2015年

8月

04日

台湾:総統選は女性対決 2015年8月4日特大号

蔡英文氏
蔡英文氏

◇民進党・蔡英文氏が優位


志村宏忠

(台湾在住ジャーナリスト)


 2016年1月16日に投開票予定の台湾総統選挙で、2大政党の候補者がこのほど正式に決まった。与党・国民党は洪秀柱氏(67)、野党・民進党は蔡英文氏(58)である。洪氏は立法院副院長(国会副議長)、蔡氏は党主席を務めている。今回は中華民国=台湾の歴史上初めて、女性同士の対決となる。

 8月から本格的な選挙戦が始まるが、蔡氏が当選して08年以来、2度目の政権交代が起きる可能性が極めて高い。

洪秀柱氏
洪秀柱氏

 というのも、洪氏は立法委員(国会議員)5期目だが、台湾全土における知名度は低く、政界における存在感も薄いからだ。これまでに台湾の主要メディアが実施した世論調査では、一貫して蔡氏がリードしている。民進党側からは「史上最弱の総統候補者」と揶揄(やゆ)される始末であるとともに、国民党内からも「大勢は既に決した」と諦観した声が上がっている。

 一方、前回12年の総統選挙に続く2度目の挑戦となる蔡氏は、満を持しての出馬となる。5月下旬から2週間、台湾にとって最も重要な国である米国を訪問した。滞在中は共和党の重鎮のマケイン上院議員らとの会談に加え国務省を公式訪問したほか、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙への寄稿も掲載された。さらに、6月には雑誌『タイム』の表紙を飾るなど、米国からすでに次期総統としてのお墨付きを得たとも言えるほどの厚遇に接してきた。

 2人の主要政策を見てみる。まず中国との関係については、洪氏が、馬英九総統がなし得ずに任期を終えそうな和平協定の締結を目指すとする一方、蔡氏は中国との取り決めに関する立法院の監視機能を高めた上での現状維持を掲げている。また、エネルギー関連では、洪氏が、現在6基ある原子力発電所の稼働期間延長と同時に自然エネルギーによる発電量を増やすと主張しているのに対し、蔡氏は25年までの脱原発を訴えている。


◇焦点は議会選挙に


 こうしたなか、台湾における関心は総統選挙と同日に行われる立法委員(定数113人)選挙の帰趨(きすう)へと移っている。すなわち、民進党が立法院でも過半数を占め、安定した政局運営を図れるのかである。

 民進党は今年9月で結党から29周年となるが、台湾本島の東部や離島においては伝統的に支持基盤が弱い。00年から8年間の陳水扁政権時代に、民進党が台湾政治に混迷を招いて支持者を失望させ、対米関係を悪化させたのも、立法院における少数与党から脱することができなかったのが主因である。

 そこで、蔡氏は1月の投開票日までに民進党の小選挙区の各公認候補の地元に少なくとも3度入って支援を求める考えだ。

 初めての総統直接選挙が行われたのは1996年3月だった。それから来年で20年。初の女性総統が就任する来年5月以降、台湾政界に新しい風景が生まれることになる。