2015年

7月

14日

経営者:編集長インタビュー 押味至一 鹿島社長 2015年7月14日号

 ◇現地法人活用し海外売上高アップ


 大手ゼネコン、鹿島の2014年度決算は、連結売上高1兆6936億円、連結営業利益126億円、単体では180億円の営業赤字となった。北アフリカのアルジェリアに約400㌔の高速道路を造る工事で、発注者であるアルジェリア公共事業省からの代金支払いが滞り、損失を引き当てたことが響いた。


── 厳しい決算となりました。

押味 社長交代に向け、14年度決算でいろいろな準備をしてもらい、引き継ぎました。徹底して損失を引き当てたので、外から見たら相当厳しい決算に映るでしょうが、これからに期待されてスタートを切った、と捉えてもらえれば。

 アルジェリアの高速道路工事は(代金支払いを求め、国際仲裁裁判所に発注者を提訴し)調停中のため、粛々と解決していくしかありません。代金を支払ってもらえなくてもいい、というのではなく、後ろの憂いをなくし、全力で調停を戦っていくという覚悟のため、損失を引き当てました。

── かつてアラブ首長国連邦(UAE)のドバイメトロの工事でも損失を出しました。海外の土木案件には今後どう取り組みますか。

押味 国内市場は、いずれ縮小していくので、海外に出て行かないといけません。方法としては、建築工事を中心に請け負っている海外現地法人を活用し、現地のゼネコン、協力会社と一緒に土木工事も受注していきます。地域は主にアジア、アメリカ。アジアは、台湾、シンンガポール、インドネシア、ベトナムなど。

 連結売上高に占める海外工事の比率は20%弱。これを30~40%に増やしたいです。海外土木の売上高は、今はすごく少ない。海外土木のメインはアルジェリアの工事で、多くの人が関わっていました。これが調停に入ったので、撤退ではありませんが引き揚げる。それで帰国したこの人たちに、他の国へ行ってもらいます。海外では、アルジェリアのような大型工事をドンと受注するよりも、現地法人を利用して請け負うようにしていこうと考えています。

── 海外の建築はどうですか。

押味 得意な開発と合わせた事業を増やします。対象国も広げていきたいです。ミャンマー、バングラデシュなど。やっていない国の仕事に挑戦します。

 開発・建設事業では、土地を開発して、そこにマンションなどを建てて販売し、資金を回収します。インドネシアでオフィスビルや商業施設、ホテルなどを建設する「スナヤン・スクウェア・プロジェクト」が一例ですが、もっと小規模でもいいですね。国内でやっていることを、海外でも展開していきたい。3月には、(豪州事業を統括する現地法人を通じて)豪州の準大手ゼネコンを買収しました。海外では、日本のゼネコンがポッと出て行って開発できる案件は少ない。人間関係などを構築できるまでは、現地企業との提携や買収から始める方がいい場合もあります。


 ◇リニアの難工事に挑戦


── 国内工事は、東京五輪に向けた再開発、リニア中央新幹線、東日本大震災の復旧・復興、災害対策、維持補修などで旺盛です。

押味 五輪に向けた東京の再開発は、堰を切ったような状況です。今年後半から来年にかけて、かなり忙しくなります。地方ではホテルの建設需要が堅調です。過当競争は非常に少ない。とは言え、人手不足もあって際限なく仕事を増やすわけにはいかないので、施工能力を最大限にしつつ、確実に仕事ができる状態にしないといけません。大型工事では16~17年度にかけての施工におけるコストアップをある程度、考慮して見積もりを出しています。

── 受注量を抑制して、利益率を上げるための方法はありますか。

押味 いろいろあります。仕事に取り組む前に造り方を検討して答えを出す「フロントローディング」という方法も効果的。なるべく人手をかけずに済む構造などを検討します。海外の安い資材を使うのは、円安なので難しいですね。

── 原子力発電所、廃炉関連の事業はどうですか。

押味 福島をなんとかしないといけません。社員も職人さんも全力で取り組んでいます。原発については、ノウハウを蓄積、伝達できるように「原子力部」を残し、人材のローテーションの中で、若い人も原発を経験するようにしています。設計の担当者も原発の設計に携わります。学生の原発に対するモチベーションは高くありませんが……。まずは再稼働への取り組み。廃炉はその後になると思います。

── リニアの工事は今後、本格化します。

押味 トンネルが多く、直線的に穴を掘る技術も要求されます。コストパフォーマンスは厳しいでしょうから、それも含めた技術で、勝負のしがいがある。積極的にいきたい。技術研究所でかなり研究し、準備しています。

── 株主還元など資本政策は。

押味 配当など立ち遅れています。今年度からスタートした「中期経営計画(15~17年度)」は、こうしたことに取り組む期間だと考えています。

20年度を見据え、(17年度に連結経常利益650億円以上といった)目標を確実に達成することが大事。増配もしていきたいです。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=中川美帆・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 建設現場で猛烈に働いていました。翌日の仕事の手配をして午後11時ごろに帰り、土日も休みはほとんどありません。現場は神奈川県、静岡県が多く、単身赴任。40歳で所長になりました。

Q 最近買ったもの

A ゴルフクラブの1番アイアンです。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフのほか、自宅の修繕をしたり植木を切ったり。家族にこき使われています(笑)。

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■人物略歴

 ◇おしみ よしかず


神奈川県出身。1967年横浜市立南高校卒業。74年東京工業大学工学部建築学科卒業、鹿島入社。2005年執行役員横浜支店長、10年専務執行役員建築管理本部長、13年専務執行役員関西支店長。15年6月から現職。66歳。