け止めている。

少なくとも中国はじめ新興国が資源を買い漁り、価格が上昇を続けるという状況とは大きく変わりつつある中で、やはりここで減損を決断するしかないだろうという感覚があった。資源に限らず、ボラティリティ(変動率)の高い時代であることを痛感している。



―― 13年に2800億円を投じて買収した米穀物大手のガビロンは高値掴みだったと感じるか。

国分 ガビロンは今後高い収益力が見込まれ、我々にとって必要な投資だった。もちろん投資した分の十分な価値を生み出せたかという点で反省すべきところはあるが、上手く軌道に乗れば今後素晴らしいアセット(資産)になるという自信を持っている。


―― 15億豪ドル(約1400億円)を投じた豪州の鉄鉱石開発事業のロイヒルは減損していないが大丈夫か。

国分 まず、現在開発工事自体は順調に進んでいる。プロジェクトがしっかり管理されており、順調に行けば今年9月には稼働できる状態だ。ロイヒルの採算ラインは1トン=40ドル程度で、鉄鉱石の価格によっては3~4年は厳しい状態が続くとしても、それを乗り切れば十分に競争力はある。


―― 資源と非資源の比率はどうか。

国分 現在利益に占める資源比率はほぼゼロとなり、16年3月期見通しも2%としているが、原油や銅、鉄鉱石など多くの案件が18年に生産量のピークを迎える見通しで、その生産ピークを見越して設備投資を進めている。当社の原油の持ち分生産量は現在の日量約2万3000バレルから8万バレル前後に、銅の生産量は現在の年間約12万トンから15万トンに、鉄鉱石も17~18年にピークに達するだろう。先行投資を行なう上で経営上リスクはあるが、設備投資が完了し、ピークに来た時こそ、それまでの投資が実になり、成果として表れてくるだろう。そういった意味で18年は丸紅にとって爆発力のある年になる。


―― 資源価格の見通しは。

国分 鉄鉱石はトン当たり40~50ドルの辺りだと僕自身は思う。原油も1バレル=60~70ドルくらいの見通しだが、少なくともあと1~2年は、再度50ドルを切ることも、可能性としてはゼロではないのではないか。


―― 1~2年の間、生産コストが割れたら持ちこたえられるか。

国分 開発の案件をいくつか抱えており、原油の生産量を日量約2万3000バレルから8万バレルという、目標達成のための先行コストが重たい点はあるが、生産は60ドルくらいで採算が取れる案件も多く持っている。


◇フリーキャッシュフロー黒字化が絶対条件


―― 16年3月期の配当見通しは1株当たり21円で減配となる。

国分 当社の配当性向が低いということは理解しており、株主の期待に沿わなければならないと十分認識しているが、やはり01年以来の大減損をしながら配当性向を引き上げることはできなかった。16年4月から始まる次期中期経営計画を実施する中で、増配を検討したいと思っている。


―― 今年度の新規投融資は。

国分 16年3月期を最終年とする3カ年計画の中で、1兆1000億円の投資枠を設けたが、昨年度までの投資分9000億円と従来のキャペックス(設備投資分)1500億円、今期に機関決定している2000億円を加えると、投資枠を超えてしまう。そのため現在1000億~1500億円くらいの新規枠を設けたが、これらを使い切ると、16年3月期は4700億円キャッシュアウトする。今期はフリーキャッシュフローの黒字化を絶対条件としており、キャッシュアウト分の約4700億円をどうマネージしていくかがポイントだ。

平均的な営業キャッシュフロー2500億円に加え、資産の売却などで15年3月期の2200億円の回収実績と同様のキャッシュインを見込むと4700億円となり、キャッシュアウト分をカバーする見通しは付いている。


―― 営業キャッシュフローの目標は。

国分 なるべく早い時期に、3000億円出したいと思っている。


―― 資産の入れ替えはどうか。

国分 去年の入れ替えも含めた資産の回収は2200億円くらいになるが、これを今年は2500億円くらいを目標とする。現在資産回収のリストを作り、適宜回収していくプランで進めている。具体的な回収プランとしては、不動産関係などの低稼働の資産の回収や、さまざまなコンビネーションでの資産の入れ替えを想定している。古典的な伸びしろのある資産を、ある程度の高収益資産に塗り替えていきたい。


―― リスク管理の面ではどうか。

国分 パートナーがしっかりしている案件は成功確率が高い。最後までしっかりやり遂げるパートナーと組むことが大切だ。


◇機械は丸紅の強み


―― 健闘している子会社はどこか。

国分 米国の農業化学品事業のヘレナケミカル社だ。28年前に丸紅が買収したヘレナケミカル社は、これまで米国丸紅の傘下にあり、順調に売上を伸ばし続けてきたが、今後の長期的な収益獲得には、本社との物理的な距離による弊害や、米国丸紅を介した組織体制を見直す必要があった。今回、改めてヘレナケミカル社を「グローバルの中のローカル」と位置づけ、米国丸紅を介さず、東京本社直轄の「ヘレナ事業本部」の管掌とし、経営上の権限を委譲することで、組織体制を強化した。

 それと共に、これまで通りの地域に根ざした事業展開の両方を実現する、新たな事業構造と成長戦略の構築を実現した。我々はこの新たな成長戦略を「プラットフォーム型」と呼び、ヘレナ事業本部だけでなく、米穀物大手のガビロンや米穀物子会社のコロンビアグレインなどの子会社も強化し、伸ばして行くつもりだ。今後、ヘレナケミカル社のような核となる子会社を、アジア・ヨーロッパ・アフリカなどに、どれだけ作れるかが勝負だと感じている。


―― 輸送機もかなり良い業績だ。

国分 輸送機の業績はこの数年で相当伸びている。現在の収益のドライバーは機械部隊。その中でもインフラ関係、電力、重電プラント、輸送機が相当伸びている。機械部隊は丸紅の強みとして今後も伸ばしていく。


―― 大手商社の業績上位3社と比べて、純利益で3倍の差が付いた。

国分 他社に比べ当社は、トップラインと資産効率が決定的に異なる。ほぼ総資産が同じで、これだけ差があるということは、まだ当社の中で低収益の資産が、相当眠っているということだと思う。


―― 現在が正念場、ということか。

国分 財務体質が他社に比べ遅れている。ネットDER(純有利子負債倍率)にしても、キャッシュフローにしても他社に比べ及んでいない部分が大きい。一度に総資産を増やすのではなく、まずは足元をしっかり固め、手持ちの資産をいかに有用化し、有用化できていないものをどれだけ入れ替えていけるか、この勝負だ。

 この5年で約2兆円弱投資した。それぞれの収益率を1%上げるだけでも収益は大きく変わるだろう。純利益、ネットDER(純有利子負債倍率)、キャッシュフローのバランスをしっかりと取り、その中で17年3月期から始まる次期中期経営計画の道筋を立てたい。

(聞き手:中川美帆、構成:荒木宏香・編集部)