2015年

10月

27日

特集:インド再発見 2015年10月27日

 ◇インドならでは、インドだからこそのビジネスがある。


【弁当】自宅から弁当をお届け ダッバーワーラー = 帝羽ニルマラ(監査法人 トーマツ)


【映画産業】製作本数は世界一 「産業化」とシネコンで進化 = 高倉嘉男(インド映画研究家)


【弁護士】世界最多の人数 海外の法務代行急拡大 = 西山征夫(ジェネシス代表取締役)


白い帽子とシャツがトレードマークのダッバーワーラー

【弁当】

◇自宅から弁当をお届け ダッバーワーラー

 帝羽ニルマラ(監査法人 トーマツ)


 インドの金融センター、ムンバイでは、お昼時になると大量の長細い容器を両脇にぶら下げ自転車に乗る男性を見かける。容器の中身は弁当箱。家庭から職場に弁当を届ける彼らは、「ダッバーワーラー」と呼ばれる。「ダッバー」は弁当箱、「ワーラー」は「~する人」を指す。


 ムンバイでは、5000人を超えるダッバーワーラーが1日約20万個の弁当を配送している。1890年代から続く古いサービスで、親子4世代にわたって従事する家庭もある。他の都市にもダッバーワーラーはいるが、ムンバイが最大の市場だ。

 インド人のランチの基本は弁当。少しでも温かい状態で弁当を食べられるようにと、自宅から職場までダッバーワーラーが運んでいる。料金は月1000円以上が相場だ。ダッバーワーラーの平均月収は約1万6000円といわれている。

 配送の流れはこうだ。朝、夫が出勤した後に妻が弁当を作る。ダッバーワーラーが午前10時半ごろまでに各家庭を回り、弁当を集荷。駅まで自転車で運び、鉄道を乗り継いでオフィスまで届ける。駅などの地点で弁当を中継していくリレー方式と、1人のダッバーワーラーが集荷から配送までを行う方式があり、いずれの方式でもインドのランチタイムが始まる午後1時ごろまでにオフィスに弁当が届けられる。食後には空の弁当箱を受け取り、午後6時ごろまでに自宅に返却する。

 驚くべきはその正確さだ。誤配送は滅多になく、悪路を自転車で疾走し、鉄道の遅れにも対応し、モンスーンでも時間までに弁当を届ける。ダッバーワーラーを題材にした映画「めぐり逢わせのお弁当」のホームページでは、誤配送の確率は「600万分の1」と紹介されている。


 数字の真偽のほどはともかく、配達網が組織化され、間違いなく届ける仕組みが確立されていることは確かだ。リレー方式の場合、通常3~4回、多い場合は6回、中継地点を経る。中継するときに目安になるのが弁当箱を入れた容器だ。容器の上部に、集荷元や配達先の最寄り駅、駅からの方角、配送担当グループの名称、ビル内のフロア、宛名などが書かれており、それが配送の目印になっている。

 近年は、食堂のある企業や、簡単な果物などで昼食を済ませる人が増えている。ランチを提供するレストランも出てきた。だがインドでは、昼ごはんといえば弁当という習慣が根強い。当面、温かい弁当を届けるダッバーワーラーのニーズはなくなりそうにない。