2015年

8月

04日

経営者:編集長インタビュー 新浪剛史 サントリーホールディングス社長 2015年8月4日特大号

 ◇清涼飲料とウイスキーへの集中投資進める


 サントリーホールディングス(HD)は、傘下に清涼飲料・食品事業を担う東証1部上場のサントリー食品インターナショナル、スピリッツ(蒸留酒)事業のビームサントリー(米ビームを2014年に買収して誕生)、ビール事業のサントリービール、ワイン事業のサントリーワインインターナショナルなどを抱える。グループの連結売上高は14年12月期の2・5兆円から20年に4兆円を目指す。

── 4兆円をどう達成しますか。

新浪 重視しているのが清涼飲料とビームサントリーの成長です。大型買収をしなくてもこの二つの成長で4兆円を達成しないといけない。

 これからやるべきは、スピリッツブランドの買収と売却です。ビームサントリーは、米ビーム社とサントリーが一緒になったのでスピリッツに重複があります。成長に必要なブランドは買い、必要がないものは売却し、資金を借金返済だけでなく、成長につながる投資に回します。

── キャッシュフローを充実させるわけですね。

新浪 キャッシュフローに注目しています。最優先はビーム買収で増えた多額の借入金(14年末で1・7兆円)の返済。攻めの経営をするために必要な投資はしますが、資金は中心的な2事業に集中させます。

── ブランドの入れ替えはどの分野で?

新浪 特に伸びているブラウンスピリッツ(ウイスキーなど茶色の蒸留酒)でやりたい。当社は世界の大手と比べても、ものすごいブランドの種類、数を持っています。攻めたい国に、どのブランドを投入するかを戦略的に考えられます。

 既に持っているブランドを活用しながら、必要に応じてホワイトスピリッツ(無色の蒸留酒)を売却したり、地元ブランドを買収したりするなど、地域ごと、国ごとに戦略を考えていこうと思っています。

── ビール事業はどうですか?

新浪 3月に発売した新商品「マスターズドリーム」は、プレミアム中のプレミアムビールです。ただ、製造コストがかかるので大量生産できません。そこで9月にスタンダードビールの「ザ・モルツ」を出します。

── 主力のプレミアムモルツとの食い合いはないですか。

新浪 マスターズドリームは最初に苦みを感じ、最後にうまみが残る味を特徴としています。お客さんは新しい嗜好を求めていて、一定の市場があることがわかりました。

 ザ・モルツはプレモルとはテイストが違うので心配していません。味わいはマスターズドリームに近いが、生産過程で工夫して値段は安くできるようになりました。

── ビールはシェア3位から抜け出せますか。

新浪 順位を上げたいですね。ビールは市場シェアがそのまま生産性につながるので、規模の経済が必要です。EBITDA(税引き前・利払い前・償却前利益)を増やすためにも、シェアを拡大しないといけません。新しい嗜好の提案をすることに勝算を見いだしており、社員のモチベーションも高まっていますよ。


 ◇研究開発費を1%に高める


── 京都府にR&D(研究開発)の拠点を作りました。どれぐらい投資しますか。

新浪 当社の研究開発投資は現在、連結売上高の1%未満です。今後は1%に引き上げることも考えないといけないと僕は思っています。

 例えば健康長寿関連は有望です。世界にも応用できる分野なので開発に力を入れ、まずは日本、場合によって予防医療が進んでいる米国などに展開したい。必要なら技術を買うことも考えます。

── 清涼飲料は。

新浪 サントリー食品インターナショナルは上場企業なので、経営戦略は鳥井信宏社長に任せています。できるだけ早く売上高を2兆円に拡大してほしいですね。既に大きな買収をいくつかしたので、今後は収益を上げる段階に入ります。売り上げだけでなく収益、すなわちキャッシュを生み出す会社になってほしいと思います。

── 具体的な拡大策は?

新浪 国内でもトクホ(特定保健用食品)の特茶や黒烏龍茶などは値下げしなくても売れます。フランス生まれの炭酸飲料「オランジーナ」から、新フレーバー「レモンジーナ」を3月末に日本で発売したように、日本独特の製法で発売したもので海外で受け入れられそうなものも出ています。地域ではアジアへの展開が重要です。

 また、JT(日本たばこ産業)から自動販売機事業を買い、新たなビジネスモデルを作ろうとしています。これまで屋内の自販機はあまり開拓できていませんでしたが、JTの屋内自販機を引き継げた。商品はたくさんあるので、今後は設置場所によって商品を柔軟に替えていくことが可能です。

── ローソンからサントリーに移って1年。どうですか。

新浪 意見がどんどん出るし、活力がありますよ。僕はローソンのほか、三菱商事で給食会社やケンタッキーの経営にも関わりましたが、新しいことをする時は全部僕が決めていました。

 でも今は基本的に任せています。知らないことが起きていると心配にもなりますが、自分自身も成長しないといけない。グローバルでやっていくには相当、社員に任せないといけないと思っています。

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=秋本裕子・編集部)


 ◇横 顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 三菱商事で給食会社を作って経営していました。

その頃から数えて社長歴20年。経営者は意思決定を30代後半までにしていないと駄目ですね。そういう機会を与えるべきだと思います。

Q 最近買ったもの

A 買い物に行く時間がなく、何も買っていません。

Q 休日の過ごし方

A 半分は海外・国内出張の移動日で、残りはゴルフやジム、企業経営者との会食が多いです。経済財政諮問会議などの準備や勉強は週末にします。最近は好きな映画も見ていません。


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 ■人物略歴 

 ◇にいなみ たけし

1959年神奈川県横浜市出身。慶応大経済学部卒、米ハーバード大学経営大学院修了。81年三菱商事入社。2002年ローソン社長を経て、14年5月同社会長。同年8月サントリーホールディングス(HD)に移り、同年10月から現職。56歳。