2015年

7月

07日

経営者:編集長インタビュー 西永裕司 オエノンホールディングス社長 2015年7月7日号

 

◇アルコールのスペシャリスト目指す


 国内6位の総合酒類メーカー。焼酎から日本酒、ワインなど幅広く製品を展開。前身の合同酒精時代からM&A(企業の合併と買収)で規模を拡大。2014年12月期の売上高は841億円。


── 日本初のバーと言われる「神谷バー」が源流と聞いています。

西永 1880年に創業者の神谷伝兵衛が東京・浅草に「みかはや銘酒店」(後の神谷バー)を開いたのが始まりです。1900年には日本酒精製造を設立、北海道旭川市の工場民間初のアルコール製造を開始しました。03年には茨城県牛久市のシャトーでワイン生産、24年には北海道の焼酎会社3社と合併して合同酒精となり焼酎生産を日本で初めて手掛けました。その後、北海道を起点に販売地域を拡大してきました。

── 主力商品は何ですか。

西永 焼酎です。特にシソ焼酎の「鍛高譚」が稼ぎ頭で、これは1990年代に北海道で盛んになった一村一品運動から生まれました。一般的に焼酎は穀物を発酵させて作りますが、当社には穀物以外の作物で焼酎を作る技術があります。そこで、北海道白しらぬか糠町の鍛高地区産のシソを使った焼酎を作り、北海道限定で販売したところ、お土産に買った観光客の口コミから評判が高まり、販売地域を広げました。今では非常に多くの居酒屋が定番メニューとして置いてくれており、スーパーでの取扱量も増えています。


── チューハイも好調ですね。西永 製品の9割が流通大手などのプライベートブランド(PB)です。現在はイオン、ファミリーマートなどに供給しています。PB以外では辛口の「直球勝負」や、素材にこだわった「NIPPON PREMIUM」が売れています。価値観の多様化が進み、消費者は、店頭に興味を引く商品があると高価格でも手に取ってくれます。


── 足元の業績はどうですか。

西永 円安による原価コストの急上昇と、運送費の高止まりによる販管費の増加が負担となり、2015年1〜3月期は1億4200万円の純損失と低迷しています。特に焼酎の原料となる粗留アルコールの調達費が上がっています。

 粗留アルコールはブラジル産サトウキビを原料とする不純物の多いアルコールで、これを輸入して精製しています。今、同じくサトウキビを原料とするバイオエタノール価格が原油安で下落しており、サトウキビ供給価格が下がっているのは追い風です。これで円安が修正されれば、業績が回復に向かうと見ています。


── アルコール事業は。

西永 国内酒造大手各社に高品質のアルコールを供給しています。北海道苫小牧市と静岡県清水市にあるアルコール精製工場は港に面しており、タンカーから直接パイプラインで粗留アルコールを工場に運ぶことができます。タンクローリー車での輸送コストが省け、生産コストは業界最安です。この生産能力を生かし、BtoBの酒類・工業用アルコール事業に軸足を置いています。 アルコールは化学工業品や食品など、あらゆるものに使われます。アルコールのスペシャリストとして存在感を高めたいです。


── ブランド戦略はどうですか。

西永 自ら焼酎メーカーと位置付けているので、焼酎に注力しています。鍛高譚や麦焼酎「博多の華」など、知名度が高く、競争力がある「独自資源」と呼んでいる商品群から、さらに派生する商品を増やしています。博多の華ブランドの芋焼酎などは、その一つです。


 ◇高収益の酵素医薬品


── 酒類以外の分野については。

西永 酵素医薬品事業が伸びています。主力商品のラクターゼという乳糖分解酵素は、世界シェア2位です。牛乳やヨーグルトなどの乳製品を食べるとお腹がゆるくなる乳糖不耐症の人でも、ラクターゼ入りの乳製品なら安心して食べることができます。ラクターゼを入れると砂糖なしでも甘さが引き立つので、カロリーオフの乳製品にも入っています。売り上げの9割は欧米です。 ラクターゼのビジネスが拡大したのはここ5年ほどです。現在の売上高は40億円と事業全体の1割に満たないですが、その分、伸び代の大きい分野です。ラクターゼ市場は、当社とオランダのDSM社が二分しており、2社で世界シェア100%。収益率が非常に高く、昨年は約4億円を投じ、製造する八戸工場の設備を増強しました。


── M&A戦略は。

西永 いい焼酎ブランドを持ち、当社の販売網を生かした相乗効果が描ける企業がターゲットです。M&Aの際のポイントは棚卸資産の評価です。酒造会社では、出荷前のお酒をタンクの中に入れていますが、この先5年間、タンクの中身を販売できないと判断すれば、その会社の価値は低く見積もらざるを得ません。価値を見極める“目利き”の力が重要で、これを保つため、11工場で総勢50〜60人ほどいる技術者に対して、年に数回テストを課しています。


── 今後の目標は。

西永 収益性の高い酵素医薬品事業で利益を出し、酒類事業で規模を稼ぐ戦略で、5年後をめどに売上高1000億円、経常利益50億円を目指します。ただ、今の事業の延長線上では難しく、次のM&Aを考える必要があります。また、経営指標としてROE(株主資本利益率)を現在の3〜5%から7〜8%まで上げたいです。 

(構成=大堀達也・編集部)


 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 元々、経理畑でしたが、30代半ばで初めて支店長として営業を任されました。酒量販店の個性的な顧客と接する中で、対人スキルが高まりました。

Q 最近買ったもの

A iPhone6プラスです。大型が気に入っています。

Q 休日の過ごし方

A パチンコによく行きます。勝つ方法を探求するのが楽しいです。


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 ■人物略歴

 ◇にしなが ゆうじ

1983年北海道小樽潮陵高校卒業。

88年小樽商科大学商学部卒業後、合同酒精(現オエノンHD)入社。2010年オエノンHD取締役、15年3月社長就任。50歳。