2015年

7月

07日

ワシントンDC 2015年7月7日号

 ◇高まる原油輸出解禁論効果に疑問符も


須内 康史

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)


 米国産の原油は、1975年のエネルギー政策及び保存法により、原則輸出が禁止されている。しかし最近は、輸出解禁を巡る議論が米国内で続いており、米国議会では原油輸出の解禁を目指して、法案を提出する動きがある。

 米議会上院で5月12日と19日、原油輸出規制を原則解除する二つの法案が提出された。中心となったのは、上院のエネルギー天然資源委員会の委員長を務める共和党のマコウスキー上院議員と、石油産出州であるノースダコタ州から選出された民主党のハイトキャンプ上院議員。

いずれの法案も、これまでの規制で求めていた国産原油の輸出に対する連邦政府の許可取得を、制裁対象国向けなどを除き、不要としている。また、5月1日提出の法案(AmericaCrude Oil Export EqualitAct)には、緊急時に大統領に対し1年以内の輸出規制を行う裁量権認める条項も含まれている。

 マコウスキー議員は6月4日に議会で行った演説で、「米国が世界有数の石油産出国となった今、70年代の時代遅れの規制により、米国のエネルギー、経済、安全保障上の多大な便益が失われている」と述べ、原油輸出解禁の必要性を訴えた。

 両法案に対しては、米国経済と国際的な原油供給安定化に貢献するとして、米国石油協会(API)や米国商工会議所等の業界団体が連名で、支持する書簡を送っている。

 原油輸出解禁の主張が高まっている背景には、シェール革命によるシェールオイル(非在来型原油)の増産がある。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が4月に発表した2015年版の米年次エネルギー見通しによると、米国の原油生産量は20年まで増え続け、日量1060万バレルに達する。さらに、昨年10月にEIAが発表したリポートをはじめ複数の報告書が「原油輸出解禁で国際市場への原油供給が増え、国際場の価格引き下げを通じて、米国内のガソリン価格を引き下げる効果がある」との分析結果を提示。これが法案の論拠になっている。


 ◇オバマ政権は慎重な立場


 一方、米国内では依然、輸出解禁による国内ガソリン価格への影響の懸念が根強い。こうした懸念を考慮し、議会でも慎重な立場をとる議員が多い。さらに環境保護団体からは、輸出解禁が原油増産を通じて、環境汚染や二酸化炭素(CO2)の排出増加につながるといった懸念に基づき、反対論が出ている。

 オバマ政権は昨年6月にコンデンセート(超軽質原油)を「石油精製品」と解釈して輸出を許可したが、原油輸出全般の解除には明確な立場を示しておらず、慎重な対応だ。

 6月2日、議会公聴会の証言に立ったモニツ・エネルギー長官も、輸出解禁と国内ガソリン価格の関係に関するEIAの分析を支持しつつ、「現下の低迷する油価の下では、原油輸出が、国際市場の価格引き下げに影響するほどの供給増加をもたらすのは、難しいだろう」と発言。輸出解禁に慎重な発言に終始している。

 原油輸出解禁を巡っては、ガソリン価格への影響など政治的に神経質な問題をはらむ。このため次期大統領選の動きが本格化する16年になれば、政治的な議論は困難になる見通し。つまり今年の夏から秋にかけてが焦点となる。現状は、議会でも石油産出州から選出された議員の支持を受けるにとどまり、法案成立の可能性は低いと見る向きが多い。だが、法案に盛り込まれた大統領に一時的な輸出禁止の裁量を与える条項が、法案への支持を得やすくする可能性もあり、今後、上院エネルギー天然資源委員会を中心とした議論の動向が注目される。