2015年

9月

22日

ワシントンDC 2015年9月22日特大号

◇共和党候補との違いアピール

◇気候変動対策重視のクリントン氏


須内康史

(前国際協力銀行ワシントン首席駐在員)


 来年の米大統領選の民主党の最有力候補、ヒラリー・クリントン氏が7月26日に最初のエネルギー・気候変動政策プランを発表した。再生可能エネルギー重視の姿勢を打ち出し、大統領就任から4年以内に米国全土で5億枚以上の太陽光パネルを設置すること、10年以内に再生可能エネルギーで米国内の全家庭の電力供給を賄えるようにすることを目標として掲げた。

 そのための具体的な施策として、各州における再生可能エネルギー利用促進のための補助金の供与、クリーンエネルギーに対する連邦政府の税制優遇措置の延長、同分野における公的な研究開発投資助成──などを挙げる。クリントン陣営の報道官は、このプランは、米国全体の発電能力に占める再生可能エネルギーの割合を、現在の7%から2027年までに33%へ高めることになると説明。これは、オバマ大統領が掲げる目標(30年までに20%)を上回る。

 今回の発表の背景には、気候変動対応が大統領選勝利に欠かせない論点の一つだ、とクリントン陣営が捉えていることがある。

 民主党の他の大統領選候補者ではバーニー・サンダース上院議員が気候変動問題に極めて積極的な人物として知られ、環境保護団体も支持。マーティン・オマリー前メリーランド州知事は、クリーンエネルギーによる発電を50年までに100%とする野心的なプランを発表済みだ。

 対してクリントン氏は、国務長官時代に「キーストーンXLパイプライン計画」(カナダ・アルバータ州から原油を米国中西部およびメキシコ湾岸の製油所へ運ぶ計画)に明確に反対しなかったとして、同計画に反対する環境保護団体から批判的に見られている面がある。クリントン氏としては、民主党支持の環境リベラル層や大口献金者、環境保護団体等に対し、気候変動問題への取り組み姿勢をアピールしておきたいところ。


◇原油輸出解禁に見解示すか


 一方、対共和党の観点では、共和党の候補者の多くが気候変動対応に懐疑的だ。そのため気候変動問題は、大統領選において、民主・共和両党間で見解が異なる論点の一つになる見込み。米国内では「気候変動対策に取り組む候補者を支持する意見が多数を占める」との世論調査結果もあり、クリントン陣営は、この分野で共和党候補との違いを明確化し、アピールできると見ているようだ。

 米国はシェール革命により、今や世界有数の石油・ガス産出国となった。輸出向け液化天然ガス(LNG)のプラント建設が進み、原油の輸出解禁についても法案の審議が進むなど活発化している。ロシアや中東の情勢も絡み、米国のエネルギー政策は外交政策とリンクして、世界のエネルギー安全保障に直結する状況となっている。また、気候変動への対応にはオバマ大統領も積極的だ。世界的にも、本年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で新たな国際的枠組みを議論する予定だ。

 こうした中で、次期米大統領候補のエネルギー・気候変動政策は、注目度と重要度が高まっている。クリントン氏は、7月26日の発表は自身のエネルギー・気候変動政策の一部であり、今後数カ月のうちに包括的な政策パッケージを示すとしている。実際、今回のプランでは、化石エネルギーに関する方針や「キーストーンXLパイプライン計画」、原油輸出解禁といった国内の重要な争点について見解を示していない。

 今後、クリントン氏がこうした重要課題を含め、どのような包括的エネルギー政策を提示し、今後の大統領選でエネルギー政策がどう議論されていくのか、注目したい。