2015年

10月

13日

ワシントンDC 2015年10月13日号

◇共和党のテレビ討論会

◇対立候補がトランプ氏に反撃


堂ノ脇 伸

(米州住友商事会社ワシントン事務所長)


 来年の米大統領選に向けドナルド・トランプ旋風が吹き荒れるなか、9月16日に米CNNテレビが共和党の大統領候補者による第2回テレビ討論会を開催。全米で2300万人が3時間に及ぶ長丁場の議論を視聴した。

 トランプ氏は、これまで歯に衣きぬ着せぬ物言いで対立候補をののしり、メキシコ移民に対する差別的な発言で物議を醸すなどしつつも、圧倒的な支持率を獲得してきた。過去に、その「口撃」を受けた対立候補の多くが、今回の討論会では「泣き寝入りをしては自らの指導力が問われかねない」とばかりに積極的に反論し、トランプ氏に謝罪を求める場面もあった。

 対立候補の一人、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は、自らの移民政策に対し、トランプ氏から「女房がメキシコ人だから寛容なものとなるのだろう」と言われ、「妻への侮辱だ。ここで謝罪してもらいたい」とトランプ氏に詰め寄った。

 トランプ氏が「彼(ブッシュ氏)は大口献金者の操り人形に過ぎない」と述べたことに対しても、過去、トランプ氏が金に物を言わせフロリダにカジノ施設を設けようとした際に、知事だった自分が阻止した、と反論。ブッシュ氏を常々「覇気がない」と批判していたトランプ氏が「今日のあなたは、とても覇気があるようだ」と防戦に回るほどだった。

 かつてトランプ氏に「あの顔が合衆国大統領にふさわしいと思うのか?」と容姿を批判された女性候補のカーリー・フィオリーナ氏は、「全米の女性が彼の言葉をはっきりと聞いた」とコメント。「彼女(フィオリーナ氏)はとても奇麗だ」とフォローを試みるトランプ氏の発言を、冷静に無表情で受け流した。

 ランド・ポール候補は、トランプ氏に最近の支持率低迷を取り上げられ、「ここにいる資格はない」と挑発されたが、「まるで高校生の議論のようだ」と相手にしなかった。

 他候補もトランプ氏の過去の振る舞いや発言に反撃し、トランプ氏が一人守勢に回った印象を視聴者に与えた。


◇フィオリーナ氏の支持が急伸


 その一方で、討論会では移民法や銃、マリフアナ合法化、対ロシア、イラン核協議、気候変動など、多岐にわたるさまざまな問題について、各候補者が意見を述べるだけの十分な時間が与えられた。

 諸々の問題によどみなく冷静に意見を述べた印象を与えたのは、カーリー・フィオリーナ氏とマルコ・ルビオ氏だ。事実、CNNの調査によれば、9月上旬時点で3%に過ぎなかったフィオリーナ、ルビオ両氏の支持率は、今回の討論会後の調査で、それぞれ

15%、11%まで上昇。共和党候補の第2位と第4位につけている。

 一方のトランプ氏はトップで変わりないが、支持率は32%から24%に低下している。同氏が討論会に向け予習した様子はほとんどなく、回答も終始、漠然とした内容との印象を視聴者に与えた。

 しかし、「細部を知らずとも外交は専門家に任せればよい。必要なのは正しい決断を下す能力だ」というトランプ氏の率直な物言いには共感する有権者も多く、これが根強いトランプ人気につながっている模様だ。これはすなわち、既存政治家のメッセージや現在の米国政治に不信感を抱く有権者がそれなりにいて、まったく新しいタイプのリーダーが求められていることの表れとも読み取れる。

 大統領選はまだ序盤戦に過ぎない。トランプ旋風は今後も吹き続けるのか、同氏の動向は引き続き要注目だ。