2015年

10月

06日

経営者:編集長インタビュー 小倉雅彦 東鉄工業社長 2015年10月6日号

Photo:根岸 基弘(東京都新宿区の本社で)
Photo:根岸 基弘(東京都新宿区の本社で)

 ◇線路工事でナンバーワン


 東鉄工業は鉄道工事を主力とする建設会社で、設立は旧国鉄より早い1943年7月。線路工事の実績は国内トップだ。現在は線路、土木、建築、環境の4部門で展開。2015年3月期は売上高1161億円、営業利益92億円で、いずれも過去最高。4月から新中期経営計画(16年3月期~18年3月期)がスタートした。

── 最高業績を達成した要因は。

小倉 採算の悪い工事を受注しないようにしたことです。これは簡単そうに見えて難しい。受注したいのをグッと我慢したのが良かったです。受注した案件は、細かくコスト管理をしています。悪い傾向があると、場合によっては私が現場へ行き、会社としての対応を決め、悪化しないうちに対処しています。

── 新中計の最終年度の目標は売上高1400億円、営業利益120億円。どうやって達成しますか。

小倉 当社の売上高の8割はJR東日本からの受注、残り2割は国や自治体、民間企業・個人、JR以外の公共・民間鉄道会社などからの受注です。将来は、この8対2の比率を5対5(8対8)にしたい。JRの売上高は減らさず、それ以外の売上高を同レベルまで増やします。

 実はこの3年間、JR以外の売上高はほとんど増えませんでした。JRの売上高が大幅に増えて、施工能力をほかに回す余裕がなかったので。その分、これからの3年間は伸

びしろがあります。問題は施工能力を確保できるか。人材採用を増やすなど対応を進めています。

── JRの工事ならラクして利益が出るのではとの見方もありますが、難しい工事もありそうです。

小倉 JR山手線のホームドア設置は、終電から始発までの正味2時間で作業をします。それを1年半?2年間繰り返します。約10の関連特許を保有しています。

 もっと難しいのは駅の天井工事で、下を多くのお客様が通る中で作業するため、ネジ1本を落としても大変。失敗は許されず緊張感に包まれます。

 JR御茶ノ水駅の耐震補強は、5㍍四方の移動式足場を動かしながら、1・2㌔の神田川に面する壁に約2500本の鉄の杭を打ち込みます。すぐ上を電車が走る難工事です。

 このように、工事によっては時間的、空間的に厳しい。慣れれば利益が出ますが、そこに行き着くまでは涙、涙ですよ。

── 底力を上げる対策は。

小倉 一つは「要注カード」。他社を含む過去の工事の失敗などを例に、原因や対策、注意点などを見やすくまとめています。効果的ですよ。このほか、協力会社を紹介する冊子も発行。2年間で9号発行し、100社以上を紹介しています。できるだけ顔写真と名前を載せ、全員に配ります。家族に見てもらい、非常に喜ばれています。協力会社の人たちの質と数はとても大切なので、このようにして絆を育んでいます。


 ◇リニアのトンネルも狙う


── JR関連でこれから受注が期待できる大型プロジェクトは?

小倉 一つは、山手線品川─田町間にできる新駅の建築工事と線路の工事。羽田空港と都心部を鉄道で結ぶ「羽田アクセス線」のトンネルを掘る工事と線路を新たに敷く工事もあります。

 国立競技場の最寄り駅である千駄ケ谷駅と信濃町駅は、東京五輪に向けて、ホームドア設置などの改良工事が期待されます。受注するのだという強い決意で臨みます。

── 整備新幹線はどうですか。

小倉 今年初めに九州新幹線長崎ルートのトンネル工事を開始し、日本に2台しかない巨大なシールドマシンで作業をしています。北陸新幹線は金沢─敦賀間のうち、高架橋とトンネルが一体となった1区間を受注したので、これから施工を始めます。北海道新幹線の新函館─北札幌間の土木工事の受注も狙っていきたい。数年先になるでしょうが、土木工事の後は線路を敷く工事が始まります。

 リニア中央新幹線はトンネル工事を狙います。技術を継承する目的もあります。

── 鉄道以外はどうですか。

小倉 国や東京都から受注した道路の耐震強化が本格的に始まります。地下に水路トンネルや貯水池を造って、水のあふれを防ぐ工事もあります。

 建築では、マンションを長年手がけており、近年は保育園、幼稚園の工事が増加。他社とJV(共同企業体)を組んで、大規模なオフィスビルの工事にも挑戦しています。実績はありませんが物流施設も狙っています。

── 海外の取り組みは。

小倉 早ければ今年、タイの都市鉄道「パープルライン」の線路メンテナンスの技術指

導をすることになるかもしれません。これまでも中国の新幹線やベトナムの都市鉄道の技術指導などをしています。

 国内に仕事が多いので、海外では新設・改良工事よりも技術指導が中心。JRと一緒にやります。

── 配当は11年3月期が18円、15年3月期は30円になりました。

小倉 15年3月期は6円引き上げて30円にしましたが、さらなる株主還元のため、自社株を20万株買い、総還元性向(年間配当と自社株買いの合計値を純利益で割った値)を25%にしました。配当は、いったん上げたら下げない方針で、安定的に増配していくつもりです。(構成=中川美帆・編集部)


(Interviewer 金山 隆一・本誌編集長、Photo 根岸 基弘:東京都新宿区の本社で)



■横 顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 前半は国鉄、後半はJR東日本で、モーレツ社員でした。主に線路やトンネルのメンテナンスをする部署の課長、部長。現場に一番近い所の責任者で、ほとんど終電車で帰っていました。休みの日に子どもと遊園地に行く約束をしていたら、電話1本で呼び出されたこともしょっちゅう(笑)。でも、やりがいがありました。

Q 最近買ったもの

 故障したパソコンを買い替えました。

Q 休日の過ごし方

 10歳の孫娘と回転寿司を中心に食べ歩き。楽しいです。


■人物略歴


 ◇おぐら まさひこ


神戸市出身。1970年灘高校卒業。74年東京大学工学部土木工学科卒業、国鉄入社。国鉄民営化に伴い、87年JR東日本入社。2004年6月JR東日本常務。08年6月東鉄工業入社。08年6月から現職。63歳。