2015年

10月

13日

中国大減速 資源国・アジア危機:ブラジル=西川珠子

◇世界大恐慌以来の長期的低迷

◇無策がもたらす負の連鎖


西川珠子

(みずほ総合研究所上席主任エコノミスト)


 ブラジル経済の悪化に歯止めがかからない。リーマン・ショック後にV字回復を果たし、2010年には7・6%に達したブラジルの実質国内総生産(GDP)成長率は、14年には0・1%にまで減速。15年に入っても失速に歯止めがかからず、4~6月期の成長率は前期比マイナス1・9%と2四半期連続のマイナスとなり、09年以来の景気後退局面に突入。15年、16年ともに2年連続のマイナス成長となり、世界大恐慌以来の長期低迷に陥る可能性が高まっている。

 国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職疑惑で政治的な不透明感が強まっていることもあり、レアル相場は今年に入って3割以上下落して1ドル=4・0レアルを割り込み、史上最安値を更新した。

 景気に急ブレーキをかけたのは、中国景気の減速を背景とした資源価格の急落だ。ブラジルは08年以降、中国向けを中心に資源輸出への依存度を高め、輸出に占める資源のシェアは約5割に達した。中国の景気減速による需給の悪化により鉄鉱石、大豆、原油などの主要輸出産品の価格が急落し、輸出を抑制する要因となっている。

 また資源価格の下落は、資源関連企業の設備投資の削減を通じても景気を下押ししている。ブラジルの投資全体の1割前後を占めるペトロブラスは、資源価格下落による業績悪化や資金調達コストの上昇を受けて、大幅な投資削減に踏み切っており、建設業界や資材業者にも広範な影響が及んでいる。


 ◇逆風強まる


 景気後退が深刻化しているにもかかわらず、財政収支が急激に悪化し、物価が高騰しているため、ブラジルの政府・中央銀行は景気対策や利下げなどの政策対応に動きにくく、むしろ緊縮的な財政・金融政策を行わざるをえない状況だ。

 労働者党のルセフ大統領は、14年の大統領選挙を僅差で制し、今年1月に2期目に入った。1期目のルセフ政権は、低所得層向けの給付金や住宅整備などの社会政策や景気対策重視の拡張的な財政運営を実施してきた。この結果、14年の基礎的財政収支(国債費用などを除いた収支)は97年以来の赤字に転落した。

 2期目に入ると、財政規律を重視するレビ財務相を迎え、財政緊縮にかじを切った。しかし、景気低迷による歳入の下振れで基礎的財政収支は改善せず、政府は7月に、16年度の黒字目標を2・0%から0・7%へと引き下げた後、8月にはマイナス0・34%の赤字予算を提出した。………