2015年

7月

28日

経営者:編集長インタビュー 鳥居正男 エスエス製薬会長 2015年7月28日号

 ◇250年の歴史で築いた顧客主義


 創業は1765年にさかのぼる。岐阜県で始まった漢薬本舗「美濃屋薬房」が前身だ。2001年からベーリンガーインゲルハイムグループに参画。10年に同グループの100%子会社となった。

 エスエス製薬では、元来医療用医薬品として使われていた成分の安全性などで問題がないと判断され、店頭販売に転換されたスイッチOTC(一般用医薬品)の開発・導入を積極的に進めている。

── 親会社のベーリンガーインゲルハイムはどんな会社ですか。鳥居 世界でトップ15に入る研究開発主導型の外資系製薬会社です。ドイツのインゲルハイムに本社があり、設立130年の歴史があります。14年度の売り上げは133億ユーロ(約1兆8670億円)。株式を公開しない企業形態のため、長期的な視点に立った経営ができます。世界146カ国で医療用、一般用、動物用の医薬品を販売し、売り上げの約20%を研究開発に投じています。

 日本では、ベーリンガーインゲルハイムジャパンが持ち株会社となり、医療用医薬品の日本ベーリンガーインゲルハイム、OTC医薬品のエスエス製薬、動物用医薬品のベーリンガーインゲルハイムベトメディカジャパン、医薬品製造のベーリンガーインゲルハイム製薬の4社を統括しています。


── 外資のグループに参画する際に難しかったことは。

鳥居 エスエス製薬が1982年に発売した薬用歯磨き剤「ラカルト・ニュー5」の販売提携を始まりとして、よい関係を築いてきました。それから、企業理念が似通っていたため非常にスムーズに進みました。

 エスエス製薬の強みはユニークな製品。また、小売薬局への直販方式を確立してきたため、薬を購入するお客様と接点があり、250年の歴史で徹底した顧客主義の企業文化を築き上げてきました。社内外を問わず、人と人との信頼関係を大切にしています。

 80年に発表した経営理念は「製薬への信頼。価格への信頼。サービスへの信頼。人と人との信頼」です。一方、べーリンガーインゲルハイムには「信頼・共感・配慮・情熱」という四つのバリューがあり、基本理念がエスエス製薬と重なります。

 うまくいった理由として、持ち株会社のべーリンガーインゲルハイムジャパンに財務、人事、IT関係、広報などの管理部門のみを移管させる体制を採ったこと、エスエス製薬のブランド、既存商品を残し、さらに伸ばしていこうという方針を固めたことも大きいです。


── 主要製品は。

鳥居 解熱鎮痛薬「イブ」は、主成分のイブプロフェンの日本初のスイッチOTC薬として発売し、店頭販売ベースで売り上げ100億円を超す大ヒット商品になりました。

 そのほか、シミ・そばかす治療薬「ハイチオール」、栄養ドリンク剤「エスカップ」、アレルギー専用鼻炎薬「アレジオン10」、足のむくみ改善薬「アンチスタックス」、かぜ薬「エスタック」、睡眠改善薬「ドリエル」、便秘薬「スルーラック」、胃腸薬「ガ

ストール」などが主力商品です。このうち、アレジオン10、アンチスタックス、ガストールは、ベーリンガーインゲルハイムが持っている医療用医薬品成分をOTC薬にスイッチした製品です。


── エスエス製薬の業績は。

鳥居 14年度の売り上げは、出荷店頭販売べースで前年比2・8%増の355億円となり、2年連続で増収となりました。主要製品であるイブや、エスカップシリーズ、ハイチオールCなどが前年を上回る成長を遂げ、業績を牽引しました。


 ◇OTCの受け皿に


── 高齢化社会での役割をどう考えていますか。

鳥居 政府が推進する成長戦略「日本再興戦略」の中で、セルフメディケーション(自己治療)推進が掲げられています。高齢化が進む中で、健康寿命の延伸に向けたセルフメディケーションが重要になっていきます。これを支える製薬会社として研究を重ね、よい製品を出して、貢献していこうと考えています。


── スイッチOTC薬で広げたい分野は。

鳥居 日本の医薬品・治療薬のメーカーの中には、特許が切れてOTC薬に転用したい時に販路がなく、販売のチャンネルを持っていない会社もあります。エスエス製薬は、OTCの分野で実績もあり、知名度が高いのでこうしたメーカーのOTCの受け皿の役割を果たしたいと考えています。私たちの商品のグループに入ってもよいですし、入らなくても構いません。双方にとってチャンスになると思っています。

 また、スイッチOTC薬の対象を生活習慣病や消化器系の病気などにも広げたいと考えています。


── 今後の方針は。

鳥居 好調に推移しているイブやエスカップシリーズなど主要製品に加え、新製品に注力していきます。日本での存在感を高めたいと考えています。

 また、ベーリンガーインゲルハイムグループに参画したことで、グローバルなパイプ、マーケット戦略の手法などを持っています。お互いの良いところを合わせていきたいと思います。

 創業以来、受け継がれてきた顧客志向を心に刻み、お客様との信頼関係をさらに構築していきます。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=丸山仁見・編集部)



 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 32歳の時に約50人の営業開発メンバーをまとめる試薬部長に任命されました。35歳で米国に赴任し、海外の職場の競争の厳しさを知るとともに、日本人の勤勉さなどを再認識しました。

Q 最近買ったもの

A 腹筋をするための機械です。就寝前に腹筋をしています。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフを月に1~2回するほか、ジムに行き体を動かします。日曜日は翌週の仕事の準備に充てています。孫が遊びに来ると最優先になります。


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 ■人物略歴

 ◇とりい まさお

神奈川県出身。1966年横浜翠嵐高校卒業。71年米ロヨラ大学卒業、日本ロシュ(現・中外製薬)入社。製薬会社の日本法人社長などを経て、2011年ベーリンガーインゲルハイムジャパン社長、エスエス製薬含む子会社の会長を兼務。68歳。