2015年

6月

30日

経営者:編集長インタビュー 細野昭雄 アイ・オー・データ機器社長 2015年6月30日号

 ◇1人3テラバイト時代が来る


 アイ・オー・データ機器は、デジタル機器の周辺機器を提供するファブレス(自社工場を持たない)メーカーだ。パソコンやテレビ録画用の外付けハードディスクや、パソコン用の液晶ディスプレーなどが同社の屋台骨を支える。

 4月、大きな経営判断をした。ハードディスクドライブ製造で世界大手の米ウエスタン・デジタル(WD)と、外付けハードディスク製品に関する販売代理店提携を結んだ。競合のエレコム(東証1部)やメルコホールディングス(東証1部)傘下のバッファローなどに対抗する考えだ。

── WDとの提携の狙いは何でしょうか。

細野 WDと当社は、クラウド(インターネット上)でなく、家にデータを安全に置く「ホームサーバー」の市場が今後も伸びるとみています。ここでWDとがっちり手を組みます。WDは、1人当たりに必要なデータ量は、2011年には約500ギガバイトだったのが、16年には6倍以上の3・3テラバイトになると見込んでいます。

 WDは世界市場で、「My Cloud(マイクラウド)」というブランド名でこの事業を進めており、トップシェアを持っています。ただし、日本ではこのブランド名を使えないので、一部カスタマイズをしながら当社と日本市場向けに合うように準備しています。100億円単位のビジネスになると期待しています。

── 競合のエレコムが14年7月にWDの競合である米シーゲイト・テクノロジーと日本国内における代理店契約を締結しています。

細野 ハードディスクドライブの世界市場は、WD、シーゲイト、東芝の3社が占めています。この3社は、最終製品である外付けハードディスク市場でも3強です。ただし、日本市場は、当社とエレコム、バッファローが市場を押さえています。

 当社は10年にわたってWD製のハードディスクを内蔵した製品も作ってきました。今回、日本市場で当社とWDが組むことで、ここ10年、15年続けてきた当社のビジネスモデルの大転換だと思っています。

 アイ・オー・データの足元の業績は軟調だ。15年6月期の予想は、売上高が前年比10・2%減の415億円、営業利益が前年比46・1%減の12億円とさえない。

── 業績が芳しくない理由は?

細野 前の期はウィンドウズXPのサポート終了に合わせた買い替え、消費税増税の駆け込み買いという二つの特需が重なりました。言い訳にはなりますが、これを超えるのは至難の業です。特需の要因を除くと、大きく伸びてもいませんが、落ちてもいないという認識です。

── いま伸びている製品は何でしょうか。

細野 やはり2年ほど前まではなかったスマートフォン(スマホ)関連の機器です。たとえば、昨年4月に発表した「CDレコ」(価格は約7000円~)。CDの楽曲を読み取れる小型機器で、読み取った音楽を直接スマホに送ることができます。

 ほかには、ペットや子ども、お年寄りの見守りなどに使うために家に置く小型カメラ(約8600円~)もヒット商品です。スマホからいつでも家の状況が確認できるのがウケています。


 ◇TV録画機はガラパゴス


── テレビにつないで番組を録画する外付けハードディスクが好調です。

細野 売上高全体の3割を占めるストレージ事業のなかで、半分以上を占めています。日本では、テレビに録画用のハードディスクを付けるのが一般的ですが、実は世界で日本だけです。海外では民放各社や国営テレビがインターネットで過去の番組を見られるようにしています。このため、録画機は必要ありません。

 また、国内で流通するテレビ用の録画機には、「シーキューボルト(SeeQVault)」という独自規格のコンテンツ保護技術があります。こうしたこともあり、テレビの録画機は、パソコン用に使う同程度のデータ量のハードディスクに比べて高くなっています。パソコン用のハードディスクは1万円前後でも、テレビ用のハードディスクでは6万~7万円以上かかります。

 つまり、テレビ向けの独自規格を作らずに、パソコン用のものをほぼ転用できれば、テレビの録画機の価格はもっと下がります。日本のテレビ用の録画機は、まさしくガラパゴス市場なのです。

── 法律が変われば、大きく変わってしまうリスクもあるのでは。

細野 ガラパゴス市場に安住するつもりはありませんが、やめることもありません。法律が変わり市場が変われば、グローバルで売れているモデルを売ればいいわけです。

 一方で、将来的に高画質の4Kテレビが普及した場合には、また外付けハードディスクが普及するかもしれません。WDもこれには興味を持っています。実際、4Kコンテンツに関しては、ハリウッド業界からも著作権がしっかり守られるように厳しい要求が出ています。4K時代には、日本国内で「シーキューボルト」が著作権保護に役立ったように、コンテンツが簡単にインターネットに漏れない安全な環境を作らなければいけません。つまり、日本のノウハウが生きてくる可能性があります。


(Interviewer 金山隆一・本誌編集長、構成=谷口 健・編集部)


 ◇横 顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 31歳で創業しました。北陸の主要産業だった繊維企業向けの制御システムを販売するベンチャー企業でした。ほとんど顧客回りで、お客様が求める以上の提案をすることをいつも意識していました。がむしゃらでした。

Q 最近買ったもの

A ドローン(小型無人飛行機)です。1年前に買って、2、3カ月はずっと飛ばしていました。

Q 休日の過ごし方

A 家庭サービスですかね。


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 ■人物略歴

 ◇ほその あきお

1944年、石川県生まれ。62年、石川県立工業高校電気科を卒業。ウノケ電子工業(現・PFU)などを経て、76年に石川県金沢市でアイ・オー・データ機器を設立、代表取締役社長に就任。2004年、ジャスダック上場。71歳。