2015年

7月

21日

東芝の闇:リーマン危機と「3.11」が招いた決算不能と予算必達の呪縛

Bloomberg
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◇2015年7月21日特大号


本誌取材班


「東芝140年の歴史で最大の危機だ。全社員の総力をあげて乗り切り、誠実で信頼される東芝グループを再生したい」

 東芝の田中久雄社長は6月25日の株主総会で、謝罪を繰り返し、再生に向けた意欲を示した。しかし、株主からは問題の拡大と後手に回る対応に厳しい批判が相次いだ。

 ある株主は、「(ライバルの日立製作所に比べて)利益を出せない体質に陥っていることが不正につながったのではないか」といった批判が飛んだ。

 問題発覚後から7月上旬までに株価は20%以上下落し、受け取るはずだった期末配当を無配にされた株主の怒りは収まらない。


 ◇主力事業全般で


 東芝で発覚した不適切な会計処理とは何か。

 ことの発端は、今年2月にさかのぼる。証券取引等監視委員会から一部インフラの工事進行基準案件などの会計処理をめぐり検査を受けたことだった(表1)。

 工事進行基準とは、インフラやソフトウエア開発などの工期の長い案件に適用する会計ルールの一つだ。請負工事について、その進捗(しんちょく)に合わせて収益および原価を認識する手法である。国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準では、進行基準での計上が義務付けられており、正しく運用されれば透明度の高い決算報告書となる。その一方で、意図的であるにせよ、ないにせよ、原価を低く、収益を高く見積もれば利益のかさ上げにつながる危険性がある。

 東芝は、このインフラに関わる会計処理が不適切に行われていたことが判明、4月3日に室町正志会長を委員長とする特別調査委員会を設置し、調査を始めた。

 その後、工事進行基準以外にも調査が必要と判断し、映像事業の経費計上、ディスクリート(半導体製品の部品となる単機能の素子)、システムLSI(大規模集積回路)を主とする半導体事業の在庫の評価、パソコン事業での部品取引等の会計処理について、5月8日に設置を決めた第三者委員会(委員長:上田広一弁護士)による調査を開始した。

 一連の調査の結果、5月に高速道路の自動料金収受システム(ETC)設備や次世代電力計関連などインフラ関連工事9件で、営業利益が計512億円水増しされていたと発表(表2)。6月12日にはインフラ関連以外の案件で新たに12件、計36億円の利益のかさ上げが行われていたことを明らかにした。

 6月25日の株主総会では、半導体やパソコン、テレビの主要3事業について不適切会計の可能性があることを具体的な事例で公表している。

 たとえば、テレビ事業では部品納入業者との取引で、値引き契約を結ぶと同時に、翌期以降の仕入れ価格を引き上げることを約束。仕入れコストを事実上、次の期に先送りして、当期の利益をかさ上げしていた可能性を示した。

 半導体やパソコンでも、コストを正確に決算に反映させない不適切な会計処理が見つかっている。

 つまり、当初公表したインフラ関連の工事進行基準だけでなく、東芝の主力事業全般で、会計処理が適切に実施されていなかった可能性が高いのだ。

 連結売上高6兆5000億円(14年3月期)、連結営業利益2900億円(同)という東芝の収益規模から見れば、不適切会計が屋台骨を揺るがすものとは言い難い。

 より本質的な問題は、なぜ長年にわたり東芝のような名門企業で、適切な会計処理が行われてこなかったのか、だ。


 ◇急速な財務悪化の焦り


 その背景として、(1)リーマン・ショック直後の09年3月期の巨額赤字により急速に悪化した財務状況と、(2)10年3月期以降の営業損失を回避しなければ、借入金などの返済が求められ、破綻を招きかねない危機的な状況に置かれていたことが推察される。

 要するに、......

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