2015年

8月

25日

ワシントンDC 2015年8月25日特大号

 ◇米国社会がリベラル化 選挙戦で社会主義者が躍進


三輪裕範

(伊藤忠インターナショナル会社ワシントン事務所長)


 ロナルド・レーガンが大統領に就任した1981年ごろを境に、米国の社会は急速に保守化していった。もっとも、その頃は米国以外でも、英国にはサッチャー首相、日本でも中曽根康弘首相が登場するなど、世界的に政治社会の保守化が急激に進行した時代だったと言える。

 特に米国では、レーガンの後を継いで大統領になったブッシュ(父)が、88年の大統領選で民主党のデュカキス候補のことを「マサチューセッツ・リベラル」と呼んで攻撃してからというもの、「リベラル」という言葉は「L-word」と呼ばれ、それを口にするのもはばかられるほど社会の保守化が顕著となった。

 このように米国社会の保守化が顕著になったのは、共和党のレーガン、ブッシュ時代以降であるが、その後、大統領がクリントン、ブッシュ(子)、オバマと共和、民主の両党から出ても、こうした保守化傾向に特に大きな変化はなかった。

 実際、米ギャラップ社の世論調査によると、調査を開始した99年から2010年前後までは、自分を保守派だと思う人が35~40%、リベラル派だと思う人が20~25%ほどで安定的に推移していた。

 ところが昨年ごろから、こうした保守派の割合が減少する一方で、リベラル派の割合が顕著に増加してきているのである。今年5月に公表された最新のギャラップ調査では、保守派31%、リベラル派31%となり、調査開始以来、初めて両者が同率となった。

 また、6月に公表された米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』と米NBCテレビの共同調査結果でも、保守派の割合が昨年の37%から今年は33%に減少する一方で、リベラル派の割合は昨年の23%から今年は26%へと増加している。

 こうした最近の米国社会のリベラル化を最も如実に表しているのが、6月26日に米連邦最高裁が下した同性婚を認める判決だ。判決自体は5対4の僅差であったが、この票差が表す以上に、同性婚への一般国民の支持は強い。もちろん、宗教的な理由などから同性婚に強硬に反対する人が、今も一定の勢力を維持していることは確かだ。


 ◇マリフアナ使用を容認


 しかし、特に若者、女性、高学歴者、都市住民などを中心にして、今や同性婚容認に幅広い社会的コンセンサスが形成されつつあることもまた事実である。

 マリフアナ使用の合法化を容認する動きも、最近の米国社会のリベラル化を象徴している。医療用に使う場合を含め、何らかの形でマリフアナ使用を認めている州は、すでに全米50州のうち27州に上る(州によって使用許可の条件は異なるが)。特にコロラド、オレゴン、ワシントン、アラスカの4州では、医療用以外の使用も合法と認められている。

 こうした米国社会のリベラル化は、当然のことながら、政治にも影響を与えることになる。

 来年11月の大統領選挙の民主党候補は、つい最近までヒラリー・クリントンで決まりと思われていた。だが最近は、社会主義者を自称するバーニー・サンダース上院議員への支持が急速に高まっている。一時はヒラリー候補との支持率の差が50%近くもあったが、直近の調査では、それが20%以下にまで縮まるなど、ヒラリー候補としても、うかうかしていられない状況になりつつある。

 以前の米国なら、社会主義者を自称する人間が大統領候補として名乗りを上げることさえ困難だったことを考えると、最近の米国社会の様相には、まさに隔世の感がある。