2015年

9月

22日

世界がおびえる中国と利上げ:政治改革なき市場経済 2015年9月22日特大号

◇一党独裁の限界
◇トウ小平以来の「負の遺産」が爆発する


(富士通総研主席研究員)

 

 35年前に始まった「改革・開放」政策により、中国の進路は中央統制経済から自由な市場経済へ漸進的に進むことが確定した。これまでの35年間を振り返れば、部分的な経済自由化は、奇跡的な経済発展につながった。
 しかし、今の中国は迷走しているようにみえる。35年間続いた自由化路線は中央統制経済へ逆戻りしようとしている。30年前、国有企業の経営を活性化するために、中国政府は「政企分離」の改革を進めた。
 すなわち、政府機能と企業の経営機能を分離し、企業の自主的な経営が担保されるようになった。だが今年、中国共産党の機関紙『人民日報』は、「党による国有企業に対する指導体制を堅持し強化することが政治の基本原則」との習近平国家主席の談話を発表している。
  経済学者は現在の中国経済について、人口ボーナスはオーナス(重荷)に転じているとして、中国経済が次第に減速すると予測している。それを受けて、李克強 首相は改革すればそのボーナスが経済成長をけん引する新たなエンジンとなると主張する。しかし、習近平政権が誕生してからの2年半余り、改革は目立った成 果を上げておらず、逆に政府による統制が強化されている。

◇進まぬ構造改革

 足元の中国経済は極端に不安定化している。中国政府は、本音では高い成長を実現したいだろう。だが、経済政策として切 れるカードはほとんどない。これ以上金融緩和を進めれば、資産バブルがさらに膨張する恐れがあるが、景気を押し上げなければ、景気後退が本格化し、デフレ に突入する恐れがある。ジレンマだ。
 中国社会科学院副院長の李揚氏(金融論専門)は「このままでは、やっていけないのだから改革するしかない」と分かりやすく改革の必要性を力説している。問題は李克強首相が主張する改革のボーナスは、いまだ実現していないことにある。
  先進国は金融緩和によって株価の上昇を実現し、プラスの資産効果が消費を刺激している。中国政府も金融緩和を実施し、2014年半ば以降、上海総合指数は 上昇に転じた。特に今年の春以降に株価が急上昇し、6月には5100ポイントを超えた。株価が高位に維持されれば、景気好転に間違いなく寄与する。
 株価の上昇を維持するには経済の構造転換が必要だが、肝心の構造転換が遅れている。金融機関と地方政府は、不動産投資による損失を穴埋めするために株式投資でもうけを得たいところだが、株価は5100ポイントを超えたところで暴落した。
  本来、株価下落は市場からの警鐘と受け止めるべきである。中国政府は市場を救済しようと奔走しているが、株価と経済構造は表裏の関係にある。無理に株価だ けを押し上げようとしても、持続的に効果を上げることはできない。中国政府が実施している経済政策は、逆に市場を混乱させている。
 中国は共産党一党支配の政治体制である。経済運営の失敗により政府共産党の責任を問われることは避けたい。それゆえ、株価暴落は悪意のある空売りと、インターネット上でのデマによるものと責任を押し付けようとしている。
 そのため、株価を安定させようとして公安警察が投入され、誰が悪意を持って空売りをしているかを調査する。デマを流した容疑で拘束されたのは『財経』という中国の代表的な経済誌の記者だった。

 しかも、裁判を経ずして、この記者が中央電視台(CCTV)の番組で罪を認めさせられ謝罪させられた。だが、ここで反省すべきは、政策当局ではなかろうか。
 12年の共産党第18回大会で採決された「決定」では、「市場メカニズムが健康的に機能する市場環境を整備する」という一文が盛り込まれた。とても正しい認識だった。問題はその後の「改革」が、それと真逆な方向に走っていることである。