2015年

6月

23日

経営者:編集長インタビュー 高橋広行 JTB社長 2015年6月23日号

 ◇積極的なM&Aでアジアナンバーワンを目指す


 ジェイティービー(JTB)の2014年度の業績は売上高1兆3239億円、営業利益111億円、純利益は前期比94・3%増の147億円で増収増益となった。創立1912年、国内旅行会社最大手のJTBは積極なM&A(合併・買収)で世界展開を加速している。

── 足元の業績が好調です。

高橋 最も大きなけん引力となっているのは法人需要です。営業目標を達成した社員や販売店を招いての報奨旅行・招待旅行など企業のインセンティブ旅行といわれる分野が2014年度は活況でした。インセンティブ旅行は企業業績が良い時でなければ需要が生まれません。経済が回復トレンドにあると実感しています。

 国内旅行も拡大しています。昨年はテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(大阪市此花区)、今年は北陸新幹線開通などが需要を押し上げました。

 一方、海外旅行は円安の影響もあり低迷気味です。テロなど安全面を気にする人も多いようです。海外の低調を国内需要が支えるというのが昨年から今年にかけての傾向です。


 ◇クルーズ市場が拡大


── 14年の訪日外国人旅行者数は1340万人。インバウンド市場が盛り上がっています。

高橋 20年までに2000万人という政府目標は前倒しで達成できるでしょう。当社も外国人旅行者向けサイト「ジャパニカンドットコム」を経由したお客様が前年比195%を超える勢いで増えています。ただ、日本の旅行会社各社は訪日インバウンド市場に対応するビジネスモデルの構築に追いついていません。JTBグループも訪日インバウンド市場が売り上げに占める割合は1ケタ台。本格的に業績に寄与するのはこれからです。

── シニアの旅行市場は。

高橋 クルーズ人気の高まりが目覚ましいです。日本のクルーズ人口は約24万人で、ものすごい勢いで伸びています。クルーズというと高額な印象がありますが、2泊3日で20万円台からの手ごろな商品もあります。一度経験するとまた行きたくなる魅力があるため、リピーターが非常に多いのも特徴です。 

 高級旅館の提案にも力を入れています。年間100万件近くのお客様の評価や満足度をデータ化して、高評価を得た旅館のみを厳選して「華やぎ」「優雅」というブランドをつけて紹介しています。シニア層はゆっくり時間を過ごしたい、音楽鑑賞や歴史の探訪など目的を持った旅行を希望する人が多く、価格よりも価値の追求を重視する傾向があります。


 ◇地方の観光資源を発掘


── 安さを求める若者向けの旅行では、格安旅行会社が強いのでは。

高橋 当社の主力は熟年層なので、若年層の囲い込みは大きなテーマの一つです。卒業旅行を中心とした廉価な商品やLCC(格安航空会社)を組み込んだ商品など、20代の方々に当社のファンになっていただけるような商品を出しています。

 低価格帯だけではありません。一般の女性に現地に行ってもらい、彼女たちなりの楽しみ方を参考にハワイやベトナム旅行などをパッケージ化した「姫様」シリーズは、安くはない商品ながら14年度は年間約1万8000件売れたビッグヒット商品になりました。若者の海外旅行離れはパスポートの取得率などにも表れていますが、消費者目線の斬新な商品を出せば売れることがわかりました。

── 地方も観光客の誘致を積極化しています。

高橋 地域と連携して観光資源を掘り起こし、国内外に発信する取り組みを進めています。国内旅行が低迷するのは魅力ある観光コンテンツがないから。古くからの観光地しかなければ、飽きられるのは当然です。しかし、観光コンテンツ化すれば人を呼べる資源はたくさんあります。

 成功例に「地恵のたび」シリーズがあります。例えば、中小企業が集まる大阪府東大阪市は観光に無縁な地でしたが、「ものづくり観光」をテーマに企画したところ、全国から年間6000人の修学旅行生が工場見学に訪れるようになりました。町工場の皆さんは活気づきますし、人が来るのでお金も落ちます。広島県福山市の造船所、徳島県上勝町の葉っぱビジネスなどでも同様の取り組みをしています。

 従来の旅行会社のビジネスモデルは地元のお客様を旅行に連れ出すモデルでしたが、それだけでは地域が疲弊してしまう。地域の課題解決をお手伝いすることで活性化につなげ、潤ったら今度は旅行に行っていただく。そういった循環を生み出すことで当社も収益に結びけたいと考えています。

── 今後の方針は。

高橋 20年に取扱額2兆円、営業利益400億円を目指す経営計画を達成するため、アジアで圧倒的ナンバーワンを目指して海外展開を進めています。海外の有力旅行会社をM&A(合併・買収)してグローバルネットワークを築くために、15年度までの3年間で200億円を投じます。すでにブラジル、シンガポール、スペインで旅行会社を買収しました。「日本発・日本着」の旅行を対象としてきましたが、これからは「世界発・世界着」の日本を経由しないビジネスモデルに取り組みます。


(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=花谷美枝・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 前半は法人営業を担当していたので、営業と添乗に明け暮れました。多い時は年間100日くらい添乗しました。30代後半は本社勤務になりました。

Q 最近買ったもの

A 妻へのプレゼントにバッグを買いました。最近まで10年間単身赴任していたので、その罪滅ぼしをかねて。

Q 休日の過ごし方

A 時間があれば都内のあらゆる場所を歩き回っています。ウオーキングが趣味なので。先日は外国人旅行者に人気の「谷根千」(台東区谷中、文京区根津・千駄木)を歩きました。

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 ■人物略歴

 ◇たかはし ひろゆき

徳島県出身。1979 年3月関西学院大学法学部卒業後、株式会社日本交通公社(現・JTB)入社。JTB 中国四国常務取締役広島支店長、JTB 執行役員、JTB 西日本代表取締役社長を経て14年6月から現職。58歳。