2015年

10月

13日

エコノミストリポート:政府が海洋開発産業を強化 2015年10月13日号

◇海洋技術者を5倍に増やす

 

対馬 和弘

(海事プレス社『COMPASS』編集長)

 

日本の海洋資源開発が大きく動き出そうとしている。
 今年7月20日の「海の日」の記念行事で、安倍晋三首相は「現在2000人程度の日本の海洋開発技術者を、2030年までに5倍の1万人程度に引き上げる」という計画をぶち上げたのだ。
 海底から原油やガスを生産する海洋開発産業は、欧米が主要な技術や製品を握っており、日本は大きく出遅れている市場。だが、日本近海の海底には鉱物資源が含まれる海底熱水鉱床や次世代エネルギーとして注目されているメタンハイドレートなどが豊富に存在する。これら自国の海底資源の商業開発をきっかけに、世界の海洋開発市場に打って出ようというのが日本政府の狙いだ。
 そこでまず第一に掲げたのが技術者の育成。関連する産業界が大きな期待をかける中、この動向を注視しているのが、人材不足に悩む造船業界だ。

 ◇人の流出深刻化

 日本の造船業といえば、少し前まで「数年後には造る船がなくなり、存亡の危機にある」と盛んに言われてきた。だがわずか数年で状況が一変し、いまや仕事不足どころか人手不足に直面している。工場はフル稼働だが、各社とも人の手当てが追いつかない。一部の造船所では、納期を守れるかどうかギリギリの綱渡りが続いている。
 人手不足の直接的な要因は、建設業界との人の取り合いだ。造船所は「協力工」と呼ばれる下請け業者に負うところが大きい。工場で直接生産に携わる技能者は日本全体で約6万5000人いるが、このうち協力工がおよそ7割の約4万5000人を占める。これら協力工の一部が、東北復興と東京五輪に伴う建設工事に移ってしまった。………