2015年

8月

25日

追悼:「ミサイル開発の父」 カラム元インド大統領死去

中島敬二

(元インド政府アドバイザー)


 2002年から07年にわたって大統領を務めたアブドル・カラム氏が7月27日、心不全のため急逝した。享年83歳。インド政府は7日間喪に服すことを宣言し、モディ首相は哀悼の意を示した。

 カラム氏は貧困家庭で育ち、科学者として大成した。軍事・航空の専門家として宇宙開発研究所などでインド初の人工衛星の打ち上げに関わったほか、1998年の核実験では中心的役割を果たしたといわれている。「ミサイル開発の父」と称されることも多い。

 大統領任期中は「庶民の大統領」として国民に愛された。インドの大統領は国家元首ではあるが、象徴的な存在という意味合いが強く、実質的な政治の権限は首相にある。とはいえ、首相や州知事の任命権や、陸・海・空軍の統帥権など多くの権限を持つ。州の政治や治安が混乱すると、その州を一時的に大統領の直轄下に置き、事態の収拾を図る権限もある。このため、5年ごとに大統領の改選が行われるたび、候補者の選出が政党間の政治問題になりやすい。だが、カラム氏は国民の人気もあり、与野党双方から支持されて選出されるという異例の人事だった。

 私生活では厳格な規律を守り、絶対禁酒主義、禁欲主義を実践し、タミル文学の古典詩集の研究でも活躍した。晩年は若者の教育にも情熱を注いだ。