2015年

10月

27日

エコノミストリポート:液晶市場異変 2015年10月27日号

◇中国発クリスタルサイクル

◇パネル価格急落の衝撃

 

田村喜男
(IHSテクノロジーシニアディレクター)

 世界の液晶市場が深刻な価格下落を伴う負の「クリスタルサイクル」に入った。ここ数年、テレビの大型化とスマートフォンの普及に伴う需要増と価格安定による高収益が続いた正のサイクルは終わり、2015年から需要減と在庫増が始まり、15年後半から利益率は赤字転落の見通しになった(図1)。利益が上がっていた4Kテレビパネルを中国勢が16年に増産予定で、過当競争が発生するため、供給過剰状態は17年前半ごろまで解消されない見通しだ。

 14年の液晶市場(TFT)は金額ベースで、テレビパネルが最も多く550億ドル、次いでスマートフォンが200億ドルと、この二つで過半数を占めた。 15年はともに横ばい見込みで、枚数ベースでも成長を維持している。ただ、ノートパソコンとタブレットは14年をピークに、金額、枚数ベース共に減少する 見通し。特にタブレットは枚数ベースでみると、14年の3億3300万枚から、15年は2億5600万枚まで急落するとみられる。(図2)
 そし て、テレビパネルは金額ベースでみると、16年は480億ドルの見通しで、15年の550億ドルから減少に転じる。面積ベースでは、テレビパネルは14年 の1億1300万平方メートルから順調に伸び、16年は1億2600万平方メートルの見通し。つまり、単価が下落していく。
 背景には大型テレビ のコモディティー(普及品)化がある。中国勢が手がけていた32インチは在庫増が進み、収益力が低下している。このため、中国勢は今後、32インチを減産 する一方で、収益性が高い4K55インチへの移行を図る。生産工程上の歩留まり向上は時間が解決し、16年から17年にかけて量産体制が整う見通しだ。こ の結果、16年半ばには4K55インチのテレビセットの実売価格は1000ドルを割るとみられ、コモディティー化が進むのは避けられない。
 4K 液晶パネルのシェアは中国が14年に11%、15年に10%と低迷している。2014年末商戦にはテレビブランドが積極投入したことにより過剰在庫が発生 し、15年第1四半期に在庫調整が行われた。しかし、その後世界での4K化比率は再度増加傾向が続き、今後は4Kがコモディティー化していく傾向に変わり はない。
 テレビパネル市場は15年が供給過剰により5%増、16年は3%減の見込みだ。パネル供給過剰により15年から16年にかけて価格下落が進むが、17年以降は3%以下の低成長の見通しだ。
 成長が鈍化してきたパネル市場で唯一、拡大基調が見込まれるのは車載用だ。運転席のメーター類のパネルに加え、後部座席やタブレット式の装備により、高級自動車1台当たりのパネル実装数は5基に増える。14年から16年にかけて、5割の成長が期待できる。