2015年

10月

13日

フォルクスワーゲン排ガス規制逃れ:政官業の馴れ合いが招いた失態 2015年10月13日号

◇行き過ぎた自動車産業保護が裏目


熊谷徹

(在独ジャーナリスト)


 独自動車大手、フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車が排ガス規制を不正に逃れていた問題で、VWだけでなくドイツの自動車産業全体に対する信頼が揺らいでいる。自動車産業史上、最大級のスキャンダルの全容解明は始まったばかりだが、独基幹産業の自動車産業を守ろうとした行政・政界と産業界の馴(な)れ合いが不正の拡大につながった可能性もある。

 独自動車業界では「現在、VW社内で準備されている調査の中間報告書によると、排ガス規制逃れのための違法なソフトウエアの使用が、本社の開発部門で2005~06年ごろに決定された」という情報が流れている。独テレビ局の北ドイツ放送(NDR)によると、開発部門の最高責任者だったハインツ・ノイサー取締役は11年、社内のエンジニアから不正を指摘されながら真剣に対応しなかったとされ、他の2人の幹部とともに休職処分にされている。今後は辞任したウィンターコルン前最高経営責任者(CEO)らの関与の有無が焦点となる。

 さらにドイツの環境団体からは、「他のメーカーでも走行時に窒素酸化物(NOx)の排出量が試験場での計測結果を大きく上回った」という指摘がある。ただ、現時点では、VW以外の会社は不正ソフトによって排ガスデータを操作したという疑惑を全面的に否定している。


 ◇知っていた行政当局


 独メディアは「業界を監督する立場にあった独陸運局や独連邦交通省は、データの食い違いがあることを知りながら原因を究明しなかった」と指摘する。ドイツの環境団体や連邦環境庁は、ディーゼル車の道路での走行時と試験場でテストした時のNOx排出量の間に食い違いがあることを数年前から指摘していた。また欧州委員会も07年から不正ソフトの存在を知っていた。しかし陸運局や交通省は、そうした指摘に真剣に対応せず、データの食い違いの原因究明を怠っていたというのだ。環境団体は「陸運局や交通省には不正ソフトについて見て見ぬふりをする空気があった」と指摘する。………