2015年

7月

28日

ワシントンDC 2015年7月28日号

◇TPA、医療保険、同性婚

◇相次ぐオバマ政権の勝利


どうのわき しん

堂ノ脇 伸

(米州住友商事会社ワシントン事務所長)


 米国独立記念日(7月4日)を前にした6月最終週は、オバマ政権にとって最良の日々となったようだ。懸案の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の推進に不可欠とされた大統領貿易促進権限法案、いわゆるTPA法案が、紆う余よ曲折を経ながらも24日に連邦議会上院で可決され、発効が確実となった。翌25日には、オバマ政権の目玉政策で導入済みの医療保険制度改革法(いわゆるオバマケア)の施行に当たり、違法性を問われた施策について、「法律違反に当たらない」という政権擁護の判決を連邦最高裁が下した。さらに翌26日には、同じく連邦最高裁が、大統領がかねてから容認を訴えてきた同性婚を全米50州で認める判決を下している。

 日替わりで勝利を収め続けたオバマ大統領の姿は、レイムダック(死に体)とは程遠く、引き続き、残り1年半の任期でのレガシー(実績)づくりにまい進しているかのようだ。

◇テロ対策など課題も山積


 TPA法案は、5月に可決された上院案が、下院で労働組合を支持基盤とする民主党議員の抵抗にあい否決された。これに伴いTPP交渉の先行きにも暗雲が垂れこめた。だが、自由貿易を標ひょうぼう榜し、議会運営で主導権を握る上下両院の共和党指導部とオバマ大統領自身による民主党議員への積極的な働きかけにより、労働者救済法と分離する形で法案は再度、可決された。結果、TPPは最終合意に向けて交渉の推進が期待され、歴史的な多国間の貿易協定としての発効が視野に入りつつある。

 医療保険制度改革法については、歴代民主党政権がなし得なかった国民皆保険制度の導入をオバマ政権が実現させていた。だが、その導入段階において、連邦政府の補助金の受給対象が「州政府創設のウェブサイトを通じて保険に加入した人」と規定されていたことを逆手に取られ、違法性を問われた。共和党系を中心とする34の州でサイトが開設されなかったが故に、「(州政府でなく)連邦政府の代替サイトでの保険加入を余儀なくされた640万人が補助金を受け取っているのは違法ではないか」との訴えを受けたのだ。

 これに対し連邦最高裁は判事9人のうち、リベラル系の4人に加え、ブッシュ前大統領が任命した保守派のロバーツ長官と中道派のケネディ判事が補助金支給の継続を認める判断を下した。このため何らかの形で制度に打撃を与えたいともくろんでいた共和党の攻め口が封じられた。

 同性婚の是非は、次期大統領選でも注目されるテーマの一つとされていた問題だ。共和党内のキリスト教右派など保守層を中心に根強い反対があったが、リベラルを標榜するオバマ大統領は、かねてより同性婚を容認する発言をしていた。また、民主党大統領候補として立候補をしているヒラリー・クリントン氏も同性婚を支持する立場にある。

 今回の連邦最高裁判決では、リベラル系の判事4人に、前述のケネディ判事が加わり、5対4で同性婚が合衆国憲法の下の権利であると判断を下した。同性婚を禁じてきたオハイオ、ミシガン、テネシー、ケンタッキーの各州では州法を改正することになる。長年の論争に、オバマ大統領が望む形で決着がついたうえ、来年の大統領選挙に向け民主党サイドにも追い風が吹く形になった。

 このように、TPPの推進、改正医療保険制度の導入と定着、同性婚の合憲判断と、オバマ政権の実績が相次いでいる。一方で、根強い人種差別問題や長引くテロとの戦いなど、いまだ解決には程遠い問題も多く残る。国民の関心が次期大統領選挙に移りつつある中でも、現政権に休む暇は与えられないようだ。