2015年

8月

11日

経営者:編集長インタビュー 中山讓治 第一三共社長 2015年8月11・18日号

第一三共 中山
Photo:根岸 基弘

 ◇特許切れ乗り越え売上高1兆円目指す


 武田薬品工業、アステラス製薬に次ぐ国内製薬3位の第一三共。2015年3月期の業績は、売上高が前期比2・3%増の9194億円、営業利益は同34・1%減の744億円と、増収減益だった。


── 好調な事業は何ですか。

中山 国内の薬価改定によって、売り上げが302億円減少しましたが、そのマイナス分をカバーするくらいの成果がありました。例えば、「ネキシウム」という逆流性食道炎などを治す薬が、11年の発売開始から短期間でシェアトップに達し、15年3月期も好調でした。あとは、認知症の治療剤「メマリー」も、高い評価を受けて伸びています。

 また、「ランマーク」も好調です。これは骨の薬で、がんの転移を防ぐ薬です。この薬は13年6月に新たに骨粗しょう症の薬としての承認も取れ、「プラリア」という名称で堅調に伸びています。半年に1回注射するだけでよいのが強みです。

 骨粗しょう症になり大だいたい腿骨を骨折すれば、寝たきりになり、さらに認知症につながりかねません。高齢化社会のなかで、骨を支えるのは非常に大切です。

── 減益の要因は。

中山 過去に買収したベンチャー企業の減損処理が一つです。皮膚がんの新しい治療剤を開発していますが、別の種類の薬剤が出てきたことを反映して、約350億円売り上げ評価を下げました。また、退職一時金で約140億円を計上しました。ただ、その二つの要因を除くと増益と言えなくもありません。

 また、08年に買収したインド後発医薬品(ジェネリック医薬品)大手ランバクシー・ラボラトリーズを今年4月に売却しました。約3000億円の売却益があり、これを入れると増益ですが、今期は同じことをできないので、分けて表示しました。


 ◇主力製品の特許切れ


── グローバルで扱う医薬品で最も売り上げが高い高血圧症治療剤「オルメサルタン」は、特許切れが迫っています。

中山 国際的に年間約3000億円の売り上げがあるので、独占販売期間が終了すると、ジェネリック医薬品に置き換わっていき、この市場シェアを大きく失うこととなります。特許切れの時期は国によって違いますが、16年末が厳しいスタートになります。

── 3000億円がいきなりなくなるのでしょうか。

中山 現在、米国で1000億円程度、欧州で700億円弱の売り上げがあります。米国では1桁少なくなるとみられ、そのインパクトは大きいです。

── どう対応しますか。

中山 1製品だけで置き換えるのは難しいです。まず期待しているのは「エドキサバン」という抗凝固剤(血液を固まらせないようにする薬)です。日本と米国ではすでに発売し、欧州でも6月に販売承認が取れました。世界に通じる新薬として、売り上げ拡大を目指します。

── 市場規模はどれくらいを見込んでいますか。

中山 ものすごく大きいです。現在血栓のできる人の多くは「ワーファリン」という薬を飲んでいます。副作用として一番大きなものは出血するということです。また、納豆やブロッコリーが食べられないなど、食生活にも制限が出ます。

 一方のエドキサバンは、効き目をみる試験段階で時間をかけ、出血がより少なくて済む飲み方を見つけました。他社も同じような薬を開発していますが、当社は時間をかけた分、製品としては最も優れたものになったと思います。

 ワーファリンの処方量は多く、世界で6000億円市場です。それがすべてエドキサバンや他社の同様の製品に置き換わると、だいたい2兆~3兆円くらいになる計算です。すでに先行した他社がこの市場を約20~30%置き換えています。

── エドキサバン以外はいかがですか。

中山 米国では、注射鉄剤(貧血治療薬の一種)市場でのトップシェアを維持します。子会社のルイトポルドが売っている鉄剤「ヴェノファー」の後継品で、注射で鉄を短時間で補充できる「インジェクタファー」を13年から販売しています。

 また、現在、米国で痛みを緩和する薬を導入しようとしています。米国では「オピロイド」という麻薬が鎮痛薬として使われており、日本よりかなり多く処方されています。ただ、オピロイドを長期に服用すると、悪心(吐き気)や嘔吐が出て飲み続けられない人が出てきます。これを解決するために制吐剤という薬を飲むのですが、それでも多くの人がやめてしまいます。

 そこで、チャールストンという企業が開発した「CL─108」の開発・販売権を14年8月に取得し、16年度の販売を目指しています。これは制吐剤と麻薬の合剤で、溶け方がうまく設計されていて、結果として、悪心や嘔吐が発生せずに痛みの緩和ができる製品です。がん領域などにも注力しています。

── 中期的な経営目標は。

中山 グローバル事業としては、ランバクシーを手放したことで、新薬事業に原点回帰します。17年度に売上高1兆円、営業利益1000億円を確保することを目指します。


(Interviewer:金山 隆一・本誌編集長、構成:谷口 健・編集部)


 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A サントリーに入社したのが28歳。30代は駆け出しでした。営業から財務に行き、自由奔放に大きなことをさせてもらいました。

Q 最近買ったもの

A シルヴィア・ナサーの『大いなる探求(下)人類は経済を制御できるか』です。立ち読みしていたらやめられなくなりました。

Q 休日の過ごし方

A 歩くためのゴルフ、テレビで囲碁観戦、読書です。体調が悪いと良い判断をできないので、休日は完全オフと自分の体調管理を中心に考えています。


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 ■人物略歴

 ◇なかやま じょうじ

大阪府出身。1969年、大阪教育大学附属高校天王寺校舎卒業。74年、大阪大学(基礎工学部)卒業。76年、同大学修士課程修了。79年、米国でMBA取得後、サントリー入社。2000年、同社取締役。03年、第一製薬(現・第一三共)取締役。07年、第一三共執行役員。09年常務、10年副社長を経て、10年6月に社長就任。65歳。