2015年

7月

07日

WORLD・WATCH:英国 2015年7月7日号

 ◇HSBCが戦略転換 アジアに本社移転か


小西 丹

(エイジェム・キャピタル・マネージメント・ダイレクター)


 欧州最大の銀行である英HSBCが6月9日、国内の従業員8000人を含む、全世界で約5万人の削減計画を明らかにした。今年4月の株主総会では、年内に本社をロンドンからアジアに移すかどうかの結論を出すとまで発表している。

 同行の前身は、1865年に香港で設立された香港上海銀行。1992年に英ミッドランド銀行を買収したのを機に現在の行名に変更し、翌93年には本社をロンドンへ移転した。英国にすっかり根付いたHSBCブランドだが、最近は、支店の統廃合や人員削減、窓口でベテランの代わりに若手を配置するといったコスト削減策を進めたため、サービスの質の低下が顕著だ。
 先進国で低金利のために利ざや収入が落ち込む一方、英国では、2008年の金融危機後、当局による厳しい規制を守るためのコストが増大している。高い銀行税が課せられるうえ、商業銀行と投資銀行を19年までに分離しなければならない。銀行業界が逆風に直面している中、HSBCが収益の8割を稼ぐアジアへの回帰を検討するのも無理はない。

 一方、英政府はこうした動きを冷静に受け止めている。本社を移転する可能性は示唆されていたうえ、完全撤退でもないためだ。欧州最大の金融街シティーを抱える英国でも、グローバルな金融機関が事業最適化のために国境を越えることは制止できない時代だという認識もあるのだろう。