2015年

10月

27日

経営者:編集長インタビュー 大隈郁仁 東急不動産ホールディングス社長 2015年10月27日号

◇大隈 郁仁  東急不動産ホールディングス社長

◇渋谷再開発で街づくりのDNAを発揮


── 渋谷の再開発が注目されています。

大隈 主に四つの再開発プロジェクトが動いています。当社主体の開発は東急プラザ渋谷跡地周辺と、駅から国道246号を挟んだ桜丘口地区です2020年を目安に渋谷駅周辺で大小複数の開発が計画されており、再開発で街が生まれ変わります。

 東急不動産の歴史は田園調布の開発から始まりました。いわば、街づくりに挑戦するDNAを持っている。それを再開発にも生かします。

── 20年まで大規模開発が続きますね。

大隈 渋谷の旧本社跡地周辺、JR浜松町駅に近い竹芝地区での開発も進めているほか、来年春には銀座5丁目に大型商業施設を開業します。現在進める再開発が開業すると、賃貸業の“厚み”が増します。賃料収入としてキャッシュが生まれるようになると、自己資本比率も改善します。


デベロッパーの東急不動産、不動産仲介の東急リバブル、不動産管理を行う東急コミュニティーの上場3社を経営統合して13年10月に持ち株会社化した。傘下には不動産関連会社のほか小売りの東急ハンズやホテルの東急ステイなどもある。15年3月期の業績は売上高7731億円(前年比8・3%増)、営業利益633億円(同3・0%増)で増収増益。純利益も252億円で同6・4%増となった。

── ホールディングス化から2年たちました。

大隈 持ち株会社化の目的の一つは、グループの求心力強化です。東急不動産は大きくなる過程で事業を分離独立させてきました。グループに頼らず外部の市場を取り込んだことで、各社が成長できた面があります。例えば東急コミュニティーは業界2位で、約50万戸の住宅を管理していますが、東急不動産のマンションは2割程度です。

 一方で、遠心力も強まりました。そこで、お客様にグループ全体で付加価値を提供する体制を目指そうと、再び持ち株会社の傘下にグループを集約しました。

── 足元の業績が好調です。

大隈 オフィスは企業業績の改善等により増床、借り増しの移転が多く、空室率が低下し、賃料も緩やかながら上昇しています。昨年度は契約更改をしたテナントの一部で賃料を値上げしました。今年度はさらに多くのテナントで賃料を引き上げられるとみています。

── マンション市況は。

大隈 都心部は好調です。相続税対策や郊外からの住み替え需要から一等地ではいわゆる「億ション」が非常によく売れています。横浜のみなとみらい地区も人気です。先日分譲したマンションは坪単価440万円ながら、最上階は購入の申し込みが殺到し、19倍の倍率がついて即完売しました。一方、郊外では苦戦することがあります。

── 五輪後の不動産市況をどう予想しますか。

大隈 東京五輪を目指して大型開発が集中しているので、五輪前後は開発案件が減り、ちょっとした足踏み状態になる可能性はあります。一方で、建築費が下がれば、古い物件の更新投資がしやすくなります。そういった意味ではあまり心配していません。

── インバウンドの影響は。

大隈 海外の投資家がマンションやオフィスを買う動きがあります。東急リバブルもアジアに進出して、アジアの投資家を日本に引き込む取り

組みをしています。また東急ステイでは都心でビジネスホテルを約2000室運営していますが、宿泊者の約20%超が外国人で、稼働率、客室単価ともに好調です。

── 海外展開は。

大隈 最重点はインドネシアと米国です。インドネシアは進出から40年の歴史があり、ジャカルタ都心でコンドミニアム事業や、マンション分譲など、現在7プロジェクトを進めています。米国ではニューヨーク・マンハッタンのオフィスビル開発にも挑戦しています。

── 高齢者向け住宅も増やしていますね。

大隈 約1000室のシニア住宅を運営しています。実は私の身内が当社のシニア住宅に入居し、そこで亡くなりました。その時、亡くなった方の着替えや化粧、体を拭いたりといったことまでスタッフが行うこともあることを知りました。職員の質や意識が問われる職種です。入居者1人に対するスタッフ数を多く配置したり、スタッフのストレスケアなどに取り組んでいます。

 今後は既存の拠点に訪問介護の拠点を置くなど、シニア住宅の周辺を取り込みながら業容を拡大します。正直に言えば、シニア住宅はもうかる

事業ではありません。しかし、社会的な使命も含めてやるべきだと捉えています。

── どんな会社を目指しますか。

大隈 定量的には20年度までに営業利益1000億円、DEレシオ(負債資本倍率)2倍台前半を目指します。成長事業と考えているのは、少子

高齢化でも確実に拡大するストック、シニア層、インバウンドの3分野。ストックにはインフラも含みます。9月に仙台空港のコンセッション(民間企業への運営権売却)で東急電鉄、前田建設工業、豊田通商などとともに優先交渉権を獲得しました。確実に市場が膨らむ分野に我々のコンテンツをどう合わせていくか。知恵の出しどころです。

(構成=花谷美枝・編集部)

 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 人事担当で、人事考課表を読んではまとめる日々でした。半ば以降は開発の部署に移りました。

Q 最近買ったもの

A 車です。ベンツの「Cクラス」から、BMWの「420i」に買い替えました。

Q 休日の過ごし方

A ドライブがてらショッピングセンターに行くことが多いです。9月の連休は新車の慣らし運転で木更津まで行きました。


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 ■人物略歴


 ◇おおくま・ゆうじ

 広島県出身。修道高校卒業。1982年横浜市立大学商学部卒業後、東急不動産入社。同社取締役執行役員経営企画統括部統括部長、東急不動産ホールディングス取締役執行役員を経て2015年4月から現職。57歳。