2015年

9月

01日

ワシントンDC 2015年9月1日号

◇アフリカ外交を積極化
◇狙いは中国へのけん制

及川 正也(毎日新聞北米総局長)

「新たなアメリカの夜明け」とメディアがオバマ米大統領の就任宣誓を速報してから6年半余。奴隷制の苦難と人種差別の屈辱を経験したアフリカ系米国人(黒人)として、大統領の座に上り詰めたオバマ氏は7月、父の故郷ケニアとエチオピアを現職大統領として初めて訪れた。だが、それは「感傷旅行」とは程遠い旅だった。

「私は米大統領になった最初のケニア系米国人だ。言うまでもないことだが」。オバマ氏は7月28日、最初の訪問地ケニアでの演説で冗談交じりに語りかけ、 会場を沸かせた。その後、エチオピアの首都アディスアベバでの演説でも「アフリカ人の息子」とアピール。「身近な米国」を必死に売り込んでいるように映っ た。
 オバマ氏の攻勢の背景には、後手に回ったアフリカ外交をなんとか挽回したいという思いがあった。狙いの一つが、テロ対策での連携強化だ。ア フリカではイスラム過激派のテロ活動が後を絶たず、2013年にナイロビのショッピングモールを襲撃した国際テロ組織アルカイダ系のアルシャバブ対策が急 務だった。だが、昨年以降は、イラクからの米軍撤退やシリアの内戦の虚を突いて増勢した過激派組織イスラム国(IS)への対応にかかりっきりだ。オバマ氏 は「訓練や支援を通じてアフリカの戦力が強くなるよう助ける」と表明したが、米国の影響力には影が差している。
 南スーダンは11年にスーダンか ら分離独立した。米国の南スーダンへの政策は、第1次オバマ政権のアフリカ外交の「最大の成果」とされたが、その後、南スーダンは内戦状態に陥り、1年半 にわたって放置された状態が続いた。オバマ氏は、今回のアフリカ訪問でようやく本腰を入れ始めたものの、治安悪化から各国が支援をためらうようになった。 米国の対応の遅れへの不満も漏れる。

◇独裁や汚職が障壁

 だが、訪問の最大の狙いは中国へのけん制だ。黒人初の大統領で ありながら、09年の就任以来、オバマ政権のアフリカ戦略は「不十分」と批判されてきた。急成長した中国は、豊富な資金を元手に市場拡大や資源獲得に奔走 し、アフリカとの関係で米国を凌駕(りょうが)したからだ。
 対アフリカ貿易額は、かつて米国がトップだったが、中国は14年、米国の約3倍とな る2200億㌦を超えた。訪問に当たり、英BBCがオバマ氏に行った皮肉まじりの質問が、この状況を象徴している。「大統領は、これから中国のおカネで建 てたアフリカ連合(AU)本部に行き、中国が造った道路を旅しますね」。
 オバマ政権の売り込みぶりを見せつけたのが、ナイロビで開かれた世界起 業家サミットでの演説だ。このイベントは、米国とイスラム圏の実業家らの関係強化を目指して、10年から開催されている。オバマ氏は「世界のビジネス界の トップリーダーやイノベーターとの商機をつくる」と力説。イノベーションへの投資拡大を約束した。
 ホワイトハウスは、サミットに参加する米投資 家ら4人を招いた記者会見を設定。投資会社レボリューションのスティーブ・ケース最高経営責任者(CEO)は「アフリカでの投資の第1波はインフラだが、 第2波は米国が得意とするイノベーションだ」と、インフラに集中投資する中国との差別化を図った。
「脱中国依存」のレールを敷きたい米国だが、アフリカには独裁や汚職が残り、人権や報道の自由への制約が厳しい。米国の基準では、中国のようになりふり構わぬ投資はできない。かといって民主化には時間がかかる。出遅れを取り戻すのは簡単ではなさそうだ。