2015年

9月

15日

現地ルポ:欧州家電見本市IFA 2015年9月15日特大号

欧州向け白物家電などを展示するパナソニックのブース
欧州向け白物家電などを展示するパナソニックのブース

◇白物でパナソニック反転攻勢へ

◇ソニーは新型スマホで背水の陣


谷口健(編集部)


 IFAは、世界の電機メーカーが最新製品を展示し、毎年1月に米国で行われる家電見本市「CES」に比べ消費者向けの製品が前面に出る。欧州勢や中韓勢が目立つ中、日本企業ではパナソニックとソニーが大型展示でアピール。共に欧州市場で追う立場だが、独シーメンスや独ボッシュ、蘭フィリップスなどの欧州トップ企業や、欧州でシェアを広げる韓国サムスンに挑む。

 

 ◇小さい日本製品シェア


 欧州系メーカーやサムスンがシェア上位を占める家電で、パナソニックは「住空間」をコンセプトに、白物、理美容品、照明、音響製品などを提案し、市場に切り込む。

 パナソニックは巨額の赤字からの脱却を進め、売上高を2014年度の約8兆円から、18年度に10兆円を目指している。家電は14年度2兆円から、18年度2兆3000億円が目標。売り上げ増の大半は中国を想定していたが経済減速もあり、欧州は重要な地位を占める。家電は「(パナソニックの)DNA」と繰り返す津賀一宏社長が重視する市場だ。

 ただ、欧州における洗濯機市場は、1位が独ボッシュ、2位が独MIELE(ミーレ)、3位が独シーメンスと地元勢が独占。冷蔵庫は、1位がサムスン、2位がトルコのBEKO(ベコ)、3位は独LIEBHERR(リープヘル)。スウェーデンのエレクトロラックスや米ワールプール、中国のハイアールなどが展開しており、競争は激しい。パナソニックや日立製作所、三菱電機、富士通など「日本勢のシェアはかなり小さい」(日本企業関係者)のが実情だ。

 欧州の白物市場は地場の企業が強く、日本企業の多くは積極的な展開を控えていた。しかし、パナソニックは今回、サムスンに次ぐ規模のブースを設け、「欧州有力企業に肩を並べる」姿勢を打ち出した。本間哲朗・アプライアンス社社長は現地で、「欧州では音響製品の強化と同時に、(白物などの)アプライアンス事業の売上高を18年に向けて(14年比)2倍にする」と意気込みを示した。

 冷蔵庫や洗濯機は欧州市場向けに設計したものを展示。製造は13年に資本・業務提携したスロベニアの家電大手ゴレーネ社が担う。このほか、脱毛機やフェイシャルローラー(美顔器)などの理美容家電も披露した。

 パナソニックが期待を寄せるのが備え付け型のIHキッチン。欧州大陸で初めて、ドイツで7月から発売。正確な温度管理などの性能だけでなく、日本でシェア1位(2位は日立製作所、3位は三菱電機)という実績を強みに欧州市場を開拓する。

 欧州におけるIH化は20%にとどまり、今後の成長に期待する。また、日本のIHキッチン市場が、リーマン・ショックによる需要の落ち込み、東日本大震災後の原発事故によってオール電化の流れが鈍化し、伸び悩んでいるという事情もある。

 備え付け型IHキッチンは、販路が重要だ。日本では約85%がB2B(法人向け)経路の販売のため、欧州で「今後も販路の開拓は大きな課題」(同事業担当者)だ。IFAでの商談をきっかけに、IHキッチンの海外事業の将来をかける。

 欧州の白物市場では、「カッコいいから買われることもある」(サムスン関係者)と言われるように、デザインが重要な役割を持つ。パナソニックは今年4月、本社に「デザイン戦略室」を設置。英米のデザイン事務所と契約するなど、「韓国でも欧州でもない日本メーカーの強みを生かす」デザインを模索。IFAでは、デザインと新技術を生かしたキッチンコンセプトを展示した。

 一方、デジタル家電の分野では、日本勢と欧州勢、中韓勢が激しく競い合う。コモディティー化が進んだとされるスマートフォン(スマホ)やタブレット端末、スマートウオッチなどのモバイル端末だが、まだまだ主役を務める。

