2015年

10月

20日

特集:日本郵政株 大解剖 日本郵政株の基礎知識 2015年10月20日特大号

身近な株で、投資を始めるきっかけになるかも
身近な株で、投資を始めるきっかけになるかも

 ◇Q&Aでゼロから分かる
 ◇買い方から運用まで

   

深野 康彦

(ファイナンシャルリサーチ社長)


 日本郵政株を買うには、どうすればいいのか。値上がりすれば、即売りか、配当狙いの中長期保有か──株投資の基礎を解説する。


 Q 日本郵政株を買うにはどうすればいい?

 A 株式を買う場合、すでに上場されている株(上場株)を買う場合と、新たに上場する株(IPO株)を買う場合では手続きが異なる。上場株は証券会社に口座を開設すれば、どの証券会社でもすぐに購入できるが、IPO株は引受証券会社が限定されている。

 郵政3社の株式はIPO株だ。引受証券会社は61社。購入する場合は、そのいずれかに口座を開設して申し込む。といってもすぐに購入できるわけではない。

 IPO株の場合、(1)仮条件の決定、(2)ブックビルディング、(3)売り出し価格決定、(4)申し込み──という手順を踏む。郵政3社株はすでに仮条件が決定し、現在、ブックビルディング期間中だ。ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が10月16日まで、日本郵政は10月23日までとなっている。

 購入希望者はこの期間中に申し込む必要がある。新たに証券会社に口座を開設する場合には、数日かかる場合もあるので早めに準備しよう。申し込みの際、仮条件の範囲内で購入希望価格を申請する。実際の売り出し価格はゆうちょ銀とかんぽ生命は10月19日、日本郵政は10月26日に決定する。申請した購入希望価格が売り出し価格を下回っていると購入できない。郵政3社株は人気が高く、売り出し価格は仮条件の上限で決まる可能性が高いので、どうしても購入したいのであれば、上限価格で申請したほうがいいだろう。

 ただし、上限価格で申請しても必ず購入できるわけではない。売り出し株数が決まっているからだ。申し込みが株数を上回った場合、あふれた人は買えない。

 通常のIPO株では、売り出し株式数の約8割を押さえている主幹事証券で申し込むのが有利と言われる。郵政3社株は引受証券会社が通常より多いため、主幹事証券会社が押さえている比率もそれほど多くないと予想され、有利とは言い切れない。むしろマネックス証券のように「完全抽選」を公にうたっているところのほうが可能性は高いかもしれない。大手証券などは、これまでに取引があった顧客に優先的に配分する傾向があるからだ。

 政府は、郵政3社株をより多くの個人株主に保有してほしいという意向もあるだろうから、1人当たりの購入株数を最低単位にするような配慮が行われる可能性もある。

 どうしても購入したい場合には、数社で申し込んでおくといい。仮にすべてが当選してもキャンセルができるからだ。証券会社によっては、申し込み時点で入金が必要なケースもあるので、その点は事前に確認したい。


 Q 最低どのくらいのお金が必要?

 A 株は1株から買えるわけではなく、会社によって「最低購入単位」が決まっている。郵政3社の最低購入単位は100株。仮条件の上限で売り出し価格が決まった場合、日本郵政が14万円、ゆうちょ銀で14万5000円、かんぽ生命で22万円の資金が必要ということになる。もちろん、少額投資非課税制度(NISA)口座で購入することもできる。3社を最低の100株ずつ購入したとして、合計50万5000円となり、NISAの年間の非課税枠の範囲内だ。

 ちなみに、上場株を購入する場合には、証券会社に売買手数料を支払う必要があるが、IPO株には必要ない。ただし、売却する時には手数料が発生する。


 Q 値上がりは期待できる?

 A 株式投資で値上がり益を期待するなら、将来業績が上向き、成長が期待できる企業に投資するのが基本だ。郵政3社の事業は、基本的に国内向けなので、少子高齢化で人口減少が進む国内の状況を考えると、成長は期待できない。また、国有時代の規制がいまだに残っており、新商品や新サービスの提供が自由にできないのも足かせになる。ゆうちょ銀の預金額やかんぽ生命の加入上限額の規制が緩和されれば、一時的な株価上昇は期待できるものの、中長期的にみれば値上がりは難しいだろう。

 一方で、配当には期待できる。企業の純利益のうち、配当に回す金額の比率を配当性向という。日本郵政とゆうちょ銀は50%、かんぽ生命も30~50%としている。結果、投資額の利回りとなる配当利回りが3~4%になると予想されている。短期売買で値上がりによる差益を狙うには向かないが、長期保有して安定的な配当を受け取ることを目指す銘柄になるだろう。配当利回りが高いことで、かつての人気銘柄だった「電力株」と同じような位置づけになるのではないか。


 Q 年代別の活用法は?

 A 30代、40代で、これから資産形成を考える世代には、投資デビューの対象として郵政3社株が向いているだろう。破綻リスクは低いと思われることから、株が紙くずになる可能性は小さいだろう。とくに第1回目となる今回の株式上場では、2回目、3回目の売却が控えているため、政府も株価の下落を避けたいという裏事情もある。

 ある程度の値上がり益が期待できるため、購入後に売却して、株式投資の醍醐味(だいごみ)を味わってみてほしい。売却するときの緊張感は、実際に体験してみなければわからない。利益という「果実」を得る経験は、確かな経験値になるだろう。

 一方で50代、60代は、まとまった資産を老後のために安定運用していく年代。配当利回りは3~4%程度になるとみられているから、長期保有して安定的なリターンを得るのに向いている。株主優待が実施される可能性もある。


 Q 購入時、購入後の注意点は?

 A 上場後に一時的に株価が下がる可能性もあるから、投資予算を一度に全額使ってしまうのではなく、3分の1程度は資金を残しておき、下がったら追加購入できるように備えておくのもよい。株価が下落したタイミングで追加購入すると、トータルでの平均購入コストを下げるチャンスだ。

 また、購入時点で売買ルールを決めておくのも重要だ。「10%以上値上がりしたら売却して利益を確定させる」など、機械的に実行する決まりだ。「値上がりしたら売ろう」と思っていても、実際に値上がりすると、「もっと上がるのではないか」という欲が生まれ、なかなか売却できない。

 判断に迷わないためには、2単位を購入するのもお勧めだ。1単位だけでは「売るか、見送るか」の二者択一になるが、2単位保有していれば、1単位だけ売却して利益を確定し、もう1単位は手元に置いて様子をみるという選択肢ができる。


 Q 株を直接買う以外の選択肢は?

 A 三井住友信託銀行が投資信託「日本郵政株式/グループ株式ファンド」の募集を開始した。投資信託なので1万円程度から購入できる、積み立てが可能などのメリットはあるが、株を直接購入するよりも、手数料がかかる分コストが高くなることには要注意だ。

 購入時に支払う申込手数料は1・62%、保有期間中支払う信託報酬は年率0・6912%だ。

 仮に100万円分を購入すると、購入時に1万6200円、保有期間中は毎年7000円前後が必要となる。これだけコストを支払うのであれば、株式を直接購入したほうがいいだろう。

(構成=向山勇・ライター)


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 ◇NISA(ニーサ)
 個人投資家を対象にした優遇税制で、2014年1月に始まった。証券会社や銀行などで専用口座を開設し、株式、投資信託への投資(上限は年間で100万円)で得た売却益や配当への課税(税率20%)が、5年間免除される。開設できる専用口座は1人1口座のみ。非課税措置を受けられる投資額は年間最大100万円(16年からは120万円)。


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この記事の掲載号

2015年10月20日特大号

 

【特集】日本郵政株 大解剖

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