2015年

6月

30日

ワシントンDC 2015年6月30日 特大号

 ◇歴史的な大混戦で始まる共和党の大統領選指名レース


今村 卓

(丸紅米国会社ワシントン事務所長)


 2016年の米大統領選に向けた共和党の指名争いが、歴史的な大混戦で幕を開けそうだ。6月15日にジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が出馬表明し、指名争いに正式に名乗りを上げた候補者は11人となった。ほかに出馬が確実視される有力候補を合わせれば総勢16人、候補者数は史上最多だ。

 これだけ多くの候補者が出そろった理由は三つある。一つは、16年大統領選で共和党に勝算の自信があること。第二次世界大戦後、民主党の大統領選3連勝はない。しかも最近のオバマ大統領の支持率は45%前後にとどまる。民主党の候補指名獲得が確実なヒラリー・クリントン前国務長官も、大統領選本選を想定した支持率が5割を割る。これなら勝てると共和党の候補者は思っているのだ。

 第二の理由は、ブッシュ氏の過去半年間のもたつきだ。

 資金力を誇り、名門ブッシュ家というブランドに恵まれたブッシュ氏には、共和党穏健派から強い待望論がある。昨年12月に出馬検討を表明した直後、支持率は2割を超え、指名争いで先行しかけた。もし、この勢いが続いていれば、他の有力候補の多くは勝算なしと見切って、出馬を断念しただろう。

 だがブッシュ氏は、保守派に敬遠され、選挙参謀と側近の意見対立もあり支持が伸び悩んだ。ブッシュ氏の脆ぜいじゃく弱さは共和党内で意外に映り、保守派の若手から1月にスコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事、4月にマルコ・ルビオ上院議員が出馬に踏み切った。この2人は知名度と資金力でブッシュ氏に圧倒的に劣っていたが、今やブッシュ氏と並ぶ支持率10%強で、指名レースの先頭集団だ。

 第三の理由は、指名獲得以外の目的で出馬する候補者が増えて、指名争いが変質していること。16人の候補者のうち本当の有力候補は、ブッシュ氏ら先頭集団の3人と、それに次ぐ支持率5?9%の5人の第2集団までだ。それ以下の候補は指名の可能性が皆無に近く、副大統領候補狙い、知名度向上、政治的主張のためなどの目的で出馬していると見られる。


 ◇大統領選3連敗も


 共和党とその有力支援者は、指名争いの大混戦に懸念を強めているだろう。

 先頭集団3人のうち、早期に1人が抜け出して勝敗が決まる可能性は低い。ブッシュ氏は弱さを見せたが、ウォーカー氏もルビオ氏も党内の知名度はまだまだ低いからだ。

 むしろ、予備選と党員集会が始まる来年1月以降は、州ごとに勝者が違って、獲得選挙人数で僅差が続き、候補者同士の非難合戦が激化し、来春になっても勝者が確定しない可能性の方が高い。それどころか、来年7月に開催時期が早められた党大会で候補者がようやく決まるという、最悪のシナリオも現時点では否定できない。

 共和党にとっては、民主党の事実上の候補であるクリントン氏の好感度が最近、低下していることが救いだ。しかし16年大統領選では、共和党の支持者が少ないヒスパニック系や、1980年代から90年代後半に生まれたミレニアル世代の有権者が増える。世論も共和党内の大勢の意見とは逆に、同性婚の容認や移民制度改革を支持する傾向にある。

 このままでは、共和党とその支持者への逆風が強まるため、早期の対策が求められる。指名争いで、先行する候補がなかなか出てこなければ、クリントン氏の知名度と資金力への対抗が難しくなることもあり、戦後初の「大統領選3連敗」が現実味を帯びかねない。