2015年

8月

25日

東芝:上司に逆らえない企業風土 2015年8月25日特大号

 ◇ドン西室氏の責任問う声


猪熊 建夫

(ジャーナリスト)


 組織的な利益水増し、「粉飾決算」により、東芝の歴代3社長や取締役が辞任に追い込まれた。だが、これで幕引きとはならないだろう。「ドン」として君臨する元社長の西室泰三相談役の責任を問う声が出ているからだ。

 東芝が歴代3社長辞任を発表したのは7月21日午後5時。2時間に及んだ記者会見が続いているさなか、首相公邸では戦後70年の安倍晋三首相談話を検討する私的諮問機関「21世紀構想懇談会」の夕食会が開かれた。座長を務めている西室氏は安倍首相に「私が責任を持って東芝を再生させます」と告げたという。

 東芝の元役員は「責任を持って再生させるというが、そもそも不祥事の最大の責任は西室さんにある」と指摘する。第三者委員会の報告書は粉飾の原因を「上司の意向に逆らうことができない企業風土」と結んだ。その企業風土を生んだのが、19年にわたる「西室支配」だ。

 西室氏は1996年に8人抜きで社長に就任した。2浪して入学した慶応大学を6年で卒業した国際・営業畑の出身。東芝の社長は「東京大学卒で重電畑」の慣行があったが、西室氏の後任で東大卒の岡村正氏を経て、それは変わった。

 社長の座はその後、早稲田大学を卒業後に東大の修士課程を修了した西田厚聡氏、早大卒で原子力畑の佐々木則夫氏、資材調達部門出身で神戸商科大卒の田中久雄氏へとバトンタッチされるが、この間、西室氏はトップ人事に影響力を発揮した。

「利益至上主義」の淵源となった社内カンパニー制を導入したのは、西室氏だ。相談役が会計操作を直接指示したとは考えにくい。しかし、歴代3社長が不正会計を指示、強要していた事実を、西室氏が全く知らなかったとも考えにくい、というのが東芝社内から出ている見方だ。ある専務経験者は「私は3社長の行状を伝えていた。他の役員からも届いていたはずだ」と言う。不正会計が表面化する前、西室氏は周辺に「業績の数字についても間断なく、報告をもらっていた」と述べている。

 西室氏は2005年6月、東京証券取引所会長に就任。13年6月からは日本郵政社長に就いた。その後も東芝本社に執務室と専任秘書を持ち続け、週に3日顔を出すことも多かった。日本郵政の現職社長にかかわらず、である。日本郵政は連結純資産15兆3000億円(15年3月期)にもなる巨大企業だ。その社長が片手間にできる仕事なのだろうか。

 証券取引等監視委員会と金融庁は、東芝への行政処分を検討中だ。東京地検特捜部も強い関心を寄せ、関連資料の収集を始めている模様だ。特捜部が強制捜査に着手することになれば、影響はさらに各方面に飛び火する。元検事のある弁護士は「戦後最大級の粉飾決算。特捜部が見逃すわけがない」と強調する。


 ◇東証会長としての責任も


 西室氏は、株式上場を審査する東証のトップを5年前まで務めていた。西室氏が東証会長だった05年6月?10年6月は、東芝が不正会計を繰り返していた時期に重なる。これだけでも責任重大だ。日本郵政グループ3社は今秋の株式上場を目指しており、今度は日本郵政社長として審査される側に回る。

 日本郵政の上場は、87年のNTT以来の超大型の株式公開で、アベノミクスの目玉政策の一つだ。政府内からも「一つの会社が悪いと、日本の全体が悪いということになりかねない」(麻生太郎副総理兼財務相)と懸念の声が出ている。

 東芝は歴代自民党政権と蜜月関係だ。西室氏はとりわけ安倍政権とのつながりが強い。しかし、日本全体のガバナンス不信を払拭するという観点からも、徹底的な事実の解明が求められる。

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