2015年

9月

08日

ワシントンDC 2015年9月8日号

◇イラン核合意に民主党議員も反発

◇オバマ大統領がやきもき


堂ノ脇 伸(米州住友商事会社ワシントン事務所長)


 9月以降の米国は、さまざまな政治日程が目白押しだ。中国の習近平国家主席とローマ法王の訪米が9月に予定されているほか、9月末からの国連総会に各国首脳が集う。10月には、韓国の朴槿恵大統領を迎え、延期されていた米韓首脳会談を開催する。なかでも注目されるのが、イラン核合意への対応だ。合意の承認を巡る決議の期限は、9月17日に到来する。

 米欧など6カ国とイランは、イランの核関連活動を大幅に制限する代わりに、対イラン経済制裁を解除することで、7月14日に最終合意に至った。この多国間の合意内容について米国では、5月に成立した「2015年イラン核合意審査法」に基づき、議会での審査と最終承認を義務付けている。

 元よりオバマ政権の交渉姿勢に反対の立場を示す共和党が上下両院で過半数を占める現状では、「合意反対」案が可決される公算が強い。これに大統領が拒否権を発動すれば、共和党は、これを覆すための3分の2以上の議席を持たないため、最終的に合意は遵守できると大統領側は目論んでいる。

 だがここにきて、政権支持基盤であるはずの議会民主党内にも、強力なイスラエル・ロビーの影響を受けて、合意案に反対する意思を表明する議員が現れ始め、オバマ政権をやきもきさせている。


◇イランに譲歩し過ぎ


 今回の交渉は、6カ国とイラン双方のぎりぎりの譲歩で「最終合意」に至ったが、その内容は依然として、イランが将来の核兵器開発に再着手する余地を残す。このため、「単に時間を買っただけで、イランの核の脅威を完全に払拭できてはいない」と指摘する声が共和党のみならず、民主党内からも聞かれる。

 そもそも1979年の米国大使館占拠人質事件を機に、米国内には、イランに対する根強い不信感が党派を超えて存在する。今回の合意は、核兵器開発に再着手する余地を与えつつ制裁を解除するので、イランに有利だ。そのため「実績づくりに躍起になっているオバマ政権が譲歩し過ぎた」との意見が少なくない。

 オバマ大統領は8月5日、ワシントンDCにあるアメリカン大学で「最終合意」への支持を訴え演説。自らの交渉成果を、かつてジョン・F・ケネディ大統領が旧ソ連と締結した部分的核実験禁止条約(PTBT)に匹敵する、現実的かつ歴史的な合意だと主張。反対する勢力は「戦争による解決を望んでいるだけだ」と訴えた。

 これに対し、翌6日には、上院民主党の重鎮で、同党の次期院内総務と目されるユダヤ系のチャック・シューマー議員が、「最終合意」の内容は不充分であるとして、反対の立場を表明。党内で影響力を持つシューマー議員の表明だけに、いまだ態度を決めかねている民主党上院議員が、どれだけ追随するかが注目されている。

 同様に下院民主党でも、外交委員会の少数党の筆頭理事であるエリオット・エンゲル議員をはじめ、ユダヤ系の有権者の多いニューヨーク州やフロリダ州に選挙区を持つ議員複数名が、「最終合意」に反対の立場を表明している。

 仮に上院で一部の民主党議員が反対し、全体で3分の2を上回ったとしても、下院では相当数の民主党議員が反対に回らない限り、3分の2を超える事態になる可能性は低い。このため「最終合意」は順守されるとの見方が強い。とは言え、予断は許さない。オバマ政権としては、残された任期で指導力を発揮し続けられるかが問われる大きな関門だ。