2015年

6月

23日

商社の下克上:財務分析 過去の投資で巨額減損 2015年6月23日号

 ◇収益の源泉は逆張り案件


成田康浩

(野村証券エグゼクティブ・ディレクター)


 2015年3月期決算で、商社各社が巨額の減損処理を実施した。資源分野に限っても、同期に計上した減損など一過性の損失額は、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の5社合計で6100億円程度に上る。

 減損処理は過去5年程度を見ても絶えず発生しているが、多額の資金を投じた資源分野で市況が下落したこともあり、今回の損失処理額は過去と比べて大きい。しかも減損処理は、資源分野だけでなく、資源以外の分野でも発生している。また、過去の投資額に対し、リターンの低い事業も多い。このため株式市場では「新規投資ではなく、自社株買いや配当など株主還元策の拡充に資金を回すべき」との声が上がっている。


 ◇集中リスクが顕在


 近年の各商社の投資は、全て失敗だったわけではないが、全体では各社が期待するリターンを下回ったと見られる。各社は従来から「高値づかみ」にならないよう、投資規律を徹底し、投融資委員会などを設置して、投資案件を厳選する方針を示してきた。にもかかわらず、投資リターンが低かったのはなぜか。中国の経済成長の鈍化で資源価格が下落するなど、外部環境が悪化したという側面はあるが、内部的な要因もある。

 一つは、集中リスクの高まりだ。15年3月期の減損が住友商事や丸紅で大きかった一因は、集中リスクの顕在化もある。特に近年は、資源ブームで各社の利益や株主資本が大幅に増加したこともあり、投資額が拡大する傾向にあった。

 したがって、将来の損失発生に備えたリスク管理としては、一つの投資案件に過度に投資するといった集中リスクを排除することや、一般的な投資手法であるドル・コスト平均法のように定期的に投資を継続して、時間分散を図ることが必要だ。

 逆張り投資の減少も、投資リターンが低くなった内部的な要因の一つ。商社と投資ファンドを単純に比較することはできないが、投資ファンドに例えれば、商社が事業投資を積極化する過程で、各社の投資姿勢が「超順張りのロングファンド(買い専門ファンド)」だったと言えよう。

 近年でこそ各商社が、保有する資産を売却することで投資資金の回収を図る戦略を打ち出してきている。一方、商社は過去、不動産ブームやITブーム、資源ブームなどで事業環境の良い分野に積極的に投資するなど、経営資源を傾注。事業環境が悪化すれば、減損処理に追われることが多かった。実際、中国を中心に新興諸国の需要が拡大して資源価格が上昇した時、各社は資源分野に投資を集中させた。………