 ソニーは、新型スマホ「エクスペリアZ5」を発表。米アップルが9月9日に発表する新型iPhoneに先立ち、対抗機と位置づけた。

 エクスペリアZ5は、カメラが23メガピクセルという高い画素数で、ソニーの強みであるカメラ機能を強化。側面の電源ボタンに指紋認証機能を搭載した。また、4Kディスプレーを搭載した大画面モデルも発表した。防水機能を含めiPhoneとの差別化を図る。ソニーのモバイル事業は、縮小の崖っぷちに立っており、このエクスペリアZ5が、今後のモバイル事業の将来を左右する。

 サムスンは、8月に新型スマホを発表済みで、IFAでは新型のタブレット端末と丸型のスマートウオッチを発表した。

 一方、赤字事業の代名詞となったテレビは、欧州1位がサムスン、2位がLG電子、3位と4位にソニー、パナソニックと激戦状態。

 ソニーは、従来の路線を踏襲し、大型の4Kテレビなどを展示し、高機能・高画質をアピールした。パナソニックは、「厳しい目を持つ欧州の消費者に画質をアピールするため」(品田正弘・アプライアンス社テレビ事業部長)、有機ELパネル搭載の65型テレビを展示した。有機ELパネル搭載のテレビとしては初の市販品で、10月に欧州で発売する。一方、テレビを見ない時は画面上部のみに時計やろうそくなどを表示する60型の「アンビエントディスプレー」を展示。「インテリア製品としてのテレビ」という新コンセプトで、欧州市場での新しい試みを見せた。


 ◇家電とIoTの融合


 また、あらゆる機器が通信機能を持つ「IoT(モノのインターネット)」技術を活用し、家電とIoTをかけ合わせた「スマートホーム」も大きなテーマとなった。

 テレビや冷蔵庫で欧州シェアトップのサムスンは、IoTの展示コーナーをブースの中心に据えた。声で電気をつけたり、手のジェスチャーでテレビのチャンネルを変えられるなどの技術を展示した。

 ドイツ企業も積極的にこの技術をアピールした。ボッシュは、コーヒーメーカーやオーブン、洗濯機などを外出先からスマホで遠隔操作できる製品を発表。また、冷蔵庫のなかにカメラを搭載し、スマホから中を見られる冷蔵庫も発表した。ミーレは洗濯機にためておく洗剤が少なくなると、所有者のスマホやタブレット端末にそれを知らせてくれる世界初の洗濯機を発表した。スマートホームの分野は今後も技術革新が続きそうだ。

ターンテーブルを発表するパナソニックの小川理子役員
ターンテーブルを発表するパナソニックの小川理子役員

  ◇テクニクスDJターンテーブル復活へ


 日本製品で注目を集めたのが、パナソニックの高級オーディオブランド「テクニクス」のアナログレコード用のターンテーブル(レコードプレーヤー)だ。2014年のIFAで「テクニクス」ブランドを復活。さらに「テクニクスを世界的ブランドにしたターンテーブルを再定義する」(開発担当)とした。16年度の発売を目指す。

 テクニクスのターンテーブルは1972年に生産を開始。アナログレコードの回転スピードを自在に変えられる「ピッチコントロール」や、回転盤をモーターで直接回す「ダイレクトドライブモーター(DD)」が、DJや音楽ファンに受けた。生産累計は350万台とも言われ、世界で大ヒットした。世界シェアは00年代前半に一時50%という“マンモス製品”だったが、デジタル音楽の広がりを受け、10年に生産を終了していた。

 ターンテーブル市場の先駆者である同製品への期待は高い。昨年のテクニクス復活発表以降、世界のDJや音楽ファン約2万5000人がターンテーブル復活を要望する署名をパナソニックに寄せた。現在、音楽市場はデジタル音楽が主流となりつつあるが、テクニクスの開発担当は「デジタルだけでなく、CDやレコードなど音楽源の多様性はむしろ求められており、ターンテーブル市場は上向きに転じている」と自信を示す。テクニクスブランドは、高級スピーカーやアンプ、車載向けスピーカーを含め、今後は100億円規模の売上高を目指す。そのなかでもターンテーブルは“台風の目”になりそうだ。