2015年

8月

25日

原発:骨抜きにされる原子力賠償制度 2015年8月25日特大号

 ◇法律改定で加害者保護強まる恐れ


本間 照光

(青山学院大学教授)


 電力業界が試みている原賠法の改定議論は、原発事故における電力会社の免責と原発再稼働を容易にする危うさがある。

 福島第1原発事故以降、「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)を改定せよ」との議論が原発事業者の電力会社や原発を推進したい政財界から上がっている。

 1961年に制定された原賠法は、原子力災害事故の被害者を保護するため、事故を起こした原子力事業者に対して、事故の過失・無過失にかかわらず賠償責任があるとする「無過失責任主義」と「無限責任」を定めている(第3条)。つまり、原子力発電所で放射能漏れ事故が発生し、近隣住民に被害が及んだ場合、原発を運営する電力会社などの事業者は、たとえ自分に過失がなくても被害者に対して「無限の賠償義務」が発生する。

 これに対して電力会社や政財界は、「原賠法が電力会社に無限責任を負わせていることで、原子力事業の健全な発達を妨げている」「欠陥法だ」と主張。その上で、原発事故が起きた時に、事業者の責任が限定され、責任の限度を超える部分については国家補償とするよう法律を改めるべきだ、と訴えている。

 これを受け、今年1月、原子力政策のかじ取りを行う内閣府の原子力委員会で原賠法の改定を検討することが決まった。原子力委員会内には、大学教授やジャーナリストら25人の有識者が改定の是非を議論する「原子力損害賠償制度専門部会」が設置された。

 今後、原発事業者の責任を限定する形に原賠法が改められれば、原発事故の加害者の賠償責任が免除され、同法は事故防止のためのブレーキ役を果たせなくなる恐れがある。


 ◇責任回避したい電力会社


 今回の原賠法の改定運動の背景には、原賠法と、同法とセットの「原子力損害賠償補償契約に関する法律」(補償契約法)が原発再稼働の足かせになっている、という電力業界の認識がある。

 まず、原賠法は、原発事業者の責任を無限とし、かつ賠償金の原資となる一定額の準備を義務付けており、確実かつ迅速に賠償金の支払いを可能にする仕組みを取っている。

これは「賠償措置額」と呼ばれ、その額は1サイト(原子力発電所の敷地)当たり1200億円である。賠償措置額の支払いは、原子力災害が何によって引き起こされたか、ケースにより支払い方法に違いがある。

 第1のケースは、原因が地震・津波・噴火の場合、あるいは、これまで規定通り正常に運転していたと認識していたら、実は放射能漏れを起こしていたことが後から発覚したような場合、または事故から10年経過後に賠償請求が発生した場合である(図1)。この場合は、原発事業者と政府との間で結んだ「原子力損害賠償補償契約」(補償契約)により、事業者に一定の補償契約料を毎年負担させている(ただし、補償契約料は1961年度から2014年度までの全原発事業者分を合計しても270億円弱にすぎない)。

 第2のケースは、